世界3大映画祭の1つ、ベネチア映画祭授賞式が10日(日本時間11日)イタリアで行われた。クラシック部門に選出された、宍戸錠さん主演の1967年(昭42)の「殺しの烙印」(鈴木清順監督)4Kデジタル復元版が、アジア映画として初の最優秀復元映画賞を受賞した。10日は製作・配給の日活の創立記念日で、翌23年は鈴木清順監督の生誕100年という、節目のタイミングでの快挙となった。
クラシック部門は、12年に設立されたベネチア映画祭の1部門で、過去1年間に復元された名作の中から特に優れた作品が選出される。日本映画はこれまで「七人の侍」(黒澤明監督)、「お茶漬の味」(小津安二郎監督)、「山椒大夫」(溝口健二監督)、「無法松の一生」(稲垣浩監督)などが選ばれてきた。5日のワールドプレミア上映にも参加した、日活の林宏之執行役員がコメントを発表した。
「昨年の『(秘)色情めす市場』4Kデジタル復元版に続いて今年のヴェニス・クラシックスには本作と今村昌平監督『神々の深き欲望』4Kデジタル復元版の2作品が選出されておりましたが、当社創立110周年を迎えるまさにその日に、アジア映画初の最優秀復元映画賞受賞という栄誉に浴し、これ以上の喜びはありません。現地での上映は大変盛り上がり、作品の内容はもちろんのこと、その高い修復技術にも注目が集まりました。また今回新たにデザインしたポスターや配布したリーフレットも高い評価をいただきました。鈴木清順監督や主演の宍戸錠さんをはじめ、本作に関わった偉大な先輩たちに改めて敬意を表したいと思います」
「殺しの烙印」は、宍戸さんがクールな殺し屋を演じるスタイリッシュなハードボイルド作品。プロの殺し屋ランキングNo.3の花田五郎(宍戸)は、組織の幹部を護送する途中でNo.2とNo.4の殺し屋たちに襲撃されながらも任務を終え、殺し屋No.2へランクを上げる。さらに上を目指す花田だったが、次の仕事で失敗すると、組織は美女中条美沙子(真理アンヌ)を差し向ける。花田は美沙子とひかれ合う一方、殺し屋No.1の大類進(南原宏治)とトップの座をかけて対決する。
5日のワールドプレミア上映では、映画の代表的なシーンでとして知られる、宍戸さんが炊飯器から炊きたての米の匂いをかぐ名場面など、幾つのもシーンで笑いが起こり、上映後は拍手が巻き起こるなど反響は上々。鈴木監督は、クエンティン・タランティーノ、ジム・ジャームッシュ、デイミアン・チャゼル、ニコラス・ウィンディング・レフン、ポン・ジュノ、パク・チャヌク、ウォン・カーウァイら、世界各国の著名な監督からもリスペクトされており、17年2月に亡くなってから5年たった今も知名度は高い。「殺しの烙印」も現在、イタリアや米国など数十カ国で配給されているが、ベネチア映画祭での上映を機に、ヨーロッパ各国の配給会社から、さらなる問い合わせが相次いでいるという。
11月3~同10日には東京・シネスイッチ銀座で、過去10年間に世界50カ国以上で上映されてきた、日本最古の映画会社である日活の名作を、デジタル復元版で上映する特集上映「Nikkatsu World Selection」が開催され、「殺しの烙印」も上映される。同作以外の上映作品は以下の通り。
◆「丹下左膳余話 百万両の壺」(山中貞雄監督、35年)東京国際映画祭日本映画クラシックス部門選出
◆「河内山宗俊」(山中貞雄監督、36年)東京国際映画祭日本映画クラシックス部門選出
◆「月は上りぬ」(田中絹代監督、54年)カンヌ国際映画祭クラシック部門、東京国際映画祭日本映画クラシックス部門選出
◆「乳房よ永遠なれ」(田中絹代監督、55年)東京国際映画祭日本映画クラシックス部門選出
◆「幕末太陽傳」(川島雄三監督、57年)ベルリン映画祭フォーラム部門選出
◆「神々の深き欲望」(今村昌平監督、68年)
◆「(秘)色情めす市場(まるひしきじょうめすいちば)」(田中登監督、74年)ベネチア映画祭クラシック部門選出
ベネチア映画祭受賞を受けての凱旋(がいせん)上映となる「殺しの烙印」含め、注目だ。