小野田寛郎さん史実が元の「ONODA」カンヌ映画祭ある視点部門OP作品

フランス、ドイツ、ベルギー、イタリア、日本の合作映画「ONODA」にダブル主演する遠藤雄弥(左)と津田寛治

太平洋戦争後も任務解除の命令がないままフィリピン・ルバング島で過ごし、約30年後の1974年(昭49)に51歳で日本に帰還し、14年に91歳で亡くなった旧陸軍少尉の小野田寛郎さんの史実を元にした映画「ONODA(原題)」(今秋公開)が世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭ある視点部門でのオープニング上映作品に決まった。14日に映画祭事務局が発表した。

映画はフランス、ドイツ、ベルギー、イタリア、日本の合作で製作され、16年の長編映画デビュー作「汚れたダイヤモンド」(2016)でフランス批評家協会賞・新人監督賞のほか数々の賞を総なめにした、フランスの新鋭実力派アルチュール・アラリ監督(39)が手掛けた。同監督は全編日本語での演出にこだわり、徹底したリサーチと演出力で、史実を元に小野田という1人の男が生き抜いた孤独と壮絶な日々を描いた、人間ドラマを作り上げた。

ある視点部門は、カンヌ映画祭の公式セレクションの一部門で、新人&ベテランの監督作関わらず独自で特異な作品群が選考され、毎年、世界各国から20本ほどの作品が選出されている。日本映画では、黒沢清監督が08年「トウキョウソナタ」で審査員賞、15年「岸辺の旅」で監督賞、深田晃司監督が16年「淵に立つ」で審査員賞を受賞。日本人俳優が関わる作品がオープニング上映作品となるのは、河瀬直美監督の15年「あん」以来となる。

ダブル主演の俳優遠藤雄弥(34)と津田寛治(55)がコメントを発表した。

▼遠藤 小野田寛郎(青年期)役を演じさせていただいた、遠藤雄弥です。まずは、共演者の皆様、アラリ監督をはじめ、スタッフ関係者の皆様に御祝いと感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。アラリ監督から撮影イン前に、これから始まる撮影はとても大きな冒

険になる。この大冒険を最後まで一緒に楽しみましょう! というメールをいただきました。まさに、その大冒険は映画そのものであり、人生そのものでした。この作品を通して、少しでも皆様の心に響けば幸いです。そして、皆様の健康と幸せを心から祈っております。映画「ONODA」お楽しみ下さい。

▼津田 自分の主演作がカンヌ映画祭で上映されるという夢がかなうことになり、感無量です。アルチュール・アラリ監督に出会えて本当に良かったです。若きフランスの映画監督が一人の日本兵に心動かされ、何年もの月日をかけて映画にしたこの作品に参加したことは、僕の人生において大きな事件でした。日常と非日常に境はない、だからこそ夢は実現するんだということを、南国のジャングルの現場にて学べたの

です。アラリ監督、そして小野田少尉、すてきな現実をありがとう!