存続危機ミニシアターの支援基金で3億円超集まる

総額が3億3102万5487円に上ったクラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」のロゴ

新型コロナウイルスの感染拡大で客足が落ち、存続の危機に立たされた全国のミニシアターの支援を目的に、4月13日に始まったクラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」が15日午後11時59分、締め切られ、総額は3億3102万5487円に上った。コレクター(支援者)の数も、2万9926人に上った。集まった金額は、参加した118劇場103団体へ、5月末に第1回目の分配、6月末に第2回目の分配を行う予定で、1団体あたりの平均額は306万円。

同基金は、13日午後1時に国内最大級のクラウドファンディング・プラットフォーム「モーションギャラリー」でスタートした。参加を表明した劇場が休業を1、2カ月してもつぶれないよう、運営団体1つあたり平均150~200万円を分配することを目指し、目標額を1億円に設定。スタート段階で78劇場が参加した。

反響は大きく、スタートから3日目の4月15日午後9時45分に、目標額1億円を突破。モーションギャラリーで行ったクラウドファンディングが、開始から24時間で5500万円を突破したのは国内最速で、文化芸術活動のクラウドファンディングにおいての1億円達成も日本初、そしてモーションギャラリーでも史上初となった。同28日には2億円、今月14日正午すぎには3億円を達成した。本来は同日を締め切りとしていたが、当日にアクセスが集中してサーバートラブルが発生したため、期間を1日延長していた。

発起人の深田晃司監督、濱口竜介監督が、コメントを発表した。

深田監督 すでにご存知の通り、ミニシアター・エイド基金はこの一ヶ月、まったく想定していなかったほどの大きな盛り上がりの中にあり続けました。率直に言うと、私たちは最初は一ヶ月をかけてじっくり一億円を越えていこう、と話していました。そんな私たちの考えは本当に甘かったこと、映画ファンのミニシアターへの思いを舐めていたことは、開始3日で1億円を越えてしまったことで明らかでした。しかし、1億を越え、2億を越え、設定した目標値を超えるたびに私たちはSNSに「ありがとうございます」と書くわけですがこれがどうにも座りがよくないのです。この金額は、これまで多くの映画ファンにかけがえのない思い出を残し、コロナ禍においてもそれをなくしたくないと思わせるだけの大切な仕事をしてきたミニシアターだからこそ集まった記憶と希望の結晶です。なので、ただそのきっかけに携わったいわば「仲介人」にしか過ぎない私たちが、どこの誰の代表を気取って「ありがとう」とか言っているのだろう、と。ただ、多くの監督や俳優から賛同の声が集まり、また私の知るスタッフからもたくさんの喜びの声が寄せられるなかで、次第に考えが変わりました。今回、コロナ禍を生き抜く力をもらったのはミニシアターだけではない、映画に携わる私たち全員なのだと。なので、力をもらったひとりとして、堂々と言わせて頂きます。本当にありがとうございました!

濱口監督 一劇場運営団体につき平均300万。この額は、コロナ禍を乗り切る上で十分多いとは言えません。それでも、少なすぎるものでもありません。そう言えるところまでは来たのは、本当に一人ひとりの御志があってのことです。ただ、それだけ多くの人が動いたのは「ミニシアター」という場がずっと、誰かの人生を変えたり、支えたりする経験を作り続けてきたからにほかなりません。サイト上やSNSに寄せられたメッセージの数々から、映画館で生まれたとても多くの「映画と私」の関係があり、それこそが映画や文化の「社会的価値」の内実なのだ、という当たり前のことに改めて気付かされました。この金額が多すぎるものではない、というもう一つの理由は、これはミニシアターで仕事に従事する人々がしてきたことに対して当然払われるべきであった対価(の一部)だからです。「ミニシアター・エイド基金」がたとえ束の間であっても、劇場運営者にとっての精神安定剤となり、そこで働く人たちの暮らしを支えるお金となることを、心より願っています。その間に、次なる事態へ向けて態勢を整えましょう。ここに至るまで、あらゆる形で支援をしてくださった皆様に、心よりの御礼を申し上げます。本当に、ありがとうございました。(コメントは原文のまま)