宮沢りえ(50)が21日、主演映画「月」(石井裕也監督、10月13日公開)のビジュアルの解禁を受けてコメントを発表した。「月」は、実際の障がい者殺傷事件をモチーフにした作家・辺見庸氏(78)氏の小説の映画化作品で、宮沢は深い森の奥にある重度障がい者施設で新しく働くことになった“書けなくなった”元有名作家の堂島洋子を演じる。「私が演じた洋子の心は、ずっと、今も私の中を旅しています。この映画を観てくださった方と、その旅の先にある『何か』を掴みに行きたいです」とコメントした。
また、オダギリジョー(47)が洋子を「師匠」と呼ぶ夫の昌平役で、16年の映画「湯を沸かすほどの熱い愛」に続き、宮沢と夫婦を演じる。洋子の施設の同僚職員の、絵の好きな青年さとくんを磯村勇斗(30)、作家を目指す陽子を二階堂ふみ(28)が演じる。3人もコメントを発表した。
磯村勇斗 撮影期間中、「人」とは何か。「生きる」とは何か。ずっと考えていました。その答えを出すことに、恐れさえ抱いていました。でも、これは決して他人事ではなく、綺麗事を捨て、僕たちは向き合わねばならない。今はただ、この映画を観てもらいたい。対面して欲しい。そう思っています。
二階堂ふみ この作品について、ずっと答えを出せずにいます。そして、答えを出すべきではないとも思ってます。命に対して私たちは容易く傍観者になってしまう。しかしこの現実を真っ直ぐ見つめ、私たちの問題として考えたいと思い現場に参加させて頂きました。
オダギリジョー 人間は自分勝手で傲慢で、冷酷で残酷な生き物だ。ただ、この作品が描いているのは、そんな人間の温かみであり、思い遣りであり、何ミリかの可能性である。全ての人間に突き刺さる未来への希望だ。
「月」は、原作者の辺見氏が事件を起こした個人を裁くのではなく、事件を生み出した社会的背景と人間存在の深部に切り込まなければならないと感じ、語られたくない事実の内部に潜ることに小説という形で挑戦した。この問題作の映画化に、18年「新聞記者」や21年「ヤクザと家族 The Family」を手がけ、22年6月に72歳で亡くなったスターサンズ代表の河村光庸さんが動いた。河村さんは生前、プロデューサーとして最も挑戦したかった題材として、辺見氏の原作とモチーフにした事件のことを、ことあるごとに口にしていた。その裏には、日本社会に長らく根付く、労働や福祉、生活の根底に流れるシステムへの問いと、複眼的に人間の尊厳を描くことへの挑戦という信念があり「映画にするから。半端なものは作らない。映画にして、世の中に問いたいんだ!」などと力強く誓っていた。
河村さんが監督として白羽の矢を立てたのが、スターサンズが21年に配給した、コロナ禍を生きる親子を描いた「茜色に焼かれる」を手がけた、石井監督だった。同監督は、10代から辺見氏の作品に魅せられてきただけに「この話をもらった時、震えました。怖かったですが、すぐに逃げられないと悟りました。撮らなければいけない映画だと覚悟を決めました」とオファーを受諾した。
◆「月」堂島洋子(宮沢りえ)は、夫の昌平(オダギリジョー)とふたりで、つつましい暮らしを営んでいる中、重度障がい者施設で働き始め、光の届かない部屋で、ベッドに横たわったまま動かない、入所者の“きーちゃん”と出会う。生年月日が一緒で、どこか他人に思えず親身になっていくが、職場は決して楽園ではなく、洋子は他の職員による入所者への心ない扱いや暴力を目の当たりにする。そんな世の理不尽に誰よりも憤っているのは、さとくん(磯村勇斗)だ。彼の中で増幅する正義感や使命感が、やがて怒りを伴う形で徐々に頭をもたげ“その日”が、ついにやってくる。