“大衆演劇のドン”沢竜二出演、最後の弟子・三天屋多嘉雄が監督・脚本務める映画の公開が決定

映画「邯鄲の夢 三重芝居と四人の役者」に出演した沢竜二(C)明治産業・グッドラックスリー

“大衆演劇のドン”沢竜二(87)が出演し、沢の最後の弟子・三天屋多嘉雄(みそらや・たかお=42)が監督・脚本を務めた映画「邯鄲の夢 三重芝居と四人の役者」が、7月28日から東京・TOHOシネマズ日本橋、大阪ステーションシティシネマほかで全国順次公開が決定した。

「邯鄲の夢 三重芝居と四人の役者」は、新国劇の創始者の澤田正二郎から「真正女澤正」と名乗ることを許された、坂東政之助こと沢の母・酒井マサ子さんが率いた「女・沢正一座」の伝統芸能・「真正女澤正劇」をベースに、無名の伝統芸能の文化継承の難しさを描いたオリジナルのフィクション作品。真正女澤正オリジナルの表現方法・演出である、物語が三重に交差する「三重芝居」を用い、過去と現在、夢と現実が交差する物語を作り上げた。ロケは熊本県の重要文化財八千代座で行われ、三天屋は直系一座の花形・万家徳治朗(よろずやとくじろう)を演じ主演を務めた。

22年には、カンヌワールドフィルムフェスティバルのニューウェーブフィルムメーカー部門とアジア部門、ロンドン映画祭のアジア部門、ベルリンフィルムアワードのドラマ部門で、それぞれ最優秀賞を受賞。ブエノスアイレス映画祭、ウガンダ映画祭、シリコンバレー映画祭、国際マルチカルチャー映画祭、福岡コ・クリエイティブ映画祭と8つの国内外の映画祭に出品された。

沢は、沢田座長役で出演し、舞台監修を務めた。「受賞おめでとう。『かわいい子には旅させろ』と言うことわざがある。他人の所で苦労させれば、立派な大人に成るからだろうが、私の弟子に成った頃の多嘉雄は体は弱く彼の親も、私も大変だったが、テレビを二、三本撮り映画の台本を仕上げ、監督をやりながら作り上げた」と、三天屋をたたえた。また、三天屋が東工大大学院社会理工学価値システムを修了し、文化人類学学術修士を取得したことを踏まえ「そして今は大学院まで行き『邯鄲の夢 三重芝居と四人の役者』で、いくつもの賞をいただいた。師匠思いの沢一門の出世頭の大谷翔平こと三天屋多嘉雄である」と賛辞を繰り返した。

三天屋は「真正女澤正とは、沢竜二先生のお母様の名で、大正の初期、新国劇の澤田正二郎から命名されたことに由来します。そして、この真正女澤正の神髄は人情劇であり、歴史の影で脈々と受け継がれております。私は沢竜二の弟子として、この真正女澤正の火を消すわけにはいきません。その一心で、師匠と弟子の情というものを、この映画で描きました」と映画を製作した経緯を説明。「思い返せば、沢竜二先生に弟子入りしたのは、もう20年近く前の事。入門当初は何もできない若造でしたが、師匠は血のつながりもない弟子に、長い年月深い情をかけてくださりました。今、いろんな事ができるようになり、海外で数々の賞を頂けたのは、沢先生の弟子であったからに他なりません。世知辛い世の中で、女澤正の人情劇が世界各国で伝わり、とてもうれしく存じます」と、沢に感謝した。

後継者の座を狙う座長の息子・沢田冴之介を須賀貴匡(45)冴之介に強いライバル心を燃やす三津葉銀次を松林慎司(47)が演じた。2人もコメントを発表した。

須賀貴匡 「邯鄲の夢 三重芝居と四人の役者」2021年コロナ禍での撮影期間が懐かしく思う日々。昨今の日本映画にはなかなか出来ないスタイルのこの作品。人間にとってとても大切な要素が沢山詰まっていると思っております。どうか1人でも多くの方々に届き、何を受けとって頂けるか今からとても楽しみにしております!

松林慎司 ロケ地である重要文化財・八千代座に撮影日前日に伺った時の事を鮮明に覚えてます。華やかな劇場の天井、歴史を感じる花道と板の上、お客さまをいざなう様なちょうちん。「邯鄲の夢 三重芝居と四人の役者」の世界に気持ちが一気に高ぶりました。日本の伝統芸能継承の物語を映像化、沢竜二先生のご出演。三天屋多嘉雄監督の想いを感じ取っていただけたらと思います。

◆「邯鄲の夢 三重芝居と四人の役者」 仕事に行き詰まり、鬱積した日々を過ごしていた脚本家の沢田冴之介(須賀貴匡)は、大衆演劇一座の座長の息子で、後継者争いに巻き込まれた過去があった。冴之介は、父沢田座長(沢竜二)率いる大衆演劇一座の後継者の座を狙っていたが、座長に剣劇の腕を認められ、一座の中で一目置かれていた、弟子の三津葉銀次(松林慎司)を尊敬とともにねたましく思い、銀次も冴之介に対して強い嫉妬心を抱いていた。ある日、真正女澤正劇の稽古中、銀次の刃先が冴之介の片目を突いてしまう悲劇が起こる。冴之介は役者を続けられなくなり、銀次も一座を追いやられてしまう。2人の数奇であり遠回り、迷い込んだ長い“夢追い人の物語”が始まる。