日本評は時々辛口 イランとの友好の象徴的存在ショーレ・ゴルパリアンさん

ショーレ・ゴルパリアンさん

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

都内を歩いていて、いつも不思議に思うのが、ペルシャじゅうたん店の多さだ。ここにもか、というような路地裏にもあって、イラン人の店主は決まって愛想がいい。場違いなほど高価な品を売りながら、それなりに繁盛しているようにも見える。

イランに親日家が多いのは日章丸事件(53年)に起因すると言われる。映画「海賊と呼ばれた男」(16年、岡田准一主演)でも描かれたこの国際的衝突は、石油国有化をきっかけに欧米メジャーの包囲網で孤立したイランから、出光興産が石油を買い付けた武勇伝的逸話である。非武装のタンカーで英国海軍の裏をかいたのだから、今の日本では想像しにくいリスキーな行為だ。米国の「天敵」イランと、親米日本が長年にわたって友好関係を築いているのも、そんな縁があるからだろう。

ショーレ・ゴルパリアンさんは両国友好の象徴的存在だ。初来日から40年。両国を行き来しながら映画を中心に文化交流に尽力、昨年旭日双光章を受章した。巨匠アッバス・キアロスタミ監督の通訳を長年務め、遺作「ライク・サムワン・イン・ラブ」(12年)では監督補も務めた。そのキアロスタミ監督の回顧上映会「そしてキアロスタミはつづく」が都内で開催され、ショーレさんに話を聞く機会があった。

「余計なものを省き、人間の自然な感情の移ろいを切り取ったのがキアロスタミ作品です。だから、コロナ禍でみんなの心が疲弊している今にぴったり。きっと癒やされると思います」と笑う。「ミニマリストだったキアロスタミはシンプルな美しさを追及する日本美術が大好きで、小津安二郎監督の手法にも自分を重ねていました。日本の人には思いやりがある。ものに感謝する姿勢にイランの人は畏敬の念を持っています」とも。

一方で「ニュースでは動物にまつわる話題ばかりが目につきます。国際問題を取り上げる比率が異常に低いのは驚きですね」と指摘する。

つい「島国だからですかねえ」とぬるい感想を口にすると「他にも島国はたくさんありますよ。日本みたいなところはありません。危ないこと、嫌なことからいつも目を背けるところ、ありますよね」と厳しいことを言われた。長年地政学的リスクにさらされてきたイラン人らしく、ショーレさんの日本評は時々辛口だ。

嫌なことから目を背け続ける先送り体質は、わが身を振り返っても耳が痛かった。【相原斎】