HIRO 視線の変化と変わらぬ初心 継続は力なり

壁や家具が黒でまとめられた部屋で、取材に応じたHIRO。カメラを向けるとこの表情。レンズ越しに射貫かれるような視線にドキドキしました(撮影・林敏行)

<3年ぶりの全国ツアー EXILE語る>

EXILEに迫る「日曜日のヒーロー」スペシャル版の最終回(第3回)は、EXILE HIRO(49)の登場だ。プロデューサーのかたわら、エンターテインメント企業「LDH」を率いて、EXILEに憧れた世代を次々迎え入れている。1児の父にもなり、その視線にも変化があるという。3年ぶり全国ツアーは15日、大阪・京セラドームでスタートする。

★変化

3年ぶりのEXILEの復活。もしかしたら、一番ワクワクしているのは、この人なのかもしれない。

HIRO こうしてアルバム「STAR OF WISH」ができて、ツアーができるのは楽しみで、前よりもリラックスして見られるような気がします。15人もすごくいい雰囲気です。

13年末にパフォーマー卒業後も、以前はジャージーに着替えリハーサルに顔を出していたが、今は「新曲の振り付けも分からない」と、1歩引いたところから見守っている。

HIRO ツアーのセットリスト(選曲)を見るだけで「やっぱりEXILEってすごいな!」という思いになれます。継続や歴史の重みがあると感じられると思いますし、それでいて新鮮さもあります。力まずに楽しんでほしいです。EXILEファンは相当泣けると思いますよ。ATSUSHIも絶好調ですから。

16年8月末に、ATSUSHI(38)の海外留学とともに、EXILEの活動を一時休止することを発表した。当初描いていたビジョンとは違うというが、結果として2年半の充電期間で、変化を感じている。

HIRO 一番は、この期間でEXILEのあり方も変わったということです。それぞれがEXILEを背負ってやってきて、チームというよりは「名字」「生い立ち」になってきています。LDHという組織への関わり方も、それぞれの将来の夢や個性に合わせてきました。「EXILE=TRIBE(一族)=LDH」という思いは僕自身もあるので、大きなスケールの中で、メンバーそれぞれの夢に近づけるようにしてきたつもりです。

EXILE THE SECONDはメンバーにプロデュースを任せ、全国ツアーを2度開催。三代目J Soul Brothersは昨年、2度のドームツアーで歴代年間ドーム公演数最多記録を樹立した。

HIRO SECONDのメンバーはずっと同じ釜の飯を食べてきましたし、やりたいことができる環境だけを作って、あとはみんなにやってもらうのがいいと任せました。ライブを見て、僕らと一緒に過ごしてきた匂いだったり、エンタメの流れが表現されていて、新鮮でしたし頼りがいがあるなと思いました。三代目は、日本記録を作るようなグループになりました。ブランド価値が上がれば上がるほど、自分たちで切り開いていく道を作ることで、さらに輝く状況になる。自分の関わり方もいい意味で距離を測りながら、1人1人サポートしていければいいと思っています。

さらに、GENERATIONSやFANTASTICSら、EXILEに憧れてダンスを始め、活躍する「Jr EXILE世代」も台頭してきた。

HIRO この世代は、機動力が武器で、チームごとに全世界を飛び回って、当たって砕けろであらゆることに挑戦していく時です。恥をかいても、成功しても、すべてが成長につながります。その中でもGENEは中心。ずっと先輩たちの背中を見て、苦労して結果を出してきた。やってきたことが正しかったと肌で感じられていて、どんどん夢をかなえようという雰囲気になっています。(佐藤)大樹のお父さんは、僕と同い年です(笑い)。E-girlsも含め、次世代のエンターテイナーをイメージしながら、みんなと進んでいきたいです。

★初心

EXILEのパフォーマーとしてグループを引っ張りながら、02年に会社を設立し、広くエンターテインメントを追求してきた。03年に設立のダンス&ボーカルスクール「EXPG」からは、白浜亜嵐ら多くのメンバーも輩出してきた。

HIRO 偶然か必然かは分からないですけど、「継続は力なり」というのは毎年のLDHのテーマです。継続が自分たちの力になっていることを、ここに来て本当に感じます。人と人との出会いを大切にする気持ちや、夢を追い続ける情熱の継続が積み重なっていく中で、信念がブレずにできているのかなと思います。その中でいろいろな問題も起こりますし、薄まっていく部分もあるので、日々自分も成長し続けないと、追いつけないなと。永遠のテーマなんだと感じます。

