【スペイン・マドリード27日(日本時間28日)=小林千穂】歌舞伎俳優中村勘九郎(36)中村七之助(35)らによる「平成中村座 スペイン公演」がカナル劇場で開幕した。チケット完売の期待の中、大声援と喝采を受け、観客に受け入れられた。父中村勘三郎さん(享年57)が好きだった地での公演成功に、2人は今後への思いも新たにした。日本とスペインの国交樹立150周年の節目に行われた記念公演は7月1日まで。
「連獅子」のクライマックス、勘九郎と中村鶴松(23)が豪快な毛振りで沸かせると、840人で満員の劇場は割れんばかりの大きな拍手に包まれた。「ブラーボ!」の歓声と指笛が響き、2回目のカーテンコールではスタンディングオベーションになった。最初の演目「藤娘」では、あでやかな七之助の女形にどよめきが起こった。
勘九郎は終演後「すごく真剣に見てくれてうれしかった。うそのない大きな拍手を送ってくれたのは、役者冥利(みょうり)に尽きる。伝統と受け継がれてきたものの強さは、言葉の壁を越えることができる」、七之助も「ただきれいというだけでなく、じっくりと内面を見てもらっているのを感じた」と喜んだ。
12年に亡くなった勘三郎さんは、スペインが大好きだった。絵画や建築、好きなものがたくさんあった。勘九郎は「(スペイン公演を)やりたかっただろうなと思いました。お客さまが喜んでくれたので、(父も)喜んでくれていると思います」と、拍手を受けて感じた父への思いを語った。
厳しくも愛情に満ちた親子の物語でもある「連獅子」で、勘三郎さん演じる親獅子の精のもと、勘九郎は長い間、仔獅子の精を演じてきた。親獅子は今回が初めてだが、同行した長男勘太郎(7)次男長三郎(5)と踊る日を意識した。勘九郎は「中村屋でまた『連獅子』ができる喜びとプレッシャーを感じました。彼らが成長して一緒にできたらいい」。
「平成中村座」の海外公演は04年のニューヨークを皮切りに、ドイツやルーマニアでも公演した。勘九郎は「ヨーロッパ3大演劇祭に歌舞伎で出たい。ルーマニアのシビウ演劇祭には出たので、あとはエディンバラとアビニョン」と英国、フランスの演劇祭参加を誓った。七之助も「私たちの愛する歌舞伎、日本の美を見てもらえるのはうれしい」と、海外公演の喜びを語った。スペイン公演は勘九郎、七之助にとって、父を思うと同時に、新たなスタートにもなった。