マルシア夢語る「世界中の移民に日本の歌届けたい」

優しい笑顔でレンズを見つめるマルシア(撮影・中島郁夫)

歌手、ミュージカル女優、タレントなど幅広く活躍するマルシア(49)が来年、デビュー30周年を迎える。同2月、ビルボードライブ東京での記念ライブ開催も決定した。このほど日刊スポーツのインタビューに応じ、このタイミングを新しいスタートにしたいとの思いを明かし、「ワクワクしている」と意気込んだ。日系3世としてブラジルから来日した歩みと、これからの大きな夢も語った。

「これから先の人生、考えるだけでワクワクしています」。49歳のマルシアは、まるでデビューしたての新人歌手のように未来の自分を楽しみにしている。来年2月19日、50歳誕生日の5日後に開催される30周年記念ライブが大きな節目であり、新たなスタートになる。「歌謡曲からミュージカル、ジャズまでさまざまなジャンルの歌を歌いたい」と笑顔で意気込んだ。

1969年、ブラジルで日系3世として生まれた。17歳の時、地元サンパウロで開催された歌謡大会で優勝し初来日。日本での決勝大会で作曲家猪俣公章さんの目に留まりスカウトされた。家族は反対したが、日本行きを決めた。「空港に家族が見送りに来てくれたのですけど、祖父が私を抱きしめて、『成功するまで帰ってくるな』と言いました。日本に来てから33年間を支えたのがその言葉です」としみじみと語る。

19歳の時に「ふりむけばヨコハマ」でデビューし「第31回日本レコード大賞」最優秀新人賞を獲得するなど、数々の賞を受賞し華々しいスタートを切った。しかし、それからの芸能人生は必ずしも平たんなものではなかったという。

「10代から20代になる変わり目のころデビュー。20代から30代ではミュージカルへの挑戦、30代から40代の時はいろんな壁にぶち当たって仕事を控えた時期があったり、復帰したりといろいろありました」。しかし、それら全ての経験は無駄になっていない。「この10年間は本当に大きな10年になりました。いろいろ挑戦し、経験して、今をワクワクできるような自分にすることができましたし」ときっぱりと語った。

これからどこに向かうのか。「ステージにもっと立ちたい」という目標を話しつつ、大きな夢も明かした。「日系人、人間マルシアとして、世界中の日本からの移民の方に日本の歌を届けたいんです。ブラジルでは今は6世くらいになっています。日本語もしゃべれなくなっている。日本を忘れないための歌を伝えていきたい。日系人として背負っているものをそういう形で残すのも、私の居場所なのかもしれないと考えています」。デビュー30周年、マルシアのワクワクは止まらない。【上岡豊】

◆マルシア 1969年2月14日、ブラジル・サンパウロ生まれの日系3世。86年テレビ東京系の歌謡大賞番組にブラジル代表として来日したことをきっかけに、89年「ふりむけばヨコハマ」で歌手デビュー。90年NHK紅白歌合戦初出場。01年ミュージカル「ジキル&ハイド」で文化庁の芸術祭賞新人賞を受賞した。15年「日ブラジル外交関係樹立120周年」親善大使を務めた。11月1日には東京・ラドンナ原宿で初のトーク&ライブを開催する。長女(20)がいる。