「赤っ恥」「くそ真面目」テレ東らしさ満載社長会見

テレビ東京の定例社長会見に登場した名刺交換用のアクリル板。同局のキャラクター、ナナナのイラストの上に小さな穴があいている

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

テレビ東京の定例社長会見が2日、3カ月ぶりに行われた。コロナ禍で開催が見送られる間に小孫茂前社長(現会長)から石川一郎新社長となり、新体制として初の会見となった。

テレ東担当となって2年半、過去にBSジャパン(現BSテレ東)の社長として会見に臨席する石川社長を見ていたが、話題の多くはテレビ東京に関することで、当時の石川社長はおしゃべりな小孫前社長の隣に控える印象が強かった。

そんな石川社長は開始10分前、他の出席者に先がけて早々に姿を見せた。入るなり会場のコロナ対策の厳重さについて話し始め、十分すぎるほどのソーシャルディスタンスを確保した記者たちとの距離感をネタにしながら「心理的距離は近くなれるよう頑張ります」と和ませた。小孫前社長も会見の前後で雑談をはさんだが、この瞬間に「おしゃべりはテレ東の系譜か」と推察した。

所信表明では、広告売り上げの低迷や視聴率の不振など厳しい状況にも触れながら「情報のアンテナを高くし、新しいことにチャレンジしたい」と意気込み。一方で、デジタル技術を積極的に取り入れたいと述べる場面では「日本は対応が遅く、赤っ恥をかいているのが今の状況。先進国のつもりでいたら、いまだにファクシミリなんていうのが大手を振って歩いている」とバッサリ斬った。

自社の強みについては、「テレ東らしさ」という言葉を引き合いに「危なっかしいような、何とも言えないテレビ東京のドラマやバラエティーのテイスト。それと真逆にあるような、くそ真面目な番組。こういうテレ東らしさはこれからも応援していきたい。社員の皆さんがプライドを持って働ける環境を作ることに専念したいし、そうすれば今以上にいいものを作って、『テレビ東京ここにあり』という生きがいを示してくれると思う」と語った。

「赤っ恥」「くそ真面目」と率直過ぎるフレーズが印象に残ったが、これがテレ東流なのだろうと思う。私が知るのは前社長からだが、基本的にこの会社のトップは必要以外の手元資料をほとんど見ない。カチカチに準備された答弁ではなく、雑談のように(と言ってはいけないが)フリースタイルで話すので聞いていて面白みがある。用意された文面を読み上げるような、原稿化には楽ちんな社長会見もあるが、聞いている記者も人間。どちらの言葉に信頼が置けるかといったら、それは前者でしょうと思ってしまう。

ちなみに、この日の会見では名刺交換用のアクリル板が登場した。高さ180センチほどの板の中央に小さく横長の穴が空けられており、そこからお互いの名刺を交換し合ってください、というもの。これを使ってさっそく石川社長との名刺交換に臨んだが、少し穴が小さくて交換しづらかった。社長自身も「ちょっとやりにくい」と正直にこぼしていたので笑ってしまった。【遠藤尚子】