北野武監督6年ぶり新作「首」11・23公開決定、最速上映カンヌ映画祭では1068席が即完売

公開日が11月23日に決まった、北野武監督「首」のティザービジュアル(C)2023KADOKAWA (C)T.N GON Co.,Ltd.

北野武監督(76)6年ぶりの新作映画「首」の公開日が11月23日に決まった。配給のKADOKAWAが24日、発表した。また、同社が東宝と共同配給することも、併せて発表された。

「首」は23日(日本時間24日)フランスで開催中のカンヌ映画祭でプレミア上映された。日本実写作品として初の選出となる「カンヌ・プレミア」部門での上映は、世界最速上映となるワールドプレミアだったが、同映画祭で2番目に大きい劇場「ドビュッシー」は、1068席のチケットが即完売した。

北野監督のカンヌ映画祭への参加は、10年に「アウトレイジ」が最高賞パルムドールを争うコンペティション部門に出品されて以来13年ぶり。フランスにも圧倒的な数のファンを有する、日本人監督では屈指の人気を誇る北野監督だけに、今回の参加への期待は大きかった。レッドカーペットを歩いた北野監督は「キタノー!」などと、熱狂的に叫ぶファンの歓声に手を振って応えた。そして同映画祭のティエリー・フレモー代表と熱い抱擁を交わし、カンヌの地での再会を喜び合った。

ビートたけしとして羽柴秀吉を演じた北野監督を筆頭に、明智光秀役の西島秀俊(52)織田信長役の加瀬亮(48)百姓の難波茂助役の中村獅童(50)秀吉の軍師・黒田官兵衛役の浅野忠信(49)秀吉の弟・秀長役の大森南朋(51)が劇場内に姿を現すと、超満員となった客席は総立ち。割れんばかりの拍手で迎え入れた。

上映時間は約141分と決して短くはなかったが、エンドロールに北野監督の名前が映し出されるやいなや、惜しみない拍手と歓声が巻き起こった。上映が終了すると、劇場を埋め尽くした観客による、約5分にも及ぶスタンディングオベーションが贈られた。北野監督は、絶え間なく続く拍手と「ブラボー!」の歓声で異様な熱気に包まれた劇場で、上階の観客にまで手を振って応えた。そして「今度はもっと良い作品作ってまた来ます」と言い、照れ笑いを浮かべた。

観賞した観客からは「とても面白かった。笑えました。こういう北野武のユーモアはとても好きです。本当に映画、最高でした」、「サンキューソーマッチ、北野武!」といった熱いコメントが寄せられた。

「首」は北野監督にとって、カンヌ映画祭ある視点部門に出品した1993年(平5)「ソナチネ」と同時期に構想し30年、温めてきた企画で「座頭市」以来20年ぶりに手がけた時代劇。映画化に先立ち、19年12月には自身初の歴史長編小説として原作を書き下ろし出版した。物語は、織田信長が跡目をエサに謀反を起こした家臣の捜索を命じたことをきっかけに明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康ら家臣の欲望と策略が入り乱れた末、本能寺の変まで向かう流れを独自の解釈で描いた。

「首」が出品された「カンヌ・プレミア」部門は、カンヌ映画祭に21年に設立された部門。コンペティション部門では、まかないきれない良作、具体的には、より世界の歴史・民族・風土・生活習慣・信仰など現代社会を取り巻くテーマを描くワールドシネマにフォーカスした作品が選ばれる。

北野監督は、前日22日(同23日)に現地で開いた取材会で「衆道、男色が、普通の庶民の間にまで、はびこっていた。それを戦国の時代劇で、あまり描いていない。そういう人たちの慣習を平気で描くようにして、そういう人たちの中での人間関係が本能寺の変につながっている」と説明。世界最速上映前ながら、主従関係のある武士同士でなされた衆道や一般社会でも慣習としてあった男色を映画の中で描いたと、内容に踏み込んで語った。その上で「裏では語られるけど、表面上、あまり描かないことを意識して映画化した」と強調していた。