橋本愛、映画界のハラスメント、労働環境、世代間の溝に言及「お互いの声を聞き合う姿勢が大事」

第35回東京国際映画祭ラインナップ発表記者会見に登壇した橋本愛(撮影・村上幸将)

第35回東京国際映画祭(10月24日~11月2日、TOHOシネマズ日比谷など)ラインアップ発表記者会見が21日、都内で行われ、橋本愛(26)が2年連続でアンバサダーに就任した。橋本は、日本の映画界にハラスメントや労働環境問題、世代間の溝などの“壁”があると指摘。アンバサダーとして国際映画祭の場を「改めて見つめ直す、きっかけ」にしたいと提言した。

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同じ壇上で「映画に助けてもらった」と感謝してから1年。橋本は「今年は、もうちょっと自分に何か出来ることはないかと考えた」と口にした上で「日本の映画界に立ちはだかる壁について、自分の気持ちをお話しできたら。ハラスメント、労働環境の問題」と切り出した。その上で「一番、感じるのは世代間の溝。上の世代が必死に積み重ねたものを守り抜いていく姿勢は、とても素晴らしい一方、下の世代の声も聞こうと。お互いの声を聞き合う姿勢が、これからの物作りにおいて大事」と訴えた。

橋本は、個別具体の事案こそ示さなかったが、昨年は複数の映画でパワハラ問題が浮上。今年に入ると、4月に一部監督が女優に性行為を強要した問題が報じられ、騒動に発展するなど、日本の映画界には幾つもの問題が噴出してきた。

昨年はアンバサダーとして映画の楽しさを発信した。「映画祭に携わる人間として、どういったことを発信していけば」と模索した1年を経て「世界に開かれる東京国際映画祭で、世界を見渡して日本のすてきなところ、改善した方がいいところを見つめ直すきっかけになれば」と、日本映画界改善のために発信していく考えを示した。

そして、その先にある人権問題にも踏み込んだ。「日本全体に同性婚が認められなかったり、LGBTQへの理解が浅かったり、世界の環境問題に対する意識が薄い」と指摘。「伝統を守っていく姿勢は美しい一方で、こぼれ落ちてしまう人たちに寄り添い、それでも生きていて欲しいという気持ちを込め、作っていくのが映画であり、芸術」。映画の力を信じるからこそ、橋本は語る。【村上幸将】

○…安藤裕康チェアマン(77)は会見で、世界の映画界に貢献した映画人、映画界の未来を託したい映画人に贈る「黒澤明賞」を、14年ぶりに復活させる意義を強調した。「黒澤明は国際的に最も著名な日本人監督。日本と海外の映画交流のシンボルとなって、映画祭を盛り上げていただきたいという私どもの願い」。また、オープニングを東京宝塚劇場で初開催し、コロナ禍以降、見送ってきたレッドカーペットを3年ぶりに開催することを「重要な点」と位置付けた。