<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>
還暦のロックンローラー坂本つとむ(60)が歌う応援歌「人生上等!~O世代の身上書~」(作詞・桑原永江、作曲編曲・宮原康平)が面白い。今年1月に発売されたアルバム「人生上等!」の収録曲である。アルバムは還暦を記念して制作された。
同曲は坂本の自伝的な内容だ。16歳で矢沢永吉の著書「成りあがり」(78年)と出会って、ロックンロールにのめり込んだ。そんな自分は60歳となり、「Aちゃんにあこがれ、今Gちゃん」と歌う。Gちゃんは、もちろん「じいちゃん」のことだ。
「O世代」のO(オー)は「オヤジ」「オジサン」のO。現代の若者が「Z世代」と呼ばれるのに対して、坂本らが造語した。
還暦は一巡して元に還(かえ)ることから、「O(オー)」にスタート地点に戻る意味の「0(ゼロ)」をかけている。青春時代から今までを振り返って、活力がみなぎってくるロックンロールの応援歌だ。
この歌唱動画はTikTokで公開され、国内外の累計再生回数は1000万回を越えているという。
坂本 このままどこまで行けるのかな、という不安と楽しみと2つありますよね。今、やりたいことの1つをやっている、という充実感はあります。
31歳でメジャーデビューした。ずっとリーゼントでロックンロールを歌ってきたが、鳴かず飛ばず。55歳の時に「ロックンロールにこだわらず、誰にでも受け入れられる音楽を歌おう」と方向転換した。目指したのは「AOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)」という音楽ジャンルだった。「大人向けのロック」の意味だ。
自分も作詞作曲するが、関係者を通じて、作詞家の松井五郎氏や及川眠子氏。作曲家の三井誠氏や都志見隆氏らに作品の提供をお願いした。
松井氏は安全地帯、氷室京介、矢沢永吉らの作家で知られる。坂本冬美がカバーして大ヒットした「また君に恋してる」(ビリー・バンバン)も手がけた。
及川氏は、アニソンの傑作「残酷な天使のテーゼ」(高橋洋子)で知られ、Winkの「淋しい熱帯魚」で89年の日本レコード大賞を獲得している。
三井氏は元フォークグループ、クラフトのボーカルで、「クリスマスキャロルの頃には」(稲垣潤一)などのヒット曲を持つ。
都志見氏は名バラード「言えないよ」(郷ひろみ)や「最後の雨」(中西保志)のほか、ジャニーズ、歌謡曲と幅広く手がける。
コロナ禍の際にはライブはできなかったが、提供してもらった新曲の配信は続けた。その1曲で、告白できなかった後悔を歌うバラード「LOSTプロポーズ」(作詞・渡辺なつみ、作曲編曲・森正明、21年5月配信)が話題となり、同年11月にテイチクエンタテインメントからCDとして発売された。作詞の渡辺氏は、最近は人気ガールズグループTWICEの作品にも関わっている。森氏は前出の「また君の恋してる」の作曲家である。
坂本 この曲をきっかけに、歌詞を大事に歌おうという気持ちが芽生えました。(方向転換は)間違っていなかったんだ、と確信させてくれた1曲です。
そうして今年1月、55歳から発表した作品をまとめた還暦記念アルバム「人生上等!」が発売された。メジャーデビュー30周年の節目でもあった。
涙は記憶の産物、時が消してくれると歌う「夜景」。ここまでこれたのだから、明日に続く道もあると歌う「それが答えになればいい」。若者の心情をスタイリッシュに歌う「BITTER SWEETS~苦い果実」。ハードボイルドタッチの「夜の果てに吹く風よ」。二人で未来にこぎ出す「波風を纏(まと)いながら」。どれも心に訴えかけてくる秀作だ。
「人生上等!~O世代の身上書~」はボーナストラックとして収録された。
60歳からのテーマを「挑戦」に決めた。
坂本 自分の余生が終わる時に、絶対に後悔することが出て来る。その1つでも2つでもなくせればいいと思う。そのためにも60歳からがチャレンジです。最近はロックに転がり続けて、おかげさまで60周年って言っています(笑い)。【笹森文彦】
◆坂本(さかもと)つとむ 本名・坂本勤。1963年(昭38)1月24日、名古屋市生まれ。調理師学校卒業後、20歳で上京。21歳から芸能事務所に所属し、ライブハウスやものまね番組出演など芸能活動を行う。94年に「ためらい…」でファンハウスからメジャーデビュー。特技は料理で調理師免許を持つ。剣道初段。最近の趣味はガーデニング。本格的でレモン、トマト、ピーマン、キュウリなどを栽培する。ロックンローラーはツッパリ的なイメージがあるが、関係者いわくフワッとした「天然オジサン」。確かに話し方や身のこなしはソフトで、親しみやすい。身長178センチ、体重70キロ。血液型A。