20歳朝花美穂が観世能楽堂で祖母へ感謝込めた公演

観世能楽堂で東京初ソロコンサートを行った朝花美穂

演歌歌手・朝花美穂(20)が8日、東京・銀座のGINZA SIX 観世能楽堂で「二十歳の誓い!東京だよ おばあちゃん 朝花美穂 お披露目コンサート」を開催した。昨年5月1日に「なみだの峠」でデビュー。故郷の鳥取・米子市などではソロコンサートを行っているが、デビュー丸1年での、東京での初のコンサートとなった。

朝花はカラオケ店を経営しながら歌と踊りの舞台に立っていた祖母の影響で、3歳から一緒に舞台に立つようになった。祖母は5年前に他界したが、歌手への道を開いてくれた祖母に心から感謝している。コンサートのタイトルにある「東京だよ おばあちゃん」はその思いが込められた。

20歳とは思えぬ圧巻のコンサートだった。新曲「出世街道旅がらす」や、5日に発売したばかりのカバー曲中心のファースト・アルバム「美穂の演歌名曲集」の収録曲など全17曲を熱唱した。観世能楽堂を意識して、三味線と尺八の伴奏だけで「兄弟船」(鳥羽一郎)を歌うなど、多彩なステージを見せた。

中でもセリフ入りの名曲歌唱は、観客を魅了した。「大阪情話~うちと一緒になれへんか」「瞼の母」(ともに中村美律子)は、観客視線をくぎ付けにした。祖母に学び、大衆演劇鑑賞が趣味で、演歌に合わせて舞い踊る自己流の新舞踊が特技というだけに、歌唱力と感情のこもったセリフだけでなく、表情や身のこなし、指先まで意識した表現力は見事だった。

エンディングの「歌謡芝居 九段の母」(真木柚布子)では、太平洋戦争で戦死した息子への老母の思いを、平成生まれの20歳の歌手が胸迫る語りで表現した。観客は涙し、喝采が鳴りやまなかった。

朝花はかつて「令和という新しい元号から自分の新たな1歩を踏み出せる。令和が平和で、自分にとっても大きな、素晴らしい時代になればと思います」と話してくれた。「九段の母」のエンディングは、平成に生まれ、令和を支える若き歌手の、平和への強い思いと継承すら感じさせた。

もっともMCの時は、若い女の子らしいキンキン声で語り、その落差にも観客は引き込まれた。朝花は「これからも出世街道まっしぐらで進んで行きたいと思います」と誓っていた。【笹森文彦】