宇賀那健一監督「必死さ滑稽で面白い」ホラー映画「ラブ・ウィル・テア・アス・アパート」/連載1

映画「ラブ・ウィル・テア・アス・アパート」の宇賀那健一監督

今年4月の「ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭」で話題を呼んだ、女優久保田紗友(23)主演のホラーコメディー映画「ラブ・ウィル・テア・アス・アパート」が、19日に公開される。久保田演じる主人公・真下わかばに関わる人間が次々と殺されていく、血しぶき飛ぶスプラッターが美しい映像で描かれている。独特の世界観を持ち、海外では「天才」とも「変態」とも、高い評価を得ている宇賀那健一監督(39)に聞いてみた。

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小学生の頃のいじめ事件が、大人になってもたらす衝撃的な事件。そして、まさかの結末。久保田、青木柚(22)莉子(20)ゆうたろう(25)ら若いキャストを支えるのは、前田敦子(32)高橋ひとみ(61)田中俊介(33)麿赤児(80)吹越満(58)ら豪華すぎる実力派だ。

「いろいろな価値観がリスクヘッジして、SNSとかも丸くなってしまっている現状の中で、じゃあ『正義とはなんだ』となった時に、本当の強い思いを描けないのはすごくもったいないなと。世界のことよりも、自分の隣人を愛するみたいな映画を作れないかなとずっと思っていたんです。そんな中、コロナ禍で、いろいろな発言とかが、言葉狩りみたいなことにどんどんなっていってしまった」

撮影は2年前。コロナ禍で移動することも困難な中で、制作された。

「移動がはばかられる時代に、逆にとがってエッジの効いた、なおかつ日本中で撮影されたいろいろな絵が、スクリーンに映っている作品を作りたいというところからスタートしました。コロナが始まった頃に企画してる時は、撮影する頃にはもう収まってるだろって話してたんですけどね。実際は、午後8時にはロケ撮影を終わらせなきゃいけないとかが、県によってはあって。いろいろ制約がある中でやってましたね」

いじめ事件が起こる小学校で、主人公の担任は特別出演の前田敦子。7歳の小学生の母親役に61歳の高橋ひとみ。成長した主人公が教えを請うマスターが麿赤児。

「メインキャストというか、主演の方たちはオーディションで選びました。他の方たちは、作品に賛同してくれた方も多かったかもしれないですね」

黒く長い髪。正統派美人の久保田紗友が主役。

「久保田さんもオーディションだったんです。ホラーコメディーってふざけちゃうと成立しない。笑わそうと思ったりしちゃうと成立しないんです。基本的にホラーで怖すぎることが起こるからこそ、登場人物たちは必死で、それが滑稽で見てる側が面白い。観客側がツッコミ側に回る構図になると思っているんですけど、いかに真面目にできるかが1つのポイント。コメディー要素もありつつ、内容自体はシリアスな部分も多いので」

オーディションで久保田から強烈な印象を受けた。

「オーディションで、すごくシリアスなシーンとコメディーシーンを続けてやったんですけど、それぞれのシーンにめちゃくちゃ真剣に取り組んでくださった。間を空けずにすぐ次のシーンをやったんですけど『気持ちが切り替わるまで待ってください』って言ってくれて。ちゃんと自分の気持ちが整ってから芝居してくれたことも含めて、すごく信用ができるなと思った。あと、短期間の中でコメディーをやった後、またシリアスなシーンとかやってもらっても、ちゃんと感情をすごく立たれるところまで持っていけるところがすごいなと思いました」

(続く)

★宇賀那健一(うがな・けんいち) 1984年(昭59)4月20日、東京都生まれ。青学大経営学部卒。高校時代から俳優として活動して、監督業に進出。俳優として03年舞台「ROAD 地雷を踏んだらサヨウナラ」、04年映画「バッテリー」主演、06年映画「着信アリfinal」、10年NHK大河「龍馬伝」。08年映画「発狂」で初監督。長編映画は16年「黒い暴動」、18年「サラバ静寂」、19年の「魔法少年☆ワイルドバージン」は20年「転がるビー玉」、22年「異物-完全版-」など。168センチ。B型。

※映画「黒い暴動」は、正しくは最後にハートの絵文字があり