映画館休業で苦境映画界…メジャーとインディーズ乖離している場合じゃない

吉永小百合(2021年5月22日撮影)

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

吉永小百合(76)が22日、都内で行われた主演映画「いのちの停車場」(成島出監督)公開記念舞台あいさつで、緊急事態宣言の延長で東京都が独自に決めた、劇場や演芸場は上限5000人かつ収容率50%、午後9時までの条件で休業要請が解かれた一方、映画館は休業要請が続く12日以降の休業要請に疑問を呈した。

「演劇は大丈夫だけど、映画はダメとうかがって大変ショックを受けましたし悲しかった。くじけそうになりました」

映画が封切られることを出演者、監督、そして観客が皆で喜び合う舞台あいさつの冒頭で、吉永が目に涙を浮かべて都の措置の曖昧さに首を傾げる姿を見ていて、映画記者として、いたたまれなくなった。

翌23日付の紙面に、いかに異例の事態であるかを伝えたく原稿を書いた。その中で、都の曖昧な線引きだけではなく

「単館系の映画館の経営者や作品を上映する監督は、昨春から『#SAVE the CINEMA』キャンペーンを組み、文化庁に要望書を提出し、抗議活動も辞さず映画を守る戦いを続けてきた。ただ大手を含めた業界全体が一枚岩だと言えるだろうか? 吉永が発言するに至ったことを、業界全体で重く考えるべきではないか?」

と映画業界にも疑問を投げかけた。

20年4月に最初の緊急事態宣言が発出された後、全国の映画館が休業を余儀なくされ、各地の単館系の映画館は存続の危機に立たされた。その中、国際的にも評価の高い深田晃司監督(41)と濱口竜介監督(42)が発起人となり、同13日に「ミニシアター・エイド基金」を立ち上げた。参加を表明した劇場が1、2カ月、休業してもつぶれないよう、平均150~200万円の分配を目指し、目標額は1億円に設定。反響は大きく、3日目の同15日午後9時45分に目標額1億円を突破。同5月15日の締め切り時点の総額は3億3102万5487円に上った。集まった金額は参加した118劇場103団体へ分配され、1団体あたりの平均額は306万円となった。

並行して、ミニシアターの救済を目的としたプロジェクト「#SAVE the CINEMA」も立ち上げられた。こちらはインターネット署名サイト「Change.org」で署名を集めたり、政府に緊急支援を求める要望書を作成し議員連盟、文科省、文化庁へ提出。舞台、ライブハウスといった音楽業界とも連携し、3者で展開する文化芸術への支援を求めるキャンペーン「#WeNeedCulture」として国や中央省庁、議員への働き掛けを行い、活動を継続している。

映画製作を行う作り手たちも厳しい状況にある。映画会社やテレビ局に所属する“社員監督”も存在するが、作り手の多くがフリーランスで、持っている技能や経験を買われ、監督や現場ごとに呼ばれ「組」を作り、1本の映画を作り終えたら、また次の企画、現場の「組」に入る。映画館が休業すれば、そこで上映する映画の製作も止まってしまうわけで、製作者たちはギャランティー=食いぶちを失うことになる。

記者は取材する中で極めて切実な現状を知り、映画業界の各所で関係者に話をするようになった。ただ、大手や中堅の配給、製作会社の社員の中には、自分事として考えていない印象を受ける人がいた。そもそも運動自体、知らないという人も少なからずいた。

単館系の映画館で上映されるインディーズと呼ばれる映画は、公開規模が小さいだけに監督、作り手の作家性を前面に押し出した作品が多く、作り手、俳優ともに新たな才能が次々と生まれる。認められればステップアップし、中堅やメジャーの映画会社で作品を作るチャンスをつかむ。製作費300万円、都内2館の公開から興行収入31億円、全国375館に拡大公開された18年「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督は、その好例だ。

ミニシアターが苦境に陥れば、自ずと新たな才能も生まれにくくなる。そうなれば数年後、メジャーや中堅の配給、製作の各社の作品にも響いてくるはず…それなのに、という思いは日に日に強まった。映画業界が一枚岩になっているとは残念ながら思えなかった。

映画業界として一枚岩にならないと…そんな思いを抱えながら取材してきたこの1年で、緊急事態宣言は3度発出され、映画業界全体がダメージを負い始めた。その中、11日に全国興行生活衛生同業組合連合会(全興連)と東京都興行生活衛生同業組合(都興組)が声明文を発表。「現在まで映画館でのクラスターを発生することなく営業することができた自負があります」とした上で、都が12日以降、独自に決めた映画館への休業要請を「痛恨の極み」「理解することが難しく」と憤りをあらわにした。

さらに24日には東宝、東映、松竹、KADOKAWAの映画製作配給大手4社の団体、日本映画製作者連盟(映連)が声明文を発表。政府に対し、緊急事態宣言下で休業を要請されている東京都、大阪府などの映画館について、感染症対策に万全を期すことを前提に6月1日からの営業再開を認めて欲しいと要求。各地方自治体にも、利用にやむを得ず制限をかける場合、映画館を不平等に取り扱うことのないよう要求した。大手4社が組む映連が動いたことに、さすがに都も休業要請を見直さざるを得ないだろうと、映画業界内で期待の声は多かった。

そして28日、政府が緊急事態宣言の再延長を決定したことを受けて、東京都は映画館に出していた休業要請を緩和することを決定し、6月1日以降、劇場や演芸場と同じように午後9時まで時短営業できることになった。上限5000人かつ収容率50%という条件も同じだ。

ひとまず、東京都内の映画館が6月1日から動き始めることは、映画業界にとって大きな再起への一歩となる。「いのちの停車場」も同日、東京・丸の内TOEIに観客を入れて、吉永と広瀬すず(22)田中泯(76)が登壇しての舞台あいさつを行うと発表した。また大阪府も映画館の平日の時短営業を容認する休業の緩和を決めた。

ただ…敢えて言いたい。映画館の時短営業が再開した今だからこそ、考えるべきことはあると。映連は24日の声明の中で「作品の製作そのものを延期または中止するケースも想定され、そうなると製作会社のみならず、フリーランスのスタッフをはじめ多くの製作関係者の生活に多大な影響を及ぼすことになります」と、フリーの製作者にも一定の配慮を示した。

そのことについて、某映画会社の社員に話を聞くと次のような言葉が返ってきた。

「私は映画会社で働いているから月々、給料が出ます。でも、撮影現場で働いている製作の方々はフリー…もう少し早く、そうした現場の方のことを、自分も考えていれば…」

一方「#SAVE the CINEMA」公式ツイッターも26日、映連の動きに期待しつつも、次のツイートを投稿した。

「お前ら誰?というのは百も承知の上で、日本はメジャーとインディペンデントが乖離し過ぎているのではと、この一年の活動を通して思います。映画業界全体で、映画を産業としても文化としても支えていく枠組みが、コロナ禍きっかけではありますが、作られるべきではないかなと率直に思います」(原文のまま)

改めて言いたい。大手を含めた業界全体が一枚岩だと言えるだろうか? 映画界全体で、1つになって考えなければいけないのではないか? 微々たる力もないけれど…映画記者として、出来ることをやっていく。【村上幸将】