安藤サクラ主演女優賞「泣き」世界が絶賛/映画大賞

主演女優賞を受賞の安藤サクラ(撮影・清水貴仁)

第31回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)が3日、決定した。

安藤サクラ(32)が初の主演女優賞を射止めた。今年のカンヌ国際映画祭で最高賞に輝いた「万引き家族」(是枝裕和監督)ではファミリーの妻を演じ、「泣き」で世界を魅了した。初共演となった樹木希林さん(享年75)は助演女優賞。安藤は希林さんと過ごした「時間」にも感謝した。「万引き家族」は作品賞にも輝いた。

父の名前もある歴代各賞受賞者の一覧表を見ながら安藤は「歴史ある賞の1つで、受賞した人はすごい人ばかり。ありがたいなと思う」と喜んだ。祖母の年金をあてに暮らし、足りない分は万引で補う一家の妻、信代を演じた。

世界が絶賛した「泣き」の演技がある。あふれ出る涙を手でぬぐい、尋問する捜査員をにらみつける目からはただならぬ悲しみ、怒りが伝わってくる。

「『コイツ(捜査員)に絶対、涙なんてみられてたまるか』という気持ちでした。涙を隠そうとしているけど、涙を隠そうと思ったわけではなく、自然とそうなった」

カンヌ映画祭の審査員長でハリウッド女優ケイト・ブランシェットは「もし私がこれからの映画の中であの泣き方をしたら、安藤サクラのまねしたと思ってください」。世界の心を揺さぶり、作品を象徴するシーンとなった。

07年に父奥田瑛二が監督を務めた映画「風の外側」で女優デビュー。演技力には定評がある。表情が変化に富み、感情の引き出しが何通りもある。樹木希林さんをほうふつさせる。撮影期間中、初共演となった祖母役の樹木さんを「たっぷり味わった」という。

「芝居をしていらしゃらないところで『ああ、すごいな』とまじまじと見ていた。くまなく味わった。すごく繊細で大切な時間でした」。昨年6月に長女を出産後、初めての作品となった。撮影には長女を連れて臨んだ。「樹木さんという強い存在がいたからこそ、この作品に素直におおらかにかかわることができた」。若き名優は大先輩への感謝の気持ちを忘れない。【松浦隆司】

◆安藤(あんどう)サクラ 1986年(昭61)2月18日、東京都生まれ。12年映画「かぞくのくに」でブルーリボン賞主演女優賞、14年映画「百円の恋」で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞。母はエッセイスト安藤和津、姉は映画監督の安藤桃子。12年に柄本佑と結婚。昨年6月に第1子出産。160センチ。血液型A。

◆万引き家族 信代(安藤)治(リリー・フランキー)夫婦、信代の妹亜紀(松岡茉優)は、年金目当てで治の母初枝(樹木希林)の家で暮らしている。万引で生計を補う治と息子の祥太(城桧吏)は、凍えていた少女(佐々木みゆ)を連れ帰る。是枝裕和監督。

◆主演女優賞・選考経過 安藤サクラが圧倒的な支持を得て、投票は1回で決着した。「何か映画に出るとノミネートされる、メリル・ストリープのよう」(石飛徳樹氏)、「最後の泣いて演技する場面が、『万引き家族』を象徴している」(神田紅氏)などと、圧倒的な演技に脱帽する声が上がった。