歌舞伎俳優市川海老蔵(41)が14日、東京・歌舞伎座で会見し、来年5月に江戸歌舞伎を代表する大名跡「団十郎」を13代目として襲名することを発表した。5代目団十郎の俳名を付け市川団十郎白猿を名乗る。披露興行を20年5~7月に同座で行い、期間中、長男堀越勸玄君(5)が8代目市川新之助を襲名し初舞台を踏む。
東京オリンピック(五輪)、パラリンピック開催で日本の伝統文化に注目が集まる年に、大名跡「団十郎」が7年ぶりに復活する。
歌舞伎座の緞帳(どんちょう)が上がると、海老蔵と勸玄君が手を付き座っていた。海老蔵は「歌舞伎界にとりまして大変大きな名跡です。己の命の限り、懸命に歌舞伎に生きてまいりたい」と決意を述べ、勸玄君は「父も名乗っておりました市川新之助の名跡を8代目として相続いたします」と、大きな声であいさつした。
この日の姿を誰よりも見てもらいたかった2人がいる。13年2月に亡くなった父の12代目団十郎さんと、17年6月に亡くなった妻小林麻央さんだ。海老蔵は「(襲名を)一番伝えたい人物は2人おりまして、父と麻央です。じかに伝えられないのは大きなこと。今日も妻に手を合わせて『そういう日が来たよ』と伝えました」と話した。この日の海老蔵と勸玄君の力強さは、天国の2人に届くようでもあった。
勸玄君のしっかりしたあいさつぶりに、海老蔵も一安心だった。「ごあいさつも『できな~い』と言いながらいざ緞帳が上がりますと、堂々とやっている姿を見て、ほうっておいてもいいのかなと思った」と目を細めた。勸玄君は、遊びより稽古が好きと答え、やってみたい演目に舞踊「玉兎」と、現在海老蔵と共演中の「幡随長兵衛」を挙げるなど、歌舞伎を楽しんでいる様子だった。
新元号で誕生する新しい団十郎に、海老蔵は時代の担い手も意識している。これまでの団十郎を引き合いに「時代に大きな影響を与えた人物も出ている。(同じ)時代に生きていることを多くの方に感じていただけるような団十郎を描いていきたい」と話した。
歌舞伎座の3カ月連続襲名披露興行は7月20日に千秋楽を迎え、同24日には東京五輪が開幕する。海老蔵は五輪組織委員会で文化・教育委員会委員を務めており、開閉会式で踊ってみたいと話したこともあった。実現すれば、団十郎の名前で世界に向けて歌舞伎をアピールできる。同年11月から翌年にかけ、福岡、大阪、名古屋、京都でも披露興行を行う。【小林千穂】