恐るべき“人たらしアナウンサー”安住アナ、今はテレビ1台「ユーモアが一番、人間の本質が出る」

「THE TIME,」終了後にインタビューに応じたTBS安住紳一郎アナウンサー=2023年2月

なぜ人々はこれほど彼に魅了されるのか。TBS安住紳一郎アナウンサー(49)。アナウンス技術や進行、アドリブ、安定感、毒舌、ユーモア、聞く力…どの能力をとっても一級品で、日本アナウンサー史に語り継がれる希代の司会者の評価を受ける。若くして名を上げたが、フリーにならず、局アナとして第一線を走り続けている。5日付紙面掲載の「日曜日のヒーロー」枠に入りきらなかったエピソードを紹介する。

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総合司会を務める「THE TIME,」(月~金曜午前5時20分)終了から1時間40分後、安住アナは「すみません本当に遅くなりまして~」と入ってきた。手にカレーは持っていない。20年前、多忙を極めた安住アナは午後5時にカレーを片手に現れ、「食べながらでもいいですか? 今日、1食目なんです」と申し訳なさそうに食べながら取材に応じたそうだ。

当時の紙面を渡すと「懐かしい。我慢できるだろってね。業界自体がそういうところありましたね」と苦笑いしたが、当時よりはスケジュールに余裕のある日々を過ごしていることがうかがい知れる。「20年前か…。そう考えるとすごいですね。なんとなく5年くらいの(感覚)。あーちょっと見るだけで胸が張り裂けそう。頑張っていらっしゃる。ギリギリだったんだろうね」とひとごとのように眺めた。

当時の紙面には、部屋にテレビが11台あり、番組チェックを欠かさないと記されている。今のテレビの台数を聞くと「1台しかないです。全録もしていません。しぼっていますね」。ずいぶんコンパクトになったようだ。5秒ほど紙面に目を通し、「(当時書いた記者に)よろしく言っておいてください。失礼なことを…。少しお金渡しますので、と」と笑った。

こちらが姿勢を整えて、質問を始めようとすると、「どうぞどうぞ何でも聞いてください。でもいろいろ佐藤さんお調べなっているから、私に聞いた体で、全部書いてください。ははは。信頼しているので」と緊張をほぐしてくれた。

個人的に、どうしても聞きたかったのが安住アナの「ユーモア哲学」だった。安住アナは、どんな大物相手でもウイットに富んだ返し、ユーモアで場を和ませる術を持っている気がしていた。

「なんかユーモアが一番、人間の本質が出るなっていうのは何か、小さい時から思っていて。テレビ好きだったっていうのもあるんですけど。何かそうですね。トラブルがあってもユーモアで、あとは何かピンチのときも何かユーモアある一言でとか、なんかそういうのはありますね」

シンプルだが、やはりユーモアを大切にしていることが伝わる答えだった。さらにこう続けた。

「今日、県立福岡高校の中原さんっていう(番組コーナー)『中高生ニュース』に出てくる女の子が、『将来アナウンサーになりたい』っていって、今回2回目(の出演)だったのかな。ちょっと俺の仕事をなんか一生懸命見てくれたみたいで『ユーモアのある真面目なアナウンサーになりたい』って書いてあって。これは高校生に伝わってよかったと思って、『ユーモア』っていう一言を(自分が)言わないのに出してくれて、すごくうれしいなって個人的には思いました。ちょっとなんか最近はアナウンサーを目指す子たちも少なくなっているので、本当にユーモアがあって真面目で理想の高いというのが、若者たちにメッセージ伝わるといいなというふうに思っているんです」

そう言い終わると、柔らかい笑みを浮かべてコーヒーをすすった。安住アナはこの日、我々の取材のために、別の打ち合わせを中断して来てくれていた。取材に夢中になり、気がつくと予定の時間を20分オーバーしていた。謝ると「楽しくなっちゃってこんなにチヤホヤされたらずっとしゃべりたくなっちゃう。戻りたくないかも知れない。すみません本当にありがとうございます。もう好きに書いてください」と言って部屋を後にした。リップサービスだとわかっていても、自然と気分は良くなる。恐るべき“人たらしアナウンサー”だった。【佐藤成】