自称「第7世代の親世代」錦鯉長谷川M1頂点に挑む

M-1グランプリで優勝を目指す錦鯉の長谷川雅紀(左)と渡辺隆

アラフィフ芸人が人生大逆転を狙う。漫才日本一を決める「M-1グランプリ2020」(テレビ朝日系20日午後6時34分、道内はHTBで生放送)に、史上最年長で決勝に進出したお笑いコンビ「錦鯉」の長谷川雅紀(49=札幌市出身)が決戦を目前に心境を語った。94年に札幌吉本1期生としてお笑いの世界に飛び込んで26年。「第7世代の親世代」を自称する“遅咲き芸人”は、史上最多5081組の頂点を目指す。【取材・構成=浅水友輝】

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49歳長谷川のハイテンションのボケに42歳渡辺隆が冷静にツッコむ結成9年目の錦鯉。94年から四半世紀の芸歴を積み重ねてきた長谷川は「人生の折り返し地点から人生大逆転」をもくろむ。M-1決勝に向けてボルテージは上がる。

長谷川 決勝に行くからには(優勝決定戦で)必ずもう1本ネタをする。優勝を目指している。

2日の準決勝では大トリを務め会場の爆笑をかっさらった。同日の会見では司会の麒麟川島明(41)から「なんで出れているんですか」とお決まりの“年齢いじり”も。今の芸能界を沸かせる「お笑い第7世代」の若手と同じ舞台に立つ。

長谷川 最初のころは「僕も第7世代」って言って「どこがだよ」と笑いを起こしていたけど、最近は「親世代」って言ってます。第7世代がピックアップされればされるほど、逆に僕らも目立つ。敵対はしていないですね。

お笑いの世界に飛び込んだのは23歳だった94年。札幌市内の専門学校を中退後、アルバイト先のホテルの同僚が劇団員だった縁で舞台に上がるようになった。「笑いを取る場面が面白かった」。当時テレビで見た海砂利水魚(現くりぃむしちゅー)などのコントに衝撃を受け、札幌吉本ができたのを機に芸人に転身した。同期のタカアンドトシとは、チケットの手売りや合同コント、初のテレビ出演など「全部一緒に経験してきた」。先に売れた出世頭との交流は今も続く。

30歳での上京後は何度も辞めようと思った。前コンビの解散、ピン芸人に転向…。12年に渡辺の誘いで錦鯉を結成する時も悩んだ。

長谷川 笑いが好きだから売れなくてもやりたいとか、俺たちは面白いからいつか花咲くから続けよう…、というよりは辞めるきっかけを逃した。

「延命していた」時間を経て、昨年のM-1敗者復活戦をきっかけに昭和の芸人らしい生き方が話題を集め、今年はメディア出演も増えた。「この年齢になって緊張したりわくわくした」。札幌で暮らす母や周囲が喜ぶ姿もうれしかった。母と離婚して別に暮らしていた父もカレンダーにテレビの出演日の印をつけ楽しみにしていたという。父はM-1予選中に亡くなり「決勝を見せられなかったけど、元気な姿は見せられた」。一時は転職を勧められた家族に、続けてきた成果をほんの少し見せられた。

「今年以上に仕事が増えて活躍したい」。M-1は飛躍を目指す来年に向けても大事な舞台だ。

長谷川 今は歯が8本ない。歯医者に通って入れ歯を作っている最中。優勝して1000万円が入ったらインプラントにしたい。20年ぶりぐらいに奥歯でちゃんとものをかみたい。

豪快な生き様と芸歴26年で培った腕で、師走のお茶の間に大爆笑を巻き起こす。

◆錦鯉(にしきごい) 12年4月結成。ソニー・ミュージックアーティスツ所属。ボケの長谷川雅紀(はせがわ・まさのり)は1971年(昭46)7月30日生まれ、札幌市出身。ツッコミの渡辺隆(わたなべ・たかし)は1978年(昭53)4月15日生まれ、東京都出身。M-1グランプリの過去成績は準決勝敗退が16、19年の2度、準々決勝敗退が15、17、18年の3度。

錦鯉・長谷川の芸人人生

◆少年時代 ノートに漫画を書いたりすることが運動より好きだった。小学生のときはドラえもんに傾倒して漫画を集めた本棚に「どら焼きを祭っていた」。中学、高校ではラジオの深夜番組「アタックヤング」や「オールナイトニッポン」を聴くのが日課。「高校は気が付くと卒業してた」。

◆アルバイト遍歴 16歳のときに「当時の最低賃金はわからないけど、たぶん法律違反」と振り返る時給380円で焼き鳥店で働いた。その後はフェリーの皿洗い、牛丼店店員や警備員、ホストなど多数。ライブの警備では「風船を目がけて走ってきたV6のファンに踏まれた」。現在も水道料金の徴収員を務めている。

◆貧乏生活 上京後は築60年なし風呂、エアコンなしの家賃3万円のアパートに10年以上暮らした。料金を支払えず電気を止められた時には「2階の角部屋で信号機が近くにあって明かりでひげをそった。赤が見づらくて青が見やすかったから、青のときにひげをそって、赤の時に手を止めた。家の中で信号を守った」。

◆M-1グランプリ 01年に始まった漫才師の日本一決定戦。現在の出場資格はプロ・アマ問わず、結成15年以内。審査基準は「とにかくおもしろい漫才」。休止をはさみ16回目の今年は史上最多5081組がエントリー。優勝賞金は1000万円。決勝は、視聴者投票による敗者復活枠を含む10組が1回戦でネタを披露。上位3組が優勝決定戦を争う。道内出身者では04年にタカアンドトシが出場資格最終年で初出場し4位。オズワルド畠中悠は今回で2年連続出場となる。