「憑依型女優」北香那が声優初挑戦で主演デビュー

自然体な魅力があふれる北香那(撮影・中島郁夫)

 女優の北香那(20)が声優初挑戦で小学4年の男の子になりきった。アニメ映画「ペンギン・ハイウェイ」(石田祐康監督、17日公開)で、蒼井優、西島秀俊らに囲まれて声の主演デビュー。ドラマ「バイプレイヤーズ」(テレビ東京系)の中国人役で異彩を放った「憑依(ひょうい)型女優」にブレークの予感だ。 

 「ペンギン-」は小学4年の男の子が、ひと夏の経験を経て成長する物語。憧れのお姉さんを蒼井優、父親を西島秀俊が演じ、北は少年になりきっている。

 「小4の妹がいるので、授業参観に付いていって、アオヤマ君(役名)に似たおませな子を探して、じっと耳を澄ませて研究したんです。悲鳴を上げるところが難しかった。叫び声になると、どうしても『女の子』が出てしまうんですよ」

 苦笑しながら振り返るが、ちょっと背伸びしたアオヤマ君の声は生き生きし、まさに「小4男子」に聞こえる。昨年ゲスト出演した「貴族探偵」(フジテレビ系)のスタッフは、当時19歳の変身ぶりに「憑依型の女優さん」と驚いた。続く「バイプレイヤーズ」では中国人になりきった。

 「工場の生産ラインでアルバイトをしていたことがあって周りは8割が中国から来た人でした。彼女たちのカタコトとコミュニケーションしているうちにいつの間にか頭に入った。演じたというよりは自然に出てきた感じですね」

 中学1年のときに「赤毛のアン」のオーディションでヒロインを射止めたが、コンスタントに仕事が入るようになったのは昨年からだ。

 「高校卒業の頃はつらかった。周りは進路が決まっているのに、私にはほとんど仕事がなかった。先生から『女優はやめた方が』と言われ、返す言葉がない。女優になると決めたんだからと自分に必死に言い聞かせる感じでしたね」

 女優に憧れたのは保育園の頃。「ドラマで見た高島礼子さんや矢田亜希子さんがまぶしかった」。セリフを覚えてはものまねするのが遊びだった。「お母さんに怒られると謝っている『芝居』をしたり。悪い子でした(笑い)。今も1人カラオケが好きで、ミュージックビデオのヒロインになりきるのが気持ちいい」。

 女優の資質と言えるが「いつも妄想していて、役に入るのはその延長っていう感じです。女優になれて良かった。そうじゃなかったら、だいぶヘンな人ですよね」と笑った。【相原斎】

 ◆北香那(きた・かな)1997年(平9)8月23日、東京都生まれ。10年、ミュージカル「赤毛のアン」に主演。13年の映画「震動」では、耳の不自由な少女を演じた。17年のドラマ「バイプレイヤーズ」では350人が応募したオーディションを突破して中国人ジャスミン役に抜てき。

 ◆ペンギン・ハイウェイ 「夜は短し歩けよ乙女」の森見登美彦氏の原作で、短編「陽なたのアオシグレ」が文化庁メディア芸術祭の推薦作品となった石田祐康監督の長編デビュー作品となった。郊外の街に突然出現したペンギンの謎を追う少年アオヤマ君はいつの間にか「異次元」に巻き込まれて…。他に竹中直人、釘宮理恵らが声の出演。主題歌は宇多田ヒカル。