ベネチアレッドカーペット歩いたろう俳優砂田アトム「ろう者が活躍できるようになれば」

映画「LOVE LIFE」公開記念舞台あいさつで、豊かな表情を交えた手話で客席に語りかける砂田アトム(撮影・村上幸将)

ろう者の俳優・手話表現モデルの砂田アトム(45)が11日、東京・TOHOシネマズシャンテで行われた映画「LOVE LIFE」(深田晃司監督)公開記念舞台あいさつに登壇。日本のろう俳優として世界3大映画祭の1つ、ベネチア映画祭のレッドカーペットを歩いた思いを語った。

「LOVE LIFE」は、同映画祭で最高賞の金獅子賞を争うコンペティション部門に出品も、10日(日本時間11日)の授賞式では主要賞の受賞を逃した。それでも、砂田は5日のワールドプレミア上映に出席し、レッドカーペットを歩いた興奮と感動、喜びを熱っぽく全身で表現した。「小さい時からテレビで見てきて、レッドカーペットは知っていました。でも、自分はろう者…ああいうところを歩くのは、無理だろうという思い込みもあった。まさか自分が、という思いだった。ろう者でも、レッドカーペットを歩くことが出来るんだと、世界中のろう者に伝えたい」と力を込めた。

砂田は劇中で、ベネチア映画祭にともに参加した主演の木村文乃(34)演じる妙子の元夫で息子・敬太の父親でもあるパクを演じた。映画について「お涙ちょうだいではない。ろう者の生活と文化が、ありのまま描かれている。ろう者の、ありのままを見ていただけたら、うれしい。世界の端から端まで広がって欲しい」と訴えた。

「LOVE LIFE」は、矢野顕子が1991年(平3)の米ニューヨーク移住後に発表した初アルバム「LOVE LIFE」に収められた同名楽曲をモチーフに、深田晃司監督(42)が独自の解釈で「愛」と「人生」に向き合う夫婦の物語を、構想期間18年の時を経て完成させた。

妙子は、再婚した夫・二郎(永山絢斗)と、その両親と小さな問題を抱えつつも、愛する息子・敬太と幸せな日々を送っていた。そんな1年が経とうとした、ある日、悲しい出来事が襲う。妙子の前に、失踪した前の夫で敬太の父親でもあるパクが現れる。再会を機に、妙子はろう者のパクの身の周りの世話をするようになる。一方で、二郎も以前付き合っていた山崎(山崎紘菜)と会っていた。悲しみの先で、妙子はどんな「愛」を選択するのか、どんな「人生」を選択するのか、という物語。

砂田は、健聴者にも自らの思いが伝わるようにという思いからか、舞台あいさつの中で終始、手話に大きな身ぶり手ぶりを加えた動きで、情感を込めて思いを語り続けた。最後に「ろう者の俳優で、映画に出たいと思っている人が、たくさんいる中で自分が選ばれ、しかもベネチアでレッドカーペットを歩けた。自分の力だけで出来たわけではありません。たくさんの、ろう者の力と思いを受けて自分があの場に立てたこと、本当にうれしく思います」と熱く語った。

その上で「今までのドラマ、映画、いろいろなものと『LOVE LIFE』は全く違う。ろう文化、手話が描かれている。アトムが出た、自分でも出来るはずだという思いを、みんなに持っていただいて映画、テレビ、舞台の世界で、ろう者が活躍できるようになれば。変化を期待しています。みんな、頑張りましょう。」と呼びかけた。