河瀬直美監督、東京五輪映画は「運命」構想に復興

東京2020オリンピック競技大会公式映画への意欲を語る河瀬直美監督(撮影・中島郁夫)

2020年東京オリンピック(五輪)を記録する公式映画の監督が23日、カンヌ国際映画祭などで受賞歴がある河瀬直美氏(49)に決まった。この日、大会組織委員会が発表し、同監督も会見。64年東京五輪では故市川崑監督がメガホンを執り、1950万人を動員する大ヒットとなった。完成予定は21年春で、河瀬監督は「ストーリーを伴い、世界中の心を動かす作品にしたい」と語った。

「私が映画監督になったのは、このためなんじゃないかと思うぐらい」。河瀬監督はそう喜びを表現した。自身も高校時代、バスケットボール奈良県代表の選手として国体に出場している。スポーツから得られる勇気や希望を体現したといい、30年以上の時を経て再び、スポーツの現場に身を置くことを「運命」と言い切った。

国際オリンピック委員会(IOC)から「国際的に活躍している日本人監督にお願いしたい」と依頼があり、IOCと組織委がリストアップ。映画賞の受賞歴を参考にし、五輪に対しての考え方、スケジュールが合致した河瀬監督に白羽の矢が立った。五輪の公式映画製作は開催都市契約で決まっている。

現時点の構想を聞かれ、東日本大震災の復興とボランティアを挙げた。真っ先に挙げた「復興五輪」について「故郷を追われてしまった人たちに、スポーツを通じて生きる希望を与えられるのではと思っている」と述べた。

製作については最低でも4K映像のカメラを用いると言及。「普段やっているように、私がカメラマンに付いて撮っていくのでは追いつかない」と話し、多くのカメラマンを抱える予定。全会場、全競技にカメラを配置するかは今後、検討する。「必ず見つめたい復興や、ボランティアのような構成上、主人公となる人は私が取材を進めていく」と意気込んだ。64年大会ではカメラマンは164人いたという。

製作費は組織委負担分に加え、新たな公式映画スポンサーと、国内外の興行収入を見込む。将来的に版権はIOCに帰属。それまでは興行が認められるが、配給会社は未定。64年の製作時も「芸術か、記録か-」が論争となり、記録性が優先されれば、興収のハードルは上がる。河瀬監督は「ストーリー性を伴い」と語っており、その手腕に期待が集まる。

◆河瀬直美(かわせ・なおみ)1969年(昭44)5月30日、奈良県生まれ。大阪写真専門学校映画科卒。自主映画「につつまれて」など製作後、97年に初監督作「萌の朱雀」がカンヌ映画祭の新人監督賞。97年「杣人物語(そまうどものがたり)」が99年ニヨン映画祭特別賞。00年「火垂」はロカルノ映画祭で国際批評家連盟賞、欧州国際芸術映画連盟賞。03年「沙羅双樹」はカンヌ映画祭コンペティション部門に選出された。07年「殯の森」がカンヌ映画祭のグランプリを受賞。15年、樹木希林と永瀬正敏主演の「あん」がヒット。10年から地元の奈良市で、なら国際映画祭を立ち上げている。