「スペアク」出演俳優が「カメ止め」に見た夢と現実

映画「スペシャルアクターズ」ワールドプレミア試写会に登壇した前列左から、どんぐり、広瀬圭祐、宮島三郎、仁後亜由美、上田耀介、北浦愛、原野拓巳、櫻井麻七、川口貴弘、南久松真奈、山下一世、後列左から小川未祐、津上理奈、富士たくや、大澤数人、上田慎一郎監督、河野宏紀、清瀬やえこ、淡梨、三月達也、真魚、しゅはまはるみ(撮影・村上幸将)

<上田慎一郎監督「スペシャルアクターズ」俳優14人座談会その2>

「カメラを止めるな!」の、上田慎一郎監督(35)の劇場長編第2弾「スペシャルアクターズ」公開を記念し、出演した14人のキャストが集合し、初…そして唯一の座談会を開いた。2回目のテーマは「『カメ止め』で見た夢と、上田監督の作品に出演した現実のはざまに立つ、無名俳優の思い」。【聞き手・構成=村上幸将】

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上田監督は「スペアク」の出演者のオーディション参加者を、18年12月7日から24日までの日程で募集した。年齢は15歳以上で、プロ、アマを問わず公募した結果、約1500人の中から18人が選ばれた。中には、富士松鮎役の北浦愛(26)のように、11歳だった2004年(平16)の是枝裕和監督の「誰も知らない」で映画デビューし、コンペティション部門に出品されたカンヌ映画祭に参加した経験を持つ俳優もいたが、多くは無名だった。9月25日に東京・丸の内ピカデリーで行われたワールドプレミアの壇上で、廣瀬役の広瀬圭祐(34)は「去年の今ごろ、父に『役者を10年やった…頑張った』と言われた。オーディションを受からなかったら、やめようと思ってうけた」と語った。

そんな彼らの目標は、製作費300万円のインディーズ映画ながら東京都内の2館で公開後、話題を呼び、全国375館で公開、興行収入31億円超を記録した「カメ止め」で飛躍した俳優たちだ。ワールドプレミアには「カメ止め」に出演した、しゅはまはるみ、真魚、どんぐりが登壇し熱いエールを送った。“先輩”の姿を見て「スペアク」メンバーは何を思ったのか?

仁後亜由美(丹後真由役=34)ツイッターで「カメ止め」が盛り上がっていたりとか(フリーの立場から声をかけられ)事務所に所属される方を見て、うらやましいな、すごいなと思って、今回のオーディションに応募したところもありました。

仁後は、ワールドプレミアの壇上で「良い作品を作っても、なかなか見てもらうチャンスがないので、今回がその第1歩」と自主映画の世界で俳優として活動する厳しさを吐露した。

仁後 これまでは、有名な人が出ても、見に来てもらえないことが多かった。やっぱり「カメ止め」のおかげで、だんだん自主製作の映画やインディーズ映画が盛り上がってきているのを感じたりもする。知り合いの映画でも1万人入った、みたいな話を聞いて、すごいなって思うし。

宮島三郎(鬼塚役=38)舞台あいさつ中、どんぐりさんと、しゅはまさんが横にいらっしゃって「私たちの時、こんなこと(公開前のワールドプレミア)なかったよね」って、おっしゃっていて…どんぐりさんは泣いていた。本当に喜んでくれていて(心が)一緒な感じだった。上田監督が、拾い上げてくれたんだと感じました。それが、うれしくて。

山下一世(山本役=29)「カメ止め」には、頭が上がりません。

そんな舞台あいさつの壇上で、感動の涙を流したのが南久松真奈と清瀬やえこだった。

南久松真奈(麻奈役)上田監督が涙を浮かべていたのが私の位置から見えて、本当にうれしいのかなと思って。しゅはまさんのことは前から知っていて、すごく良い役者さんだと思っていたので「カメ止め」で、すごく報われて良かったと思いました。私も今回のオーディションに受かった時、同年代の役者さんたちが、みんなすごく喜んでくれた。おばさんだと、割と出る場も役の数も少ないんですけど「私たちも、やっていく勇気が持てた」と言ってくれたのは、すごくうれしかった。

清瀬やえこ(清水八枝子役=29)広瀬さんが、役者を続けてきた中での、お父さまとのやりとりを語っていましたけど…(津上)理奈ちゃんはOLさんですけど、ここにいる人は多分、俳優を続けて、頑張ってきたけれど、見つけてもらえない人が、ほとんどだと思うので。やっぱり見てもらうところに立てたんだということへの感謝と、見つけていただいた上田さんへの感謝とか。あと、俳優を続けるって、すごく大変だから、両親なり友だちもそうだし、家族がいる方は奥様とか、そういう人たちのサポートがあったから…ということを、走馬灯みたいに思っていました。みんな、やっぱり続けていて良かったという思いがすごくあったと思うし、それを壇上のみんなと感じていました。

他の出演者が感慨を語る、壇上で1人「『スペアク』は絶対に当たるので」とたんかを切ったのが、河野宏紀だ。

河野宏紀(大野宏樹役=23)自信というか…願望ですね。まぁ、僕が1番になりたいと言っても、あれなので…見てくれる人が、いろいろ感じることなので。僕としては願望でしかないです。1番になりたいですね。

キャストたちに、上田監督に、これだけは言っておきたいことも聞いてみた。

三月達也(大和田克樹役=46)撮影期間だけの関わりだったら、もしかしたら言いたいことがあったかもしれないけれど、僕らをいろいろなところに全部、連れていってくれて、鈴木伸宏さんが作られた主題歌「誰でもアクター」も歌わせてくれたわけで…なかなか、ないと思うんですよ。

-例えば…次も使え!! とか、言いたい?

清瀬 次も使え!! は、みんな思っているんじゃないですか(笑い)

-ちなみに「カメ止め」に出演した曽我真臣は、「カメ止め」の舞台あいさつに100日連続で登壇した貢献を受けて、東京・池袋シネマ・ロサの壇上で、上田監督から「上田慎一郎監督作品出演券」を贈られ、抱き合って男泣きした

三月 曽我君に「出演券を使わなかったんですか?」と聞いたら「いや、記念に取っておきますから」とか言ってかっこいいなと思った…いや、それを聞いたの、上田監督だったかな?

次回は14人のキャストが、これから「スペアク」とともに、どう進んでいきたいか、自らの言葉で存分に語る。