吉永小百合が東北ユースオーケストラで詩を朗読、闘病で欠席の坂本龍一のOKに「うれしくて」

東北ユースオーケストラ演奏会2023東京公演で観客に語りかける吉永小百合

吉永小百合(78)が26日、東京オペラシティコンサートホールで行われた、東北ユースオーケストラ演奏会の東京公演で今年も朗読を行った。

東北ユースオーケストラは、音楽家・坂本龍一(71)が、東日本大震災復興支援のために13年に立ち上げ、16年に第1回を開催後、継続して開催。21年1月に直腸がんの治療を公表した坂本は、闘病中のため出演しなかったが、吉永は坂本の思いも背負って舞台に立った。

吉永は朗読の前に、坂本の近況を明かした。今回の朗読にあたり詩を8編、選定し、坂本にメールで送ったという。吉永は「坂本龍一さんからオファーをいただいて、こういう詩にして欲しい、というのもあるんです」と語った。そして「とても大きな出会いがあって(宮城県)気仙沼の少年の詩と、外国と素晴らしい作家のを8つ、選びました。どうでしょう? とメールをお送りしたら、合格ですと…」と、坂本から朗読する8編の詩にOKが出たと明かした。吉永は「うれしくて、うれしくて。『この曲でいきましょう』と、メールをいただきました」と、坂本が朗読の際に演奏する楽曲も選定したと語った。

東北ユースオーケストラは、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の小学4年から大学4年までを集めた楽団で、13年に宮城県松島町で開かれた音楽祭で、坂本と音楽家の大友良英氏とともに共演したことをきっかけに企画された。坂本は14年に社団法人化し、音楽監督に就任したが、同年7月に中咽頭がんを公表し活動を休止。翌15年に団員を公募し、集まった105人が練習を続け、16年3月に都内で第1回演奏会を開いた。坂本の復帰作となった吉永の主演映画「母と暮せば」(山田洋次監督)の劇中曲などを演奏。吉永も登壇し、被災した福島市の詩人和合亮一さんらの詩を読んだ。

20年には、自然災害で被災した10道県から公募した合唱団員とともに、ベートーベンの交響曲第9番を演奏予定だった。それが、新型コロナウイルスの感染が拡大したため、東京と福島で予定していた3公演を中止した。

翌21年1月には、中咽頭がんは寛解していた坂本が、直腸がんの治療を公表し、手術を受けた。坂本は22年6月発売の文芸誌「新潮」7月号で、がんがステージ4で直腸の原発巣と数カ所の転移巣を摘出する20時間に及ぶ外科手術を受けたこと、21年10、12月には両肺に転移した、がんの摘出手術など1年間に大小6つの手術を受けたことを明かした。

そして22年3月に3年ぶりの演奏会開催に向け動き出したが、同16日深夜に東北地方で地震が発生し、会場の安全確認が出来るまで会場の使用が不可能となり、宮城&福島公演を中止。坂本も体調不良のため、同22日の岩手公演出演をキャンセルした。その中、同26日に東京・サントリーホールで東京公演を開催し、坂本も出演した。

東京公演では、コロナ禍で中止された20年公演に向けて書き下ろした新曲「いま時間が傾いて」を演奏。坂本は「鎮魂の音楽ですけども、聴くと3・11とともに、どうしてもウクライナのことを思い浮かべちゃう。もちろん、自然災害と戦争とは違うものだけれど、鎮魂という意味では共通しているところがある」と、ロシアのウクライナ侵攻について言及。「失ったものに対する懐かしさ、残念な気持ち、郷愁、鎮魂は音楽を作る人間の心の根っこにある気が、ずっとしている」と語っていた。

坂本は、22年12月11日正午(日本時間)に「この形式での演奏を見ていただくのは、これが最後になるかもしれない」と、同9月中旬に無観客で事前収録したピアノ・ソロ・コンサート「Ryuichi Sakamoto:Playing the Piano 2022」を、世界約30の国と地域に配信した。

加えて、是枝裕和監督(60)の邦画3作ぶりとなる新作「怪物」(6月2日公開)の音楽も担当したが「今回残念ながらスコア全体をお引き受けする体力はなかった」ため、書き下ろしはピアノ曲2曲にとどまった。71歳の誕生日を迎えた1月17日にリリースした、約6年ぶりのオリジナルアルバム「12(トゥエルブ)」の収録曲や過去の楽曲も使い、映画全体の音楽を構成した。5日深夜には、2003年(平15)から20年にわたってナビゲーターを務めてきたJ-WAVE(東京)の番組「RADIO SAKAMOTO」が最終回を迎えた。

23年の公演は、吉永が宮城、福島、東京公演、のん(29)が岩手公演に出演。団員は岩手、宮城、福島の被災3県の、中学1年生から大学院修士2年までの86人で構成され、演奏した。