18歳の三浦春馬さん「夢って何なんだろう」/復刻

08年12月、本紙インタビューで

18日に30歳の若さで亡くなった俳優の三浦春馬さん。日刊スポーツの紙面インタビュー「日曜日のヒーロー」には、2008年と2013年の2度登場している。2008年12月3日紙面掲載の初登場時は18歳。俳優としての夢を語ると同時に、高校生らしい素顔も見せていた。

以下は当時の「日曜日のヒーロー」全文。

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名前の由来は「天空を駆け上がる駿馬(しゅんめ)」。7歳で子役としてドラマデビューしたが、精悍(せいかん)な青年へと変ぼうを遂げた今、ヒットドラマや映画の出演が続き、芸能界を疾走している。俳優三浦春馬(18)。現在、TBSドラマ「ブラッディ・マンデイ」(土曜午後7時56分)で主演を務め、来年も映画、舞台と大きな仕事が続く。多くの若手俳優が台頭した08年、実力も人気も名前のごとく駆け上がった1人だ。

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20日に最終回を迎えるドラマ「ブラッディ・マンデイ」の収録が佳境を迎える中、高校3年生の三浦はもう1つ、大きな仕事を抱えていた。期末テストだ。インタビューはドラマ収録後の午後7時。一刻も早く帰宅して勉強したい心境だろうが、笑顔で1つ1つゆっくりと真剣に答えた。

「明日は現代文のテストです。死ぬ(笑い)。せりふより勉強の方が暗記するのが難しいかな」。俳優は、役の心境を台本から読みとるだけに、現代文の小説問題は得意だろうと思うが「でもね、勉強しないと(点数は)取れないですよ。作者が僕が思ったことと違うことを考えていたりとかもするわけで。関係ないと思うな」。

映画「奈緒子」では駅伝選手、日本テレビのドラマ「ごくせん」ではやんちゃな高校生と体を張る役が多かったが、今回のドラマはテロリストと戦う天才ハッカー。体より頭を使う役だ。役づくりにハッキングを防止する企業を見学した。「ちんぷんかんぷんでした(笑い)。でも、スタッフの作業を見ることで、パソコンを売っている人の雰囲気だとかダウンロードする姿とか、どういう動きをしているかなど見させてもらって勉強になりましたね」。キーボードのブラインドタッチも練習用ソフトを利用して学んだ。腕前について「まだ、見せられるレベルまでは行っていないです。ドラマでは早く打っていますが、実際の画面では『ンギャオギャゴン(NGYAOGYAGON)』みたいな感じ(笑い)」。

今年は出演映画2本が公開され、3作の連続ドラマに出演するなど飛躍の年だった。1日に日本武道館で行われた「AAA(アクト・アゲンスト・エイズ)イベント」では、俳優佐藤健(19)と「YAH YAH YAH!」を歌い、7500人の観客の声援を受けた。ファンとの交流に「気持ちよかったです。去年出演した時よりも声援が多く感じましたね。歌はリハーサルなしで、ほとんどぶっつけ本番。高校2年のころからカラオケに行ってなくて。カラオケ行きたいな」。高校生の素顔に戻っていた。

芸歴は長い。ドラマデビューは7歳で、NHK朝の連続テレビ小説「あぐり」に出演した。「母親いわく、幼稚園とか通っていたんですけど、同じ年で遊ぶような子が周りにいなかったんですね。スポーツをやらせるにも、4歳のころだったのでちょっと早いと。そこでちょうど劇団創立の情報を手に入れて『こういう所に入れれば』と入れたみたいです」。

デビューの思い出は「ほとんど覚えてない。だって僕、塩おにぎりを食べていただけですよ(笑い)。電車の中で『おなか減った』と言ったら、ヒロインの方(田中美里)が、本当に覚えてなくてごめんなさいなんですけど、『おにぎりあげるよ』と言って『ありがとう、おいしい』と食べる役でした」。

03年にはNHK大河ドラマ「武蔵」に出演した。主演の市川海老蔵が、NHK紅白歌合戦に審査員として出演したことが強く印象に残った。「俳優でも紅白に出られるんだ」と感じた春馬少年は、小学校の卒業文集の「将来の夢」と題した作文で「紅白歌合戦に出演して、友だちを呼びたい」とつづった。「かわいいですよね。最近はそういうことは考えていないし…。でもいつかそうなったら、そのときの夢はかなうのかな。司会? 司会は絶対に無理ですよ。だって、僕なんかに司会をやらせたら、つまんない番組になりますよ(笑い)。『進行してくれよ』と思われちゃう」。

