香川照之主演映画「宮松と山下」監督「顔全体が可動域」太陽で目を焼く香川の超絶演技を絶賛

映画「宮松と山下」ティーチイン付き上映会に登壇した、左から平瀬謙太朗、関友太郎、佐藤雅彦の3監督(撮影・村上幸将)

香川照之(56)の主演映画「宮松と山下」(関友太郎、平瀬謙太朗、佐藤雅彦監督、11月18日公開)の、日本初の上映会が26日、都内のユーロライブで開かれた。製作した監督集団「5月」の、関友太郎(35)平瀬謙太朗(35)佐藤雅彦教授(68)3監督がティーチインを行い、観客の質問に答えた。

「宮松と山下」は、ロープウエーの仕事も掛け持ちしている、端役専門のエキストラ俳優・宮松の芝居と日常、そして宮松自身が知らない“もう1人の自分”を描いた物語。香川は劇中で主人公の宮松を演じた。関監督は「とにかく、顔の演技が想像していたより全然、豊かで、すごくて。顔全体が、もう可動域。どこまででも細かく、自在に動かせることが見ていて分かった」と、香川の顔の演技を絶賛。「セリフが少ない台本だったんですけど、編集で顔、表情を長く見せるカットが増えたのも演技力、すごい表情が出ているから。芝居は感情でやるものだから、技術でやっているとか、技術力と言われるとピンとこなかった。香川さんを見ていると、すごい技術によって、感情を表出しているのが初めて分かった。現場の一番の体験」と評した。

佐藤監督は、香川が振り返るシーンで「何で、こんなに笑顔で振り向けるんだろう」と思い、「あの笑顔は、どうやったら出来るんですか?」と質問したものの、香川が答えなかったと振り返った。「(笑うために)何かを思い出すんでしょう?」と問いかけると、香川は「違います」と返し、それ以上、明かさなかったという。

また、暑くて日差しがカンカン照りの中、香川が撮影の直前に、まぶしい中、太陽をずっと見ていたと振り返った。香川を捕まえて「ギラつく太陽を見てましたね?」と尋ねたところ「気付きますか…あれ、目を焼くんです」と答えたという。同監督は「(太陽がまぶしい中でも)『はい、スタート』という時、普通の表情が出来る。技術があるんだなと思った。豊かな表情を作る技術力がある」とたたえた。

「5月」は「だんご3兄弟」の作詞、プロデュースなどで知られる、東京芸大大学院映像研究科教授の佐藤監督が、研究室の5期生4人と「Cプロジェクト」と名付け、5人でカンヌ映画祭を目指して3年、製作を勧めた14年の短編「八芳園」が、同映画祭で短編コンペティション部門にノミネート。18年「どちらを」も同部門にノミネートされ、その後「3監督でやろう」と、3人で作った会社だ。

佐藤監督は「2、3日に1回、アイデアを出し合うだけ。100~200案あって、1000の中で1つ、見つかるかとやっている」と会社でやっていることを説明。その上で「宮松と山下」の企画について「5年くらい前のアイデア会議で関がポロッと言った」と振り返った。

関監督は「大学院を卒業した後、NHKに就職してドラマ部で仕事をしていた。最初の仕事が、京都で撮影する時代劇で。入りたての助監督としてエキストラの方と行動をともににした」と着想の経緯を説明。その上で「エキストラの方は朝、江戸の町人役として撮影したら、侍として外に出ていく。その人の1日は変わったことをやっているなと。斬り合いのシーンで倒れても、起きて、別の侍としてまた切られる。初めてだったので、こういうふうにやっているんだと思って」と続けた。

そして「そこだけ切り取って、もし映像として見せたら、すごい独特で面白いんじゃないかと思って、言ったのが最初」と続けた。その上で「映画にするなら、エキストラのシーンと地の生活の部分を全く同じトーンでつないでいくと、どっちが演技でどっちが地…どういう状況か分からない、映像のサスペンスが生まれると思った」と説明した。

キャスティングに深く関わった平瀬監督は「(完成まで)5年、時間がかかったのは、主演が決まらなかったから」と説明。その上で「私たちの中で(主人公は)エキストラとして存在感のなさが大事なんですが、ただ映画としては主人公としてグイグイ、引っ張る存在感の強さが大切。矛盾する二面性を持ち合わせる役を誰が出来るか、分からず一歩が踏み出せなかった」と、なかなか候補者を見いださなかったと明かした。

その上で「香川さんのお名前が出た瞬間、3人とも香川さんなら出来ると分かり、企画が動きだした」とアイデア会議で3監督が一致したと説明。「普通は、香川さんに当たってダメなら2番目となるけれど、この映画は香川さんがダメだったら引っ込めよう、違う企画に行っていたんじゃないか。香川さんは幸運にも受けてくださった。この人しかいない、というキャスティングで決まった」と、香川が主演でなければ、成立し得なかった企画だったことを強調した。

「宮松と山下」は、9月にスペインのサンセバスチャン映画祭で上映後、より一層、作品を突き詰めたいと再編集を行い、上映時間が85分から87分に延びたという。