平尾昌晃さん三男、遺産相続60億円「不当な独占」

会見で思いを語る平尾勇気(撮影・山崎安昭)

昨年7月に死去した作曲家平尾昌晃さん(享年79)の三男の歌手平尾勇気(37)が25日、都内で、遺産相続などについて、3度目の結婚相手となった50代の妻と争っていることについて記者会見した。平尾さんの残した会社に、妻が社長として就任した経緯などに違法行為があり、著作権料の不当な独占などもあったなどと主張した。「総額60億円」ともいわれる遺産をめぐる対立は、泥沼化している。

父の遺品のジャケットとネクタイを身に着けた勇気は「天国の父が見ている」と言いながら、弁護士と公認会計士、所属事務所代表を伴って会見に臨んだ。

冒頭では昨年10月、妻が平尾さんの個人事務所と音楽出版管理会社の、いずれも社長に就任したことに対し、就任経緯に不正があったとして「取締役の職務執行停止」などの申し立てが今月21日に東京地裁に受理されたことを報告。争いの本質は「遺産の分割にある」として今後、民事と刑事の両方で争う姿勢を鮮明にした。関係者によると、平尾さんが作曲した楽曲の著作権料は年間約1億円。著作権は死後50年間保護され、現在の財産が約10億円あるとみられる。そのため、計算上は総額60億円をめぐる遺産相続といえる。

これまでは「お金がすぐに必要だから」などと妻の促すまま、受取人が空欄の複数の書類に、勇気が印鑑を押してきたという。その1つが平尾さんの著作権を管理する日本音楽著作権協会(JASRAC)の相続同意書だったという。1人だけが相続する「単独用」と、兄弟などの複数人が受け取れる「共同用」があるが、妻は承継者が空欄のままの「単独用」に押印させたと主張。「単純ミス」だという妻に対し、勇気は「ミスではないと思う」「父の著作権料の不当な独占」と不信感を募らせた。

また、遺言状の存在を妻は否定しているが「どこかにあるのではないか、と思っている」と述べた。その根拠として、平尾さんが3度目の結婚をした直後の13年11月、知人の弁護士に遺言状の相談で送ったというメール内容を読み上げた。そこには著作権は個人ではなく、3つの会社・法人に分配し、「息子と妻にも財産分与を考えています」とあったという。勇気は、これに添った遺言状が作成されたとみている。

「不正」の具体的な内容については、妻からの資料提供がないことなどを理由に明らかにすることはなかった。だが、既に勇気側の手元にある材料だけでも、違法行為があったと確信しているといい「悪いことをやっているなら罪を償うべき」「絶対に許せない」と語気を強めた。今日26日には妻が社長を務める2社の株主総会が行われ、勇気も出席予定。“直接対面”が実現する見込みで、行方が注目される。【松本久】

◆平尾勇気(ひらお・ゆうき)1981年(昭56)3月10日、東京都生まれ。15歳のころから作詞作曲を始め、18歳のころには演歌歌手山本譲二らの前座を務めた。独学でギターを学び、04年に「ハダカの☆楽園」で歌手デビュー。現在は歌手、タレントとして活動している。