麻生美代子さん死去フネ役半世紀番組支えた日本の母

麻生美代子さん(2014年2月2日撮影)

フジテレビ系アニメ「サザエさん」(日曜午後6時30分)の磯野フネ役やテレビ東京系「和風総本家」(木曜午後9時)のナレーションで知られた、女優で声優の麻生美代子さん(本名・左近允美代=さこんじ・みよ)が8月25日午前7時23分、都内の自宅で老衰のため死去していたことが3日、分かった。所属事務所が発表した。92歳だった。東京都出身。通夜、葬儀は近親者で既に済ませ、後日お別れの会を開く予定。

麻生さんの最後の仕事は3月20日で「和風総本家」の収録となった。関係者によると、年齢による衰えはあったが、特に病気をすることはなく、最近は舞台のDVDを見たり、音楽を聴くなどして自宅でゆっくり過ごしていた。亡くなる前夜に血圧が徐々に下がり、親族や関係者にみとられ、眠るように息を引き取ったという。

東京生まれで1949年(昭24)に舞台女優としてデビュー。63年に日本のアニメ漫画の第1号といわれるフジテレビ系「鉄腕アトム」で声優デビューした。「サザエさん」の主人公フグ田サザエの母親フネの声は、69年10月5日の放送開始から2015年(平27)9月27日まで46年間務めた。他にフジテレビ系「アルプスの少女ハイジ」(74年)の執事ロッテンマイヤー役など多くのアニメ作品で声優を務めた。

また、テリー伊藤(68)が主演の映画「あおげば尊し」(06年)では母親役。テレビ東京系の「和風総本家」では番組開始の08年4月から今年3月まで10年間ナレーションを担当した。

「サザエさん」の放送開始から現在まで、長女サザエの声を担当する女優加藤みどり(78)は「放送が始まった時は私が一番年下だったのですが、ずっと、何かあればいつも麻生さんに相談できて、頼りになる先輩でした」と思い出を語った。その上で「80歳になられても声が出るし、滑舌も良く、先輩として皆の目標になっていました」とコメントを寄せた。孫のフグ田タラオ役の声優貴家堂子(77)は「とても残念でさびしいです…。安らかにお眠りください」と悼んだ。

制作会社のエイケンとフジテレビのスタッフは「46年の間、麻生さんに演じ続けていただいたフネさんは、優しくてしっかり者でありながらかわいらしいところもある、磯野家の自慢の母でした。ただただ感謝の気持ちでいっぱいです」と、半世紀近く番組を支えた“母”の偉大さに触れ、別れの言葉を贈った。

フジテレビでは、「ちびまる子ちゃん」の原作者さくらももこさん(享年53)が8月15日に亡くなり、看板番組をけん引してきた功労者の訃報が相次いだ。「サザエさん」について、斎藤翼編成部長は「長く続いているので、今後も歴史を積み重ねて行ける番組として大切にしたい」と話した。

◆テレビアニメ「サザエさん」 1969年(昭44)10月放送開始。原作は長谷川町子さんの漫画で、1946年(昭21)から九州の地方紙「夕刊フクニチ」に連載され、その後49~74年まで朝日新聞に連載された。主人公の主婦サザエさんを中心としたフグ田家の日常を描く。浅野温子や観月ありさ主演で実写化されたことも。2013年(平25)には「最も長く放映されているテレビアニメ番組」としてギネス世界記録に認定された。