人気セクシー女優川上奈々美(28)がアダルト業界からの引退を発表した。新たに個人事務所を設立し、女優としての活動に本腰を入れる。今月公開の映画「ゾッキ」に出演しているほか、22年公開の映画「レンタルファミリー」の主演も発表されている。さらに、現在、4本のドラマ、映画の撮影が重なるなど、オファーが絶えない。なぜアダルト業界から離れ、女優を目指すのか。その本音を聞いた。
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川上は昨年12月、個人事務所を設立した。これまでは、多くのセクシー女優が所属する大手事務所に在籍。兼業で映画にも出演してきたが、いくつかの壁も生じてきたからだ。
「言葉にするのは難しいんですが、簡単にいうと、AV女優だとなかなか女優としてやっていくのは難しいようです。キャスティングには名前が挙がっても、やはり現役だとハードルは高い。私はそんなイメージも含めて払拭(ふっしょく)したいと思っていて、ほかの事務所と業務提携でやっていこうと思ったのですが、やはり現役だと難しいということでした」。
そこで、川上はセクシー女優からの引退を決意する。自ら事務所を設立し、女優業に本格進出することを決意した。事務所名は「ボアフルーツ合同会社」。資本金は300万円。ある支援者の会社に間借りしており、経理を見てくれる人が1人いるだけだ。マネジャーもいないので、現場には荷物を抱えて1人で向かう。それにしても、脱いだ女性に対しての壁は厚い。
「お金を出す方、スポンサーがAV女優が嫌だというならそれは仕方がないですね。私が、なぜAV女優がだめなんですかと聞いても、明確な答えはありませんから。ただ、反社とのつながりがあるのではないかという心配や、リスクを減らしたいということなんでしょう。今のAV界は反社とはつながりはありません。出演強要なども昔はあったのかもしれませんが、今は女優さんの人権も尊重されています。まだ、そんな昔のイメージが残っているんでしょうかね」
セクシー女優を引退し、今度は芝居が評価される女優として生きる道を選んだ。演技派と言われては来たが、すぐに通用するとは思ってはいない。そのために、数年前から、いわゆる生活レベルを下げているという。住まいも2LDKのマンションからワンルームに引っ越した。
「AV業界はありえないお金をいただけるので、今後は不安です。でもそれは分かっていることなので、貯金はしてきました。4~5年前からですかね。家賃も下げました。ワンルームですがその方が幸せ感が高かったりするんです。自分の範囲内という安心感ですかね。前の部屋はモノがあふれすぎて、モノに固執していて不健康だったのかもしれません。人に依存したり、傷つけあったり。だから、彼とも別れました」
個人事務所なので、ギャラ交渉も自身で行う。意外と周囲も親身になって考えてくれることに驚きを隠せない一方で、自分で自身の価値を上げていかねばならないというプレッシャーも感じている。
「いわゆる“脱ぎ要員”として起用されている時期もありました。でも、この仕事って私でなくてもいいのではという現場もありました。ギャラも安かったですが、その時は、ギャラも確認せず現場に行っていました。でも、きちんと交渉するようになったら環境は変わりました。知り合いのプロデューサーからは設定が悪いと言われました。脱ぐのか脱がないのか。クライアントに嫌われて、一生使わないと言われたとしても、それを恐れるかどうかは、自分次第だ。それなら、私は嫌われてもいいと思うようになりました」
それぞれの女優が脱ぐか脱がないかは、さまざまな要因が関係する。そして1度脱ぐと、今度は脱ぐ仕事がたくさん舞い込むという。そのあたりの調整が難しい。
「私はもう脱がないというわけではありません。その作品で脱ぐ必要があれば脱ぐ。私はAVとストリップで10年間裸になってきた。なので、今後はその脱ぐ質を変えていこうと思います。今は、例えばグラビアアイドルの初脱ぎの映画もあるし、AV嬢は消耗品でもある。だから、困難であるのは承知で、ヌードを消耗品として扱われないようにしていきたい。たいへんなことではあるけれど、やっていきたい」
川上がそう主張するのは、自らのためでもあるし、この業界のためでもある。AV女優のいわゆるセカンドキャリアがなかなかうまくいかない現実があるからだ。
「私が見てきたAV女優のその後は、肩身が狭いと思っている人が多い。引け目を感じている人がほぼ100%だとも思う。もちろん、AVを辞めて女優として活躍している人も多いですけど、AVという過去を消さないと活動できないケースが多い。だから、私はそんな環境も打破したいとも思っているんです」
さらに、川上は「AV経由でなかったら、役者になる覚悟はできなかったかもしれない。この10年、苦しいことが多かったし、苦しさを役者として表現しないと救われないとも思っています。今まで感じてきた感情やAV女優としての歴史がなければ、役者にはなっていません」と断言する。
出演する映画「ゾッキ」が先週、公開された。川上のふるさとでも上映される予定で、母から「お父さんと見に行くからね」との連絡が入ったという。そのことを話す川上の笑顔が、もっともナチュラルだった。(おわり)【竹村章】
◆川上奈々美(かわかみ・ななみ)1992年(平4)10月14日、福井県生まれ。出演したAV作品は多数。アイドルユニット、恵比寿マスカッツに所属したほか、ストリッパーとしてもデビューした。初めて出演した映画は15年の「メイクルーム」。主な出演映画やドラマに「下衆の愛」「東京の恋人」「悲しき天使」「全裸監督」など。スリーサイズはB79(C-65)-W57-H80センチ。160センチ。