ニューヨークに人間のペニスを食うコンドームが現れ事件を巻き起こす映画「キラーコンドーム ディレクターズカット版」(マルティン・ヴァルツ監督)が、8月4日に公開される。1996年にドイツで製作され、99年に日本公開されたホラーコメディー。日本版ポスターを描いた覆面イラストレーター、ロッキン・ジェリービーン氏(56)に、このほど話を聞いた。【小谷野俊哉】
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舞台はニューヨーク。32センチの巨根が自慢のゲイの刑事ルイージ・マカロニ(ウド・ザーメル)が、コンドームがペニスを食う事件の捜査に乗り出す。連れ込みホテルで美形の男娼ビリーと出会い、コトに及ぼうとするが、捜査対象であるコンドームに片方の睾丸(こうがん)を食い破られ、片玉になる。ルイージは、自身の玉の敵を取るべく、捜査に没頭していく。
四半世紀前にLGBT、インターネット、感染症、エイズ、遺伝子組み換え、SDGs、宗教など現在に続く問題提議をしている、バカバカしくも考えさせられる傑作だ。
24年前の日本初公開時もポスター、イラストを担当したジェリービーン氏は「今回改めて見て、やっぱりすごく時代を先取っていたんだなって。面白かったです。最初にポスターを描いた時は、まだ内容がきちんと翻訳される前だったんで、ストーリーはそんなにこだわらずに、とりあえず女の子のイラストを描いてやろうと思って描きました(笑い)」
当時は、突拍子もないテーマが山盛り。ホラー好き、カルト好き、サブカル好きを中心に話題を呼んだが、現代では社会が直面せざるをえなくなった問題を描いている。
「当時の人間が、今の世の中を見たらびっくりするでしょうね。当時は突拍子もなかったことが、今はリアルに感じられたというか…。当時は、まだ主人公のゲイという言葉自体が、そんななじみがなくてホモセクシュアルと言われてました。そういう意味では時代をすごい先取ってましたね。SDGsだって省エネっていってましたよね。LGBTの問題なんか、ほとんど知られていなかった。この映画が早かったというよりは、世の中が追いついて来たんじゃないんでしょうか」
原作はドイツの同名コミックだ。
「映画自体もドイツの製作ですけど、舞台はニューヨーク。出演者のせりふは全部ドイツ語という、謎の設定です(笑い)。当時は多分、みんなビデオで見てたんですよね。一番興味深いのが、主人公の同僚だった元警官の女装者。警官だった時は、どんな感じだったんだろうとか、いろいろ想像しました。そうですね世の中が漫画みたいになって来ている。世の中が漫画化してるのを先取りしてますよ。そういう意味じゃ、当時は考えられなかったほど、今の世の中が漫画化しているんじゃないでしょうか」
今回再び、24年ぶりにポスター、イラストを描いた。
「僕自身は変わったと言えば変わったけど、やってることと言えば本当変わってないというか。まあ、同じような感じでずっとできていることがすごいなとも思うし、やらせてもらえてるってこと自体もですね」
当時も、今も正体不明の覆面イラストレーター。
「バイクの交通事故で、顔にちょっと大きな傷ができてしまって、見られるのがいやだから、普段は覆面をして生活しているわけじゃありません。公の場に出る時に、単純に恥ずかしいからです」
ハワイ出身で、両親ともに日本人。5歳の時に日本に戻ってきた。子供の頃から絵を描くのが好きだった。
「小学生の時から、ずっとクラスで絵を描いてました。大きくなったら絵の仕事をしたいなと思っていました。絵の学校に通って、プロになったのは、単純に食べていくため。学生の頃から先輩のアシスタントとかで、お店の内装を絵で描くとか、雑誌のイラストとかやっててデザイン事務所を紹介してもらってとか。そこから、今回こういうコンペがあるんだけど出してみないということで、仕事が来るようになりました。」
今年も下半期に突入している。
「今年の前半は展覧会をやってたりとか、結構忙しかったですね。自分の商品を扱っているお店が原宿にありまして、8月から9月に周年のイベントをやります。僕の作品をグッズ化したものを売ったりしています。あとは、B級ムービーが好きなので、作品自体は本当はないんだけど、そういう映画のポスターを作って売る。挿入歌も、映画はないんだけど、知り合いのバンドマンたちに作ってもらったりします」
25年前とはイラストを描くための手法も変わった。
「描くのは、最初は鉛筆ですね。鉛筆で描いて、それをコンピューターに入れてフォトショップで仕上げていきます。25年前は、まだコンピューターを導入していなかったので、絵は鉛筆で描いた後にリキテックス、アクリル絵の具で色付けて。それでやると、すごい時間かかるんですよ。間違ったりなんかすると、それを修正するのすごい時間かかる。今はアッという間。それでいうと、技術的にもアップデートしていかないと対応できなかったりもしますし、自分的にもそれが面白かったりします。絵の具にこだわっていたりしたら、それはそれでいいんでしょうけど」
便利になった半面、フェイクやコピーも作りやすくなってしまった。
「いろいろと、やり方はあるんじゃないかなと思ってます。レコードなんかもそうだけど、今はわりと若い子はアナログのレコード買ったりもするんで。それに価値ついて高くなったりとかなので、逆に紙のものが少なくなれば貴重にもなり、そっちを求める人もいるわけで。だからやり方かな、という風にやり方の工夫ですね」
時代は変わる。価値観も変わる。時代とともに変わりながら、本質は変えずに生きている。