桜井日奈子 役作り全否定された苦しみを告白

映画「ママレード・ボーイ」でヒロインの小石川光希を演じる桜井日奈子(撮影・河野匠)

 女優桜井日奈子(21)が、吉沢亮(24)とダブル主演を務める映画「ママレード・ボーイ」(廣木隆一監督)が27日に公開される。桜井は、父の再婚相手の1人息子・遊(吉沢)にいちずな恋心を寄せる少女・光希を演じた。映画初主演で、廣木監督から役作りを全否定される苦しさを味わいながら、ナチュラルに演じることを心がけ、座長の責任を果たした。過去の恋愛の苦い経験や、女優としての今後の夢も明かした。

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 原作は累計1000万部を超える少女漫画。初主演、しかも人気作の実写化とあって緊張していた桜井は、共演者が醸し出す、なごやかな現場の雰囲気に助けられたという。

 「初主演で最初は緊張してたんですけど、吉沢さんがすごく頼もしくて、わなわなしてる私の緊張をほぐしてくれました。両親役の皆さん(筒井道隆、檀れい、谷原章介、中山美穂)も、私のようなド新人と同じ目線に立って話してくれました」

 とはいえ、メガホンをとるのは大御所・廣木監督。現場に走る緊迫感も、肌で感じた。

 「監督の一言だけで、スタッフさんがバッと散って、現場を整えるんです。プロの職人さんの仕事でした。いい緊張感で、自分もうかうかしていられないなっていう気分になりました」

 廣木組に衝撃を受けたのは、クランクイン前の本読みだった。作ってきた役柄を真っ向から否定された。

 「自分なりに考えて、光希という女の子をデフォルメしたような感じにして本読みを迎えたんです。そしたら、監督から『ダメ。それじゃあ全然、伝わらない』と言われました。『ナチュラルに。普通に』と」

 普通でいること、普通を演じることの難しさを実感した。

 「監督もたくさん説明するというより、演じる側に任せようとしてくれるタイプなんです。だから、監督がおっしゃる『普通』というものに対応しきれていないなと思ったときに、相談させていただきました。『人それぞれ普通の感覚は違うから、桜井が思う普通を演じて。全然それで大丈夫だよ』と言ってくださいました。私は『監督が思っていることが正解』と思っていたけど、『なんだ、自分なりでいいんだ』と気付きました。監督の演出に合わせていくのに必死だったんですけど、作品が終わって感じたのが、『もっと自由にお芝居できたらなあ』ということでした」

 思春期を迎えた高校生の男女の両親同士が離婚、パートナー交換で再婚、さらに同居…。ひとつ屋根の下、2人の秘密の恋物語は、ありえない状況で生まれていく。桜井の中にも、2人だけでこっそり育む恋への憧れがある。

 「たぶん、秘密の恋の方が燃えますね(笑い)。周りに言うと、恥ずかしくなっちゃうタイプ。それに、遊みたいにポーカーフェースでたまに見せる優しさもいいなって思います」

 「岡山の奇跡」の異名でブレークした桜井には、幼い恋の思い出がある。

 「小学校の時、片思いの男の子がいたんです。すごく人気のある子で、たくさんライバルがいました。修学旅行で、その子の班とすれ違ったとき、付き添いのカメラマンさんに思い切って『撮ってください』って頼んで、一緒に写真を撮ってもらったんです。後日、学校に張り出された写真を見ていたら、その子が来て『何見てんだよ』って。もちろん、その写真は買いました(笑い)」

 小さな恋は、ほろ苦い結末を迎えた。

 「後でその子が私の親友と付き合っているのを知ったんです。恋バナで盛り上がっているときに分かって、私は『ああ、そうなんだ~』って言ってたんですけど…。私は告白すらできなかったんです」

 少女漫画を地で行くようなピュアな恋愛経験を経て、人気少女漫画の実写化で映画出演。ある意味、運命的でもあるが、桜井が描く夢の方向は180度、違う。

 「殺陣とか乗馬をやってみたいんです。かっこいいじゃないですか。オフをそういう時間に回してみたい。よく、ほわんとしているイメージだと言われるので、実はそうじゃない部分もあるんだぞって知ってもらいたいです」

 タイトルは、吉沢演じるクールでとっつきにくい半面、優しさにあふれている少年・遊が、マーマレードジャムの魅力に似ていることから付けられた。こんなしゃれた表現で、桜井が自分を表現すると…?

 「『ハニーマスタード・ガール』ですかね? マスタードほどピリピリしてなくて、ちょっと甘いところもあるので(笑い)」

【聞き手=森本隆】

 ◆ママレード・ボーイ 吉住渉氏原作の少女漫画。月刊誌「りぼん」で92年から連載。高校生の小石川光希(桜井)は両親の離婚、松浦夫妻とパートナー交換して再婚、さらに同居を急に告げられる。最初は反発していたが、松浦家の息子・遊(吉沢)の魅力にひかれ始め、一つ屋根の下で秘密の恋が始まる。

 ◆桜井日奈子(さくらい・ひなこ)1997年(平9)4月2日、岡山生まれ。14年に地元の美少女コンテストでグランプリ獲得、「岡山の奇跡」の異名で有名に。16年舞台「それいゆ」で女優デビュー。大東建託「いい部屋ネット」のCMで見せるダンスが話題。特技はバスケットボール。