ベネチア映画祭(イタリア)で審査員グランプリ(銀獅子賞)を受賞した「悪は存在しない」(24年公開)の濱口竜介監督(44)が帰国し、12日に都内の日本外国特派員協会で、主演の大美賀均(おおみか・ひとし=34)とともに会見を開いた。
濱口監督は、21年に「偶然と想像」がベルリン映画祭(ドイツ)審査員大賞(銀熊賞)、前作の「ドライブ・マイ・カー」がカンヌ映画祭(フランス)で邦画初の脚本賞を受賞しており、世界3大映画祭で主要賞を受賞。同作は22年に米アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞しており、黒澤明監督以来の4賞完全制覇を、わずか2年半で達成した。世界3大映画祭全てで受賞を果たした。アカデミー賞を加えた4つの大きな映画賞を受賞したのは、黒澤明監督に続く快挙となったことが、大きな反響を呼んでいる。
濱口監督は、ベルリン映画祭での受賞後の取材の中で、世界で注目を浴び始めていることについて聞かれた際「その時の自分に撮ることが出来るものを、淡々と撮っていきたい。それをどう評価するかは周囲の問題」と評した。そして今回、ベネチア映画祭で受賞した際、コンペティション部門にアジアから1本しかノミネートされなかったことについて「選考する側の問題なので、ちょっと分からないです。全体として、自分たちの作品が、どのようなポジションに位置付けられているかは分からないですけど」と答えた。
質疑応答の中で、今回の結果と、自身の評価に対するこれまでの自身の発言を受けて、黒澤監督と並び称される評価を得た、現状への受け止めを問う質問が出た。濱口監督は「評価は周りがしていただける、という考えは変わらない。ただ、偉大なお名前を引き合いにだしていただく状況になったので、申し訳ない…というのが正直なところです」と率直な感想を語った。その上で「なぜ、そう思うかと言いますと、黒澤明監督は内容が結構、違う」と、世界3大映画祭と米アカデミー賞の完全制覇という結果は同じながら、その中身が違うと指摘した。
黒澤監督は51年に「羅生門」でベネチア映画祭金獅子賞、59年に「隠し砦の三悪人」でベルリン映画祭最優秀監督賞(銀熊賞)、76年に「デルス・ウザーラ」で米アカデミー賞外国語映画賞、80年に「影武者」でカンヌ映画祭パルムドール受賞と、4賞の制覇まで29年を要したが、ベネチアとカンヌで最高賞を受賞している。
一方、濱口監督はベネチアとベルリンで最高賞に次ぐ賞を受賞している。その事実を踏まえ「(黒澤監督は世界3大映画祭で)4つの賞を取られていて2つは最高賞。そこは全然、スケールが違う気がしています。比べものにならないとまではいいませんが、黒澤監督のスケールの大きさが表れた感じ。(黒澤監督は)30年にわたって撮られた…長く質の高い仕事を続けてこられたということ」と、今回の自らの偉業が、黒澤監督の偉大さを証明したことを強調した。その上で「自分は、この先どうなるのかと震えている。評価をいただく必要は、ないのかも知れないけれど…長く作り続けていきたいと思っています」と自らの今後について語った。
また、海外での映画製作に興味はあるかと聞かれると「それは、ずっと関心はありますが、信頼できる方と出会えるかは簡単ではない」と語った。