川上奈々美、自分の演技の下手さに気付き舞台のオーディションへ/連載2

これまでとこれからの女優活動について語った川上奈々美(撮影・河田真司)

人気セクシー女優川上奈々美(28)がアダルト業界からの引退を発表した。新たに個人事務所を設立し、女優としての活動に本腰を入れる。今月公開の映画「ゾッキ」に出演しているほか、22年公開の映画「レンタルファミリー」の主演も発表されている。さらに、現在、4本のドラマ、映画の撮影が重なるなど、オファーが絶えない。なぜアダルト業界から離れ、女優を目指すのか。その本音を聞いた。

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川上は12年1月、アダルトビデオ「真★美少女」(アリスJAPAN)でデビューした。

きっかけはスカウト。それも渋谷のスクランブル交差点というから、典型的な絵に描いたような話だ。もともとはバンド少女。誰もが夢に描くように「有名になりたい。売れたい。学園祭に出たい」と思っていたという。

ギター&ボーカルで華やかなステージを目指していたが、ほとんどの人がそうであるように、高校卒業と同時に夢はあきらめた。福井県から上京。エステティシャンとして就職した。環境が変わった東京で、仕事にも慣れない中、スカウトマンに誘われた。

「路上でスカウトされました。バンドマンになりたいっていったら、頑張れば、何でもできるよって。AVだとは思いませんでした」

仕事が決まり、現場に向かった。何となく怪しいなとは感づいていたが、想像通りの撮影現場だった。だが、サービス精神が旺盛な性格と自ら評する川上は、一大決心した。

人によっては卑猥(ひわい)に感じる言葉が次から次へと飛び出すが、川上の場合は持ち前のキャラクターなのか至って明るい。ドライな雰囲気を醸し出す。「もともとセックスは大好きでした」と言うが、その後の撮影は苦痛の連続だったという。その背景には彼女が育った環境があると自己分析する。

川上は福井県生まれ。保守的な考えが根強い両親のもとで育った。川上いわく、母が性に対して抑圧的だったという。

「女の子らしくありなさいと。いわゆる古風な女性として育てられました。ドラマでもキスシーンが出ると、すぐに変えてしまうような。性は悪いものというふうに、抑圧されていました。だから、AVデビューがばれると縁を切られました。今はもう、仲良くなりましたけど、いろいろとありました」

AVはやりがいもあり、誇りも持っているという。ただ、親子の縁を切ってまでして挑んでいる仕事だ。必然的にそれがプレッシャーとなり、撮影に対して頑張れば頑張るほど苦しくなっていった。

「そんな環境で気持ちいいセックスができるわけがないんです。気持ちが乗らないと、痛みも出てくるし、痛いのが嫌だと、セックスも嫌になる。不思議なことに、気持ちいいセックスでないと作品の売り上げも伸びないんです。他の女優さんは分かりませんが、私の場合はそうでした」

川上は気持ちを入れ替えることにした。男優さんを好きになるように努力した。男優の少しでもいい部分を見つけ、そこに好意をもつようにしたのだった。

「不思議なものです。私はセックスが好きなんだから、その好きなセックスができるんだよ、イェーイみたいな。現場に行くのは楽しいと思うようにしていくうちに、マインドが変わり、作品の売り上げも伸びるようになりました。不思議ですね、ファンの皆さんはそれが分かるんですね。こんなに評価が変わるものなのかとも思いました」

撮影が楽しくなっていくと、今度は、ドラマふうの作品でも自分の芝居の下手さに気付くようになる。「せりふがほぼ棒読みなんです。演技にもなっていない」。そこで、どうにかしようと考えるのが、川上の前向きなところだ。事務所に掛け合い、劇団のオーディションを受ける。

「芝居がうまくなりたいと思って。その時に、360度見られる舞台だと思ったんです。オーディションに受かり、年に4回ほど、舞台に出させてもらいました」

この時の舞台が縁となり、川上に映画「メイクルーム」の出演オファーが届くことになる。前回書いた、女優を目指すきっかけとなった作品だった。(続く)【竹村章】

◆川上奈々美(かわかみ・ななみ)1992年(平4)10月14日、福井県生まれ。出演したAV作品は多数。アイドルユニット、恵比寿マスカッツに所属したほか、ストリッパーとしてもデビューした。初めて出演した映画は15年の「メイクルーム」。主な出演映画やドラマに「下衆の愛」「東京の恋人」「悲しき天使」「全裸監督」など。スリーサイズはB79(C-65)-W57-H80センチ。160センチ。

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