ベネチア銀獅子賞「悪は存在しない」主演の大美賀均「想像よりすごい」本業は映画製作者

ベネチア映画祭で審査員グランプリを受賞した「悪は存在しない」の大美賀均(左)と濱口竜介監督(C)2023 NEOPA/Fictive

世界3大映画祭の1つ、第80回ベネチア映画祭(イタリア)授賞式が9日(日本時間10日)行われ、濱口竜介監督(44)の新作長編映画「悪は存在しない」(24年公開)が、最高賞の金獅子賞に次ぐ審査員グランプリ(銀獅子賞)を受賞した。

主演の大美賀均(おおみか・ひとし=34)も授賞式後、濱口監督と並んで日本メディアの取材に応じた。大美賀は劇中で、村に長く住んで何でも屋を営み、娘の花(西川玲)と自然のサイクルに従い、質素ながらも豊かに暮らす巧を演じた。濱口監督は受賞スピーチの中で、最初の脚本を書く前に大美賀と撮影の北川喜雄氏を交えた3人で「一緒にドライブして、一緒にまき割りをした。この映画を、どのようなものにしようか考えていました」と語った。

劇中には巧が、まきを割るシーンもある。大美賀は、濱口監督のスピーチを引き合いに「すごく小さなチームで始まって。初めは本当に撮影の喜雄さんと3人でシナハン(シナリオハンティング)に回っていたんですけど」と振り返った。そして「3人から始まって、どんどんスタッフが増えて。撮り終えた時、ちゃんと撮るなんて…と思ったんですけど、その頃の想像より、はるかにすごい所にいるなと。こんなところに連れてきていただいて、ありがとうございます」と、濱口監督に感謝した。

「悪は存在しない」は、21年のカンヌ映画祭(フランス)で邦画初の脚本賞、22年に米アカデミー賞が国際長編映画賞を受賞した、濱口監督の前作「ドライブ・マイ・カー」で音楽を担当した石橋英子氏が、ライブパフォーマンスのための映像を依頼。同監督が快諾したことで、2人による共同企画「音楽×映像」プロジェクトがスタート。その音楽ライブ用の映像を制作する過程で、106分の長編劇映画として完成した。

大美賀自身、本業は俳優ではなく、ベルリン映画祭(ドイツ)で審査員大賞(銀熊賞)を受賞した濱口監督の21年「偶然と想像」で製作を担当。今年は自身の初監督中編「義父養父」が完成・公開を予定する映画製作者だ。大美賀だけでなく、村にグランピング施設の建設を計画する、芸能事務所の担当者を演じた小坂竜士(37)は、カンヌ映画祭(フランス)で邦画初の脚本賞を受賞し、22年には米アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した、濱口監督の前作「ドライブ・マイ・カー」には製作スタッフとして関わっており「悪は存在しない」への出演を機に、俳優業を再開した。

同じく芸能事務所の担当者を演じた渋谷采郁(31)は、ロカルノ映画祭(スイス)など複数の国際映画祭で主要賞を受賞し、濱口監督が世界から注目されるきっかけとなった15年「ハッピーアワー」で俳優業を始めた。石橋氏を含め、濱口監督が世界的な監督へとステップアップしていく過程で、製作をともにしてきた面々でチームが組まれている。大美賀は「濱口さんをはじめスタッフ、キャスト、現地で協力してくれた皆さんに本当に感謝しております」と製作に関わった全員に感謝した。

◆「悪は存在しない」 巧(大美賀)と娘の花(西川玲)は、地方の村で自然のサイクルに従い、質素ながらも豊かに暮らしていた。ある日、芸能事務所が村にグランピング施設の建設を予定していると知り、巧も含めた村民らは、東京から来た男女のプロジェクト担当者(小坂竜士、渋谷采郁)が開いた説明会に参加した。その中で村の自然、村民の生活を破壊しかねない強引な計画だったことが判明し、説明会は物別れに終わる。プロジェクト側は、村民との仲介役として巧に目をつけ、村を再訪して巧と交流していくが、そのことが巧と花の親子の暮らしにも影響を与え始める。