「カメ止め」に続け! 日芸出身女優・佐藤玲の思い

佐藤が演じるのは、父親に入学金を持って逃げられた美紀 (C)2018オフィスクレッシェンド

ENBUゼミナールの学生たちが作った映画「カメラを止めるな!」が話題沸騰中だ。これに「うまく乗っかりたい(笑い)」と冗談めかしく話すのは、日大芸術学部出身の女優、佐藤玲(26)。今日25日、佐藤が発端となり「チーム日芸」で製作された主演映画「高崎グラフィティ」(川島直人監督)が公開となる。映画完成に至る経緯や作品に込めた思いなどを聞いた。

◆「チーム日芸」の映画ができるまで

大学卒業を翌日に控えた15年3月。全ては、佐藤が川島監督に宛てた、ツイッターのダイレクトメッセージから始まった。「日芸の同期で何か作品を作りたい」。佐藤は演劇学科で、川島監督は映画学科。親交が深いわけでもなかったが、学内での評判を頼りに声をかけた。カメラマン、脚本、音響と次第に人が集まり、「チーム日芸」が結成された。

企画を練ること1年半、チームは「未完成映画予告編大賞」への応募を決める。堤幸彦監督、大根仁監督らが所属する「オフィスクレッシェンド」が主催するコンテストで、本編を撮影せず予告編のみで面白さを競うというものだった。「オヤジが、入学金を持って逃げました。」というセンセーショナルなフレーズが審査員に刺さったのか、見事グランプリを勝ち取り、本編の製作が決まった。

ここからオフィスクレッシェンドのスタッフらも加わり、映画は完成した。佐藤は在学中から女優として活動しており映画出演経験もあったが、企画段階から携わったのは初めてだった。「ずっと現実味がなくて、手放しに喜べないプレッシャーもあったりして。こうやって映画が作られていくんだなって、少しずつ経験させていただけて、できあがって試写会で見たときはすごくうれしかったです」。

◆きっかけは「国民的美少女コンテスト」

気概ある女優に映るが、佐藤が芸能界を目指したのは「悔しさ」からだった。小5の時、親戚に「物は試しで」と勧められ応募した「国民的美少女コンテスト」に、3次審査で落選。「みんなハキハキと自分のPRをしていた。私は全然興味がなかったのもあって、前の子が言ったのと同じことを言うくらいしかできなかったんですね。『どういう人になりたいですか』と聞かれて、隣の子が『上戸彩さんみたいな笑顔がすてきな人になりたいです』と言っていて、私も同じことを言って(笑い)。『落ちた』という悔しさで、お芝居ができるようになったら、武器として太刀打ちできるのかなと思いました」。

悔しさから気がついたら女優を目指していた。女優になる道を模索し、日芸という選択肢を得る。「日芸に入るために勉強しようということで、中学を卒業するときに劇団に入って、大学受験の準備をしました。ただ全然大学の仕組みを分かっていなくて、日芸に入ったらそのまま女優になるものだと思っていたんです(笑い)。入ってからやっと気づいて、自分で何かしなきゃと思って、2年生で蜷川(幸雄)さんのところ(劇団)に入ったり。入ってみたら映像にも興味が沸いて、事務所に入りました」。

所属事務所は三浦友和や佐藤浩市など実力派俳優を抱える少数精鋭の事務所だ。「どうせやるなら映画のスターがいるところで本格的にやりたいと思って、『ここに入れたらすごくうれしいけど無理だろう』というところから出そうと思って、それの1つ目が今の事務所でした」。

◆「カメ止め」に続け!

映画は群馬・高崎を舞台に、男女5人の高校卒業からの数日間を描いた青春ムービー。父親に専門学校の入学金を持ち逃げされた美紀、将来の夢がなく父親の工場を継ぐしかないと思っている勇斗、バイト先の店長と結婚してお嫁さんになることが幸せへの近道だと考える寛子、みんなに「東大に合格した」とうそをついてしまった康太、今が楽しければそれでいいと考えるお調子者の直樹。クラスメートでありながらさして仲が良かったわけでもない5人が、仲間と衝突して卒業パーティーを抜け出した夜に偶然集まり、それぞれ新たなステージへの1歩を踏み出していく。高校を卒業して進学就職を控えた期待と不安でいっぱいの“モラトリアム期間”と、都会がすぐそこにある地方都市特有の鬱屈(うっくつ)とした空気感が、等身大の青春映画を作り出している。

学生主体の映画として「打倒・カメ止め」の言葉を引き出したく水を向けると、意外な言葉が返ってきた。「こういうふうにすばらしい作品が火種になって、小さい映画館に行ったことのない人たちがどんどん押し寄せるというのは、自分たちもすごくうれしい。ライバルというより『うまく乗っかりたい~』という感じではあります(笑い)」。佐藤はさらに続ける。「どんどんそういう映画ができていったらいいなと思いますし、自分がそういう作品に携われたらいいなと思います。苦労もあっただろうけど、たくさんの人に見てもらえるのは糧になる。うらやましいし、自分たちもそういう映画になりたいと思います」。【杉山理紗】