来年は映画「クローズZERO 2」(三池崇史監督)の公開、夢だった演劇ユニット「地球ゴージャスプロデュース公演」の出演も決まった。「昔はそこに仕事があったからやっていたという感覚で。結構、ボーッとしているんで何を考えているか分からないんですけど、高校進学の際に仕事と勉強が両立できる学校に進む決断をしていたので、そのときから(俳優を)続けたいと思っていたんでしょうね。子役時代の経験が今、自信を持って『今につながっている』とは言えないけど、そうなっていてほしいとは思います。地球ゴージャスの公演は、初めて見たときから『出てみたい』と。お客さんに間近で見てもらう機会が増えると思います」。

同名の人物に初めて会ったのは、映画「奈緒子」のロケ先、長崎・壱岐島だった。「そこで出会った夫婦の赤ちゃんがハルマ君。でも漢字が違って。どういう字かは忘れてしまいましたけど、自分と同じ読み方の人に初めて会いました」。

名前の由来について、周囲からは「春に生まれたうま年だからでしょ」と言われる。「実際にそうなんですね。でも、母親は『天空を元気に駆けめぐっていく駿馬』という意味を込めて付けたと」。小学校時代は、給食で春巻きが出るとクラスメートから「あっ、うまそうだな」と冷やかされたこともあったが、今は心からいい名前だと思っている。「あの年代の子供は、そういうのが好きなんですよ!(笑い)。いい名前だ!今は自信を持っています」。

俳優生活で最も緊張した現場がある。大好きな人気デュオ、ゆずのプロモーションビデオに出演した時だ。「僕がこの世界に入って一番お会いしたかった方で。夕飯後にお会いする予定だったんですけど、夕飯を食べようとしても、ご飯がのどに通らないんですよ。『うわあ、どうしよう』と思って。実際にお会いしたら、何を話したか全然覚えてなくて。たとえば、僕の握手会に来て下さるファンの方も、もしかして僕と同じようにこういう緊張感を胸に抱き会いに来て下さる方もいると思うし。すごくドキドキして何を話していいか分からない人もいるんだろううなと思って。握手会で会える時間は短い。そういう時間を大切にしてあげないとダメだなと思いましたね。そういうことを、考えさせてくれる出来事でもありました」。

ファンに対する思いやりはもちろん、両親への思いも強い。1人っ子で幼少のころ、夏に両親が海に旅行に連れて行ってくれた。「仕事してから、一緒に旅行に行っていないなあ…。小、中学時代から、両親をハワイに連れて行ってあげたいなと思ってるんですよね」。

小学校では「紅白出場」を夢に描いたが、高校卒業を控えた今、どんな夢を抱いているのか。「最近、夢って何なんだろうと思って。夢というと大きいものを想定しちゃうけど、僕はそれがなくて。ハリウッドに行きたいとか全然頭にない。たとえば、小さいことで『ゆずさんに会いたい』『ごくせんに出たい』とか、思っていたことが実現しているし、そういうのも夢だと思うし。ちょっとずつ、いろんなことが実現してきている。最終的に僕は役者という職業で、本当に何が好きだろうと。映画、ドラマ、舞台、他の何かかもしれない。いろんなことを経験して、最終的に僕が本当に好きなことを見つけるために、いろいろやっていければいいかな」。

◆三浦春馬(みうら・はるま)1990年(平2)4月5日、茨城県生まれ。97年NHK朝の連続テレビ小説「あぐり」でデビュー。小学校で2年間、中学校で2年間、サッカー部に所属。05年NHK朝の連続テレビ小説「ファイト」で人気となり、06年日本テレビ「14才の母」に出演。07年映画「恋空」で新垣結衣の恋人役を演じ、日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。今年1月放送の日本テレビ「貧乏男子 ボンビーメン」、4月に「ごくせん」に出演。愛読漫画は現在、85巻まで刊行されている「はじめの一歩」。料理にも興味を持ち、時間が空いているときは空揚げやブリの照り焼きにもチャレンジ。178センチ、血液型AB。

(2008年12月3日紙面掲載)