仲代達矢（89）が12日、東京・内幸町の日本記者クラブで会見し、役者生活70年を振り返るとともに、主宰する無名塾公演「いのちぼうにふろう物語」（9月4日～10月10日、石川県七尾市・能登演劇堂）への思いを語った。

演出家、脚本家の妻宮崎恭子さんの遺作を、夫妻で監修した能登演劇堂で上演する。仲代は「彼女との共同作業のつもりで稽古に励んでおります」とし、「どんな悪いやつでも人間としてのまっとうさがあり、いとおしい。普遍的なテーマを見てほしい」と話した。

13歳で終戦を迎え、夜間高校に通い、19歳で俳優座に入って70年。「まあよく闘った人生だった。今までよく生きてたなと奇跡に感謝するばかりです」と振り返った。

12月には90歳を迎える。今でも1日1時間のストレッチを欠かさないが、80歳を過ぎてからは体力的に厳しいという。「現役をそろそろ辞めて、冬眠の時代に入ろうかな、戦う余生じゃなく、安らかな余生に入ろうかな」とぽつり。それでも「『いのち－』が終わったら、もう1本やりたいとすけべ根性を起こすかもしれない。引退公演とは言いたくない」と、現役続行を宣言した。

以前は1年のうち半分ずつ、舞台と映画に取り組んだ。映画では小林正樹監督、黒澤明監督らの名前を挙げ「実力ある監督たちと作品を作れたのは役者人生の宝物です」と話し、高峰秀子さん、山田五十鈴さんを「映画の先輩」とした。

また、まもなく迎える終戦記念日を前に、仲代は「兵隊にこそ行っていませんが、戦争体験者です。がれきと死体だらけの街をさまよう幼少期でした。戦争で一番犠牲になるのは庶民。絶対戦争反対を言いながら死んでいきます」と、色紙には「平和」の揮毫（きごう）した。