エンタメを取り巻く環境も日々変化する中で、集団でモチベーションを保ち続けることも容易ではない。継続の秘訣(ひけつ)はあるのだろうか。

HIRO 最初にEXILEやLDHができた頃からの初心はずっと変わっていないです。一言では表せないんですけど、エンターテインメントの行き着く先は「LOVE」「DREAM」「HAPPINESS」だったり、自分たちができるだけ多くの人たちを幸せにすることによって、自分も幸せなんだと。自分たちだけが幸せなのは怖いと、昔から言い続けてきました。それが、自分たちへの約束でもあります。

自らも「EXILE」の看板を背負い続けている。

HIRO 肩書がない方が気楽なんだと思うんですけど、背負っていかないと言ったことも証明できないですし、たとえ自分1人になったとしても、結果を出していけばEXILEはなめられないので。三代目とかJr EXILE世代を盛り上げれば盛り上げるほど、EXILEの功績も上がるし、輝きますから。

HIRO自身も、12年に上戸彩(32)と結婚。15年には長女が生まれ、1児の父になった。

HIRO 例えば「アンパンマン」とか、子ども番組の偉大さを感じます。アンパンマンっていいこと言ってるな、深いなと。自分がダンスを始めた頃から続いているアニメってたくさんありますけど、夢をしっかり届けながら、ビジネスとしても成立しているのは発見でした。主婦の方の大変さとか、これまでの目線と違いますし、知り合う人も変わるのですごく勉強になります。

来年50歳になる。

HIRO 自分の性格的には、60歳までにこうしたいというようなイメージはできているんですけど、これまで言ってたことを形にすることは責任を全うして必ずやりたいですし、それが具体的な夢になります。

これまでも業界の常識を次々と覆してきた。今も昔も変わらないのは、遊び心と固定観念にとらわれない考え方だ。

HIRO どこかで、ふざけたクソジジイになりたいという思いもあったりします。違う名前で何か作ってみるとか、おもしろいことをやってみたい。(周囲から「PTA会長は?」の声に)PTA会長もいいかもしれませんね!(笑い)。運動会とかプロデュースしたらおもしろそう。世界が大きいとか小さいじゃないんですよね。自分からすると、知らない世界の方が大きく見えるので、そういうところでエンタメできるかもしれませんし。とにかく固定観念にとらわれないエンタメの創造は、常に遊び心を持ってやっていきたいので。続けていきたいですね。

◆17年1月新体制

LDHは17年1月にグループを新体制にし海外にも事業進出している。人気DJアフロジャックがCEOの欧州では女性グループオーディションを開催中で日本式の合宿も実施。米ロサンゼルスでは飲食店やスクールオープンなどネットワークも広がっている。「もちろん日本が基盤ですがエンタメを輸入輸出し合ってミックスされると、いろいろな盛り上がりにつながる。すぐに結果は出ないですが日本とはマーケット規模も違うので、はまったら一気に回っていくのかなと思っています」。2020年の東京五輪開催もチャンスととらえている。「観光客も増えて、エンタメは必要にされると思います。20年の1年を通して何をしていくかというのを準備してますし20年以降が勝負。エンタメにとっていい時代が来ると感じています」。

◆HIRO(ひろ)

本名・五十嵐広行。1969年(昭44)6月1日、神奈川県生まれ。89年、テレビ番組のダンスコンテストに参加し、ダンス&ボーカルユニットZOO入り。95年に解散。99年、松本利夫、USA、MAKIDAIらと「J Soul Brothers」を結成し、01年にEXILEに。13年末にパフォーマー卒業。02年、LDHの前身となる「エグザイルエンタテイメント有限会社」を設立。昨年1月からグループが新体制になり、現在LDHグループのチーフ・クリエイティブ・オフィサー。

◆LDHグループ

02年にHIROらで設立し、03年にモデル事務所が合併して現在の形に。社名の由来はテーマでもある「LOVE」「DREAM」「HAPPINESS」の頭文字。17年から新体制に。海外、飲食店、アパレルなど現在17社からなる。