SH流らと汗流したエリート芸人、強い代表が原動力

ラグビーW杯日本代表にエールを送ったしんや(撮影・星名希実)

ラグビーの名門帝京大はW杯日本代表メンバーに最多の7人を輩出した。そのうち、SH流大(27)CTB中村亮土(28)フランカーのツイ・ヘンドリック(31)と大学時代、ともに汗を流した男が今、吉本興業にいる。ラグビー芸人のしんや(29)だ。試合中の頭のケガで、4年生から学生コーチに転身。一般企業を経て、18年に吉本総合芸能学院(NSC)に入学。今春、首席で卒業した。人を喜ばせるのが好きだった。

かつての仲間たちは、日本代表初の8強に進出。しんやは「アイルランドとスコットランド戦が厳しいかなって思っていた。帝京の後輩も、いっぱい出てるんでうれしかった」。かつてのチームメートの活躍を喜んだ。

帝京大出身者7人のうち、流、中村、ヘンドリックとは学年が重なり、特に関係が深かった。

「流は寮の部屋が近かった。かなり人なつっこい印象。亮土は負けず嫌いでゲームを勝つまでやめない。そういう部分がタックルにも出てるんじゃないかな。ヘンドリックは、あんな大きな体なのにシャイで小食。ラーメン二郎で大盛りを頼んだのに、食べきれなくて店長ににらまれていた」

流と中村のラグビーに取り組む姿勢は別格だったという。筋肉痛を心配することなく、試合前であろうが、試合後であろうが「毎日のように筋トレをしていた」という。SHの流はFWについても積極的に勉強し、寮の廊下でもパス練習をしていたそうだ。

大会期間中は、連絡も控えめにしている。流とは、互いのSNSに「『いいね』をやり合っている程度」とか。ただ「(W杯が)終わったら飲みに行こう」「一緒に仕事ができたらいいな」という連絡を少しだけしたと明かした。

日本代表、ここまでの4試合を見て思うことは「自分の知ってるヤツが出てるんで『あいつ、あんなんやったのに』と自然と思えてくる。それが素直にうれしい。自分が(一緒に)プレーしてきた仲間が、ああいう舞台に出ている姿に(自分自身が1人)ファンになっている」とも話す。

帝京大ラグビー部には「Enjoy&Teamwork」というスローガンがある。しんやは「せっかくそういう舞台でやれるんやから、ラグビーを楽しんで、帝京大のチームワークを次のプレーで出してほしい」とも期待する。

しんやは大阪・東生野中でラグビーを始めた。ラグビーで誘われ、進んだ大商大高では、想定外の1年生4人。3学年で15人に満たず、最初は合同チームだったが、ウエートトレーニングに励み、ベンチプレスは100キロを超えるロックに成長。3年夏は大阪府選抜に名を連ね、ニュージーランド遠征も経験した。

帝京大に進み、5軍まである層の厚さに苦しみながらも、着実に成長していたが4年生のラストシーズン前のオフ、母校大商大高のOB戦で、頭を強く打ち付け、再検査を経て「くも膜のう胞」という病名を告げられた。脳へのダメージを避けるため、選手生活をあきらめた。

ラグビーはできなくなってしまったが、今年2月にNSC大阪校41期生の卒業イベントで優勝。首席として吉本入りし、芸人としてのステップを踏む。次の目標はR-1ぐらんぷり。日本代表の強さがお笑いの仕事の原動力になっており「勝てば勝つほど自分の仕事も増えてくるんで(笑い)。いつかみんなで一緒に仕事ができたら」と願った。【星名希実】

◆しんや 本名松永真也(まつなが・しんや)。1990年(平2)5月21日、大阪市生野区生まれ。東生野中でラグビーを始め、大商大高、帝京大とFW一筋。TBS系「ノーサイド・ゲーム」にも出演。181センチ、70キロ。血液型O。