ナイツ塙宣之が映画監督初挑戦「芸人見に来たくなる映画に」来春公開の漫才協会ドキュメント映画

映画初監督について語るナイツ塙宣之(撮影・滝沢徹郎)

漫才協会会長を務めるお笑いコンビ、ナイツの塙宣之(45)が、映画「漫才協会 THE MOVIE~舞台の上の懲りない面々~」(来年春公開)で映画監督に初挑戦することが27日、分かった。舞台に思いをかける漫才協会の芸人たちに、スポットを当てるドキュメント映画。同協会の外部理事の放送作家高田文夫氏(75)の全面協力を得て制作中だ。塙に聞いてみた。

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今年6月に漫才協会の会長に就任した塙は「もう1年以上ですかね。漫才協会のいろいろな芸人のインタビューを撮っています。普段知らない芸人さんのドキュメンタリーみたいなのを、ちょっと撮りたくてね。漫才協会の名称と存在を広く周知させるためにも頑張っています。こういう人がいるっていう映像を流して、その人のインタビュー素材を、ストーリーテラーみたいな感じで紹介して行こうかと。監修というか、一緒に編集したりとか、これから内容がだんだん固まってくる。僕はドラマは見るんですけど、映画はあんまり見ないんです。でも、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)のドキュメンタリー映画は、素晴らしかった。あれみたいにしたいですね。物語を作って行くよりも、すてきなものを引きで撮って行って、裏側を見せるみたいな感じのね」と話している。

インタビューの撮影は順調だ。「インタビューの素材はたくさん撮れています。ただ芸人は、こっちが思っていた、言ってほしいことを一切言わない人とか、そこじゃないのになっていう人が多くて(笑い)。そこはもう、全部カットしなきゃいけない人とかも、めちゃくちゃあるんですよね。芸の話じゃなく、自分の趣味の話とかを延々と。それを捨てて、削って1時間半から2時間にまとめなくちゃならないから大変です。怒る人もいるだろうし、編集は大変ですね。漫才協会の芸人を見に来たくなるみたいな映画に。『この映画に出てた人だ』みたいなね、そういう映画にしたいですね」と話している。

漫才協会に所属する芸人は約180人。今年6月に「ゲロゲ~ロ」でおなじみの青空球児・好児の青空球児名誉会長(82)を継いで、副会長から会長に昇格した。「今までと、あまり変わらない感じはするんですけどね。やりたいことはもちろんあるので、ちょっとずつ改革していきたいというのはありますけどね。その第1弾が、この映画です」。

全面協力の高田氏には、21年に漫才協会の外部理事に就任してもらった。塙は「高田先生には、協会の外部理事になっていただいてから、ほとんど無償というか、全部自腹でやっていただいているので、本当にありがたいですね。一番東京の演芸というのを分かってらっしゃる方なので、映画の完成までにもあれこれ相談して力を貸しいただきます」と言う。

漫才協会はベテランの芸人が多いイメージがある。「年配の方が多いですけど、昔に比べると代替わりしています。僕らも20年以上いるので、だいぶ真ん中より上の方になっちゃったので。本拠地にしている浅草の東洋館も、コロナが明けてお客さんがいっぱい入ってますよね。あとは出演者テレビとかに出ている人とじゃない時にも、安定してもっと入ってほしいですけどね」。

2000年(平12)に土屋伸之と(44)とナイツとしてプロデビューと同時に漫才協会に入会。07年に史上最年少理事、15年に副会長に就任して、漫才協会振興に努めて来た。ベテランのおぼん・こぼんの不仲ぶりをテレビで紹介してバズらせ、U字工事、錦鯉、ハマカーンといった実力者を誘って入会させた。「漫才協会に入れたい人材はいっぱいいるんですけどね。そこが難しいところで、今までは会長じゃなかったから声をかけやすかったんですよ。だけど会長になっちゃうと、他の協会の人を誘うと冗談じゃなくなっちゃう怖さがあるんですよね。でもね、コサキンさん(関根勤&小堺一機)、とんねるずさん、爆笑問題さん、サンドウィッチマンさん、この方たち全部に漫才協会に入っていただけるのが一番お客さんが喜ぶんですけどね」と笑う。

お笑い界以外からの人材スカウトも考えている。大好きなプロ野球界にも目を向けている。「そうですね、戦力外になった選手のトライアウトで、お笑いに転向してくれる人がいると、いいかもしれないですよね。去年のドラフトの時は、YouTubeで『漫才業界から初めてジャイアンツに入れるか』って、1人で指名を待つ生配信をやったんですよ。でも、こっちから勝手に指名するっていうのはやってなかったですね。逆に、指名するのが面白そうですね」と戦力強化に思いをはせている。

今年5月の漫才協会主催の「漫才新人大賞」では、結成1年半のお笑いコンビ、ミーナが優勝した。「漫才協会の若手も、育っているんですよ。ミーナはお勧めですよ。ほかにも春組織、マリア、おちもりとか。ここら辺は頑張ってもらいたいですね。漫才協会の若手たちが、毎年のようにM-1で活躍してくれるのが夢ですよね」。

ナイツとしては10月に全国10都市11公演のライブ「ナイツ独演会 実況の人が『そうですね』ばっかり言うでしょう」を開く。「独演会でやりたいネタは、結構たまって来てますね。時事ネタが多いんですけど、だんだん流行語大賞とかも10月ぐらいに決まるじゃないですか。同じで、10月ぐらいまでに、やりたいことがたまってくるので、いろいろなエキスを詰め込んで早くやりたいですね」と話している。【小谷野俊哉】

◆塙宣之(はなわ・のぶゆき)1978年(昭53)3月23日、千葉県生まれ。大学の後輩の土屋伸之(44)と00年(平12)にナイツ結成。03年漫才新人大賞。08年NHK新人演芸大賞。08~10年、3年連続でM-1グランプリ決勝進出。22年(令4)浅草芸能大賞。趣味はドラマ「北の国から」鑑賞、プロ野球観戦、相撲観戦。特技はプロ野球の記録を覚えること。09年に結婚して3女の父。兄は芸人のはなわ(47)。173センチ。血液型A。