市川猿之助、一家心中図った疑い浮上「家族会議をした」事情聴取に説明 自宅には複数の書き置き

市川猿之助(2022年6月撮影)

歌舞伎俳優市川猿之助(47)が自宅で倒れ救急搬送されてから一夜明けた19日、亡くなった歌舞伎俳優の父市川段四郎さん(76)と母喜熨斗(きのし)延子さん(75)の司法解剖が行われ、向精神薬中毒で亡くなった疑いがあることが分かった。猿之助は都内の病院を退院。一家心中を図った疑いも浮上し、事情聴取に「家族会議をした」と説明していたことも分かった。また、搬送4日前の生配信トークでは意味深な言葉を発していた。

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警視庁は、猿之助の両親が向精神薬中毒で亡くなった疑いがあると明らかにした。18日の検視では死因は不詳だったが、19日に司法解剖を行った。両親に外傷や注射痕はみられず、現場には若干の吐しゃ物があったという。口から睡眠導入剤のようなものを大量に摂取したとみているが、血液を調べるなどして、どのような向精神薬を使用したのか、薬物の特定を急ぐ。

2人は発見された18日か前日に死亡したとみられる。母は現場で死亡が確認され、すでに死後硬直が始まっていた。父は搬送先の病院で死亡が確認された。

猿之助は、半地下の自室で意識がもうろうとした状態で見つかり救急搬送された。18日夜の時点では意識障害が残っており、事情聴取に応じられる状態ではなかったが、命に別条はないとして19日、搬送された都内の病院を退院。警察が猿之助の状況を確認できる、別の医療機関に移ったとみられる。捜査関係者によると一家心中を図った疑いがある。警視庁の事情聴取に対し、両親と「家族会議をした」などと説明したという。警視庁はさらに詳しい経緯を調べる。

19日は、午前9時ごろから午後5時ごろまで、自宅の現場検証と家宅捜索が行われた。手袋に長靴姿の捜査員らが集まり、器材を詰めた箱や脚立を手に次々と現場に入った。関連する薬物や容器は見つからず、スマートフォンを複数台押収した。土足痕など、一家以外の第三者が関与した形跡はなかったという。

自宅には猿之助が書いたとみられる遺書のような書き置きが複数あったことも分かった。1つはスケッチ用キャンバスで、親しい知人の名が書かれたメッセージだとの情報がある。近くで別の書き置きも見つかっており、捜査関係者によると、財産は親族以外に相続させる旨が書かれていたという。

猿之助は両親と3人暮らしとみられるが、普段は別々に生活していたとの情報もある。段四郎さんはここ数年は体調不良もあり、家から出ることも少なく、舞台から遠ざかっていた。猿之助は警視庁の特殊詐欺防止啓発の広報大使に選ばれた時、親を思う気持ちの大切さを語っていた。

猿之助をめぐっては、18日発売の週刊誌「女性セブン」が性加害やハラスメント疑惑を報じていた。

◆向精神薬 睡眠薬、抗うつ薬、精神安定剤、抗不安薬などの薬剤の総称。パニック障害や睡眠障害などの治療に用いられる。覚せい剤・麻薬・大麻などと同様に中枢神経に作用するもので、依存症になる可能性もあるなど、乱用の危険性と治療への有用性により3種類に分類されている。服用には医師の処方箋が必要で、他人に譲渡したり、譲り渡す目的で所持することは禁止されている。

◆自殺関与罪と殺人罪 刑法202条には「人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する」とある。亡くなった人に自殺の意思があり、それを手助けした場合には、この自殺関与罪に問われる可能性がある。また、亡くなった人に自殺の意思がなかった場合に、死に至らしめるようなことをした場合は殺人罪となり、刑法199条により「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する」と量刑が重くなる。

 

◆主な相談窓口 ・いのちの電話 ナビダイヤル=0570・783・556(午前10時~午後10時) フリーダイヤル=0120・783・556(午後4時~同9時。毎月10日は午前8時~11日午前8時) ・日本いのちの電話連盟 https://www.inochinodenwa.org/