樹木希林さん助演女優賞、3作で強烈印象/映画大賞

樹木希林さん(2012年12月1日撮影)

第31回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)が3日、決定した。

樹木希林さん(享年75)が3作品それぞれで、強烈な印象と味わい深さを残した。選考会ではこれまでの功績をたたえて特別賞をという声も上がったが、3回目の助演女優賞となった。

約10年にわたって希林さんと映画作りのパートナーだった「万引き家族」の是枝監督は「彼女の作品へのアプローチはまねできないものでした。いいかげんなことは絶対できません。少しでも隙を見せるとすぐにばれます。ご本人がどう思うか分かりませんが、あえて『女優賞』というのが僕は当然だと思うし、それだけ素晴らしい仕事をなさった」と賛辞を贈った。

「モリのいる場所」の沖田修一監督は「弁当を食べていると『ちゃんとかみなさい』と母親のようなおしかりを受け、テークを重ねるのに迷っていると『俳優は何度だってやりたいの』と率先してやろうとしてくださった。縁側で眠ったように座っていて、ひょいと現場にいらっしゃる、魔法使いのような人でした」と、尽きぬ思い出を語った。

「日日是好日」の大森立嗣監督は「授賞式でのお顔を見たかったですが、今は想像するしかありません。希林さんと一緒に映画を作れたこと、幸せでした。ありがとうございました」と、コメントを寄せた。

過去のインタビューで「助演賞って聞いて気が楽になったのよ。全員に分からなくても、1人か2人に伝わればいいっていうこのポジション、大好き」と言っていた。今回の受賞は何と言って受け取ってくれるだろうか。【小林千穂】

◆樹木希林(きき・きりん)本名内田啓子。1943年(昭18)1月15日、東京都生まれ。61年に文学座研究生に。当時の芸名は悠木千帆。64年、TBS系ドラマ「七人の孫」で注目され、「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」などに出演。73年に歌手内田裕也と再婚。77年に改名。映画代表作は「半落ち」「歩いても歩いても」「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」「わが母の記」など。今年9月15日、全身に転移したがんのため死去。

◆日日是好日 20歳の典子(黒木華)は母に勧められてお茶を習うことになった。いとこの美智子(多部未華子)と、ただものではないといううわさの武田先生(樹木)の元に通い始める。挫折や苦悩を経験し、お茶とともにあった24年間を描いた。大森立嗣監督。

◆モリのいる場所 自宅の庭を観察し、生き物や植物を描き続けるモリ(山崎努)。妻秀子(樹木)とつつましくも忙しい毎日を送っている。マンション建設計画が立ち上がり、大切にしてきた庭を守るためにした2人の選択とは-。沖田修一監督。

◆万引き家族 信代(安藤)治(リリー・フランキー)夫婦、信代の妹亜紀(松岡茉優)は、年金目当てで治の母初枝(樹木希林)の家で暮らしている。万引で生計を補う治と息子の祥太(城桧吏)は、凍えていた少女(佐々木みゆ)を連れ帰る。是枝裕和監督。

◆助演女優賞・選考経過 樹木希林さんが最初の投票で受賞が決まった。「『日日是好日』を遺作だと言って、自己完結を付けた」(福岡翼氏)と、最後まで女優として生きた姿に共感が集まった。一方で、木野花にも「引っ張っているのに主演じゃないという見事さ」(伊藤さとり氏)と 称賛の声が集まった。