渡辺えり「初心に返って全部勉強」新派初登場「三婆」で水谷八重子、波乃久里子と毒舌バトル

新派135年記念6月喜劇公演「三婆」で共演する、左から波乃久里子、渡辺えり、水谷八重子(撮影・小沢裕)

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劇団新派の水谷八重子(84)波乃久里子(77)と、新派初登場の渡辺えり(68)が、名作喜劇「三婆(さんばば)」(6月3~25日、東京・三越劇場)に出演する。

有吉佐和子さん原作で、妻、愛人、妹の女3人の毒舌バトルを描いた。水谷と波乃が繰り返し出演し練り上げてきた作品に渡辺が加わり、新鮮な組み合わせを見せる。新派135年の記念公演。【小林千穂】

■毒舌バトル描く

にぎやかな取材となった。おしゃべりの雰囲気はこのまま舞台になりそうだった。渡辺の新派初参加は、水谷、波乃にとっても念願だった。

水谷 やっと実現しましたね。出ることを運命づけられていた人だと思いますよ。そのまんまでやってください。

波乃 えりさんのお芝居は元気で大好きです。ずっと前にお誘いしたんですが、なかなか実現しなかったんです。

渡辺 おふたりの芝居にはうそがないと思うんです。10年ほど前、「三婆」を初めて見た時、本当に女性3人の生きざまが見えて感動して泣きました。リアリティーのある型や、後ろ姿なんかでもきれいなので、見せ方みたいなものも学ばせていただきたいですね。

■3人いろんな縁

3人はいろんな縁でつながっている。

水谷 うちからすぐのライブハウスで、えりさんが2回ぐらいライブをされているんです。超満員で2回ともあきらめたんですが、絶対この方とご一緒するなという予感がしていたんです。

渡辺 全然知らなかったです! 分かってたら絶対に入っていただいたのに!

波乃 えりさんはうちの弟(故18代目中村勘三郎さん)の親友でしたからね。うちは家族だけでお正月を過ごすんですが、ある時、弟が1人だけ他人が来るけどいいかな、って。それがえりさんだったの。ずーーっと泊まってたわよね。物を書くから部屋を貸したりね。きょうだいみたいに育ってきたんです。

渡辺 なんであんなことができたのか(笑い)。

波乃 おねえちゃま(=水谷)と私はきょうだい以上かも。だから今度は3人ともがきょうだいです。

■60年以上舞台共演

60年以上舞台をともにしてきた水谷と波乃のあうんの呼吸は普段からだ。

水谷 愛し、愛される男女よりも深いものがあるような気がします。お芝居でも「久里ちゃんこうしてくれればいいな」って、言うほどでもなくても思うことがあったりするでしょ。それが突然、何にも言わないのにその通りになってくる。お互いにそうなんです。何とも言えない熱いものがずーんとくるんですよ。

波乃 おねえちゃまのお父さま(14代目守田勘弥さん)と私の父(17代目勘三郎さん)が大親友というのもあるのかも。お互い言い合うけど、他人がおねえちゃまのことを悪く言ったりすると本当に腹が立つの。

2人のやりとりに渡辺が自然に加わっている。

渡辺 がっちり頼りになる2人です。何をやっても受け入れてくれそうです。初心に返って、全部勉強するつもりで挑みます。

水谷 どうぞ、そのまんまでお願いしますね(笑い)。

<新派とは>

明治時代、旧派(歌舞伎)に対する演劇として生まれた。自由民権思想を芝居で訴えた壮士芝居が発展したとされ、1888年(明21)12月3日に大阪新町座で行われた壮士芝居が新派の祖。尾崎紅葉、泉鏡花、三島由紀夫ら多くの作家が、新派の名作を生み出し、初代喜多村緑郎、河合武雄、花柳章太郎、初代水谷八重子といった名優を輩出している。水谷は「明治、大正、昭和の細やかな生活態度や人との触れ合い、日本人の生きざまを色濃く芝居の中で演じています。残したい日本人のふるさとです」と魅力を語る。今年は新派135年の記念の年で、今回で三越劇場での公演も復活した。

▼三婆 時代設定は1963年(昭38)。ある実業家が愛人・駒代(水谷八重子)の家で急死する。大きな事業を構えていたはずの男だったが、多額の借金が残された。妻松子(波乃久里子)は財産を整理して、どうにか一軒家が残った。そこへ義妹タキ(渡辺えり)がやってくる。さらに、料理屋を開くまで部屋を貸してほしいと駒代も転がり込む。3人の奇妙な同居生活が始まる-。

◆波乃久里子(なみの・くりこ)1945年(昭20)12月1日、神奈川県生まれ。父は歌舞伎俳優17代目中村勘三郎。50年「吉例初春興行大歌舞伎」で初舞台。4~15歳まで歌舞伎の舞台に多数出演。61年新派初参加、翌年入団。蜷川幸雄さん演出「エレクトラ」など外部舞台、ドラマ、映画でも活躍。90年菊田一夫演劇賞、11年紫綬褒章。

◆渡辺(わたなべ)えり 1955年(昭30)1月5日、山形県生まれ。78年「劇団2○○(にじゅうまる)」(その後3○○に改名)結成、20年間主宰。作、演出、出演の3役を担い、83年「ゲゲゲのげ~逢魔が時に揺れるブランコ~」で岸田國士戯曲賞、87年「瞼の女~まだ見ぬ海からの手紙~」で紀伊國屋演劇賞個人賞。映像、エッセー、歌手としても活躍。

◆水谷八重子(みずたに・やえこ)1939年(昭14)4月16日、東京都生まれ。父は歌舞伎俳優14代目守田勘弥、母は新派の女優初代水谷八重子。55年、水谷良重の名前で初舞台。舞台、ドラマ、映画などで幅広く活躍。歌手としてNHK紅白歌合戦出演経験も。95年、2代目水谷八重子を襲名。01年紫綬褒章、2009年旭日小綬章。長年にわたり新派を率いている。