中村雅俊、芝居にも歌にも100%全力投球「そうじゃないと失礼かなと」

抱負を熱く語った中村雅俊(2021年6月撮影)

歌手で俳優の中村雅俊(70)が、デビュー48年目で初めてフルオーケストラと共演する全国4都市ツアー「ビルボードクラシックス 中村雅俊 Symphonic Live 2021」に挑む。

8月28日の兵庫・西宮からスタートし、名古屋、熊本、東京で「ふれあい」「俺たちの旅」「恋人も濡れる街角」などのヒット曲を壮大な演奏をバックに熱唱する。新たな挑戦への意気込みと、今までの足跡について聞いてみた。

    ◇   ◇   ◇

慶大時代に俳優に憧れて、文学座の研究生になった中村。まだ舞台にすら満足に立ったことがなかったが、74年4月スタートの日本テレビの連続ドラマ「われら青春!」の主役、ラグビー部顧問の若き高校教師・沖田俊役に抜てきされた。

「73年の話ですけど、秋から冬にかけて日本テレビのプロデューサーの岡田普吉さんと中村良男さんが『太陽にほえろ!』の台本を持ってきて、文学座の男性7人くらいがオーディションを受けたんです。セリフを言って面接があって。それまでテレビも出たことなかったから、受かるわけがないと思って。その後、文学座の映画放送部に、ある日突然呼ばれて『中村、お前、主役で決まったよ』って言われて。そういうことってあるんですね(笑い)」

「青春とはなんだ」「これが青春だ」「飛び出せ!青春」などのヒットドラマを生んだ日本テレビの学園青春シリーズの放送時間は、日曜午後8時だった。

「NHKの大河ドラマの裏ですよ(笑い)。時々、巨人戦のナイターが放送されたけど、半年間で全22話の放送でした。そして翌年の4月からは松田優作さんとダブル主演の刑事ドラマ『俺たちの勲章』、その次の10月からは『俺たちの旅』の放送が始まった」

俳優として順調なステップアップを続ける一方で、歌手としても74年7月に発売した「われら青春!」の挿入歌「ふれあい」が大ヒット。今に続く“歌う青春スター”中村雅俊が確立された。

「昔は、人前で歌うことに対してあまり自信がなかったんです。だからエクスキューズしていたんですよね、『俺、役者だからさ』みたいな。だけど、真剣に考えたらライブに来てくれるお客さんはそんなの関係ない、ちゃんと表現者としてパフォーマンスして感動させてほしいと思いますよね。だから“100%役者で100%歌手”という意識を持って臨んだし、そうじゃないと失礼かなと思いました」

芝居にも歌にも100%全力投球。ハードなスケジュールも苦にならなかった。

「一番は歌うことが好きだったというのがあったけど、大学時代から曲を作ったりしてクラブの仲間の前で歌ったりしてたしね。『ふれあい』がデビュー曲になるんですけど、120万枚以上売れたんですよ。それによって幅広い層に認知されるようになりましたよね。街を歩いていて有線で『ふれあい』が流れると『売れてるんだな』と思っちゃいましたからね、当時は」

若かった。目の前の好きなことを無我夢中でこなしていた。【小谷野俊哉】

(続く)

◇  ◇  ◇

◆中村雅俊(なかむら・まさとし)1951年(昭26)2月1日、宮城県女川町生まれ。73年慶大在学中文学座付属演劇研究所入所。74年4月の日テレの連ドラ「われら青春!」で主演に抜てきされデビュー。同7月に挿入歌「ふれあい」で歌手デビュー、120万枚超の大ヒット。75年同局「俺たちの勲章」「俺たちの旅」、映画「ふれあい」。歌手としてシングル55枚、アルバム41枚をリリース。182センチ。血液型O。  ◇  ◇  ◇

◆「billboard classics 中村雅俊 Symphonic Live 2021~Before DAWN~」◆

▼8月28日午後5時 西宮・兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール 大阪交響楽団

▼9月3日午後6時30分 名古屋・愛知県芸術劇場コンサートホール 大阪交響楽団

▼9月26日午後5時 熊本・熊本城ホールメインホール 九州交響楽団

▼9月30日午後6時30分 東京・Bunkamuraオーチャードホール 新日本フィルハーモニー交響楽団。いずれも指揮は円光寺雅彦、サポートミュージシャンは大塚修司。