京都南座で16日、「九月花形歌舞伎 新・水滸伝」(24日まで)が上演され、亡くなった市川猿翁さんの長男・市川中車(57)と孫の市川團子(19)が出演した。劇場正面の看板やフライヤーには、スーパーバイザーとして猿翁さんの名前がクレジットされている。
オープニングとともに、大向こうから「3代目!」「澤瀉屋!」の声が飛んだ。亡くなった猿翁さん(3代目猿之助)をしのんでのものだった。
舞台では、世のはみ出し者集団・梁山泊(りょうざんぱく)のリーダーを中車が悲しみを隠して熱演。仲間を引き連れ、巨大な敵への攻撃を決断したシーンでは迫力に満ちた声で「野郎ども、出陣じゃあ!」と気合を込めた。
また團子は、若手らしくきびきびとした演技で、テンポのよい、スピーディーな芝居を引き締めていた。
「新・水滸伝」は猿翁さんがスーパー歌舞伎のスタッフとともに考案し、08年に舞台化された。今回の主演は中村隼人(29)で、猿翁さんの代名詞でもある大がかりな宙乗りを見事に披露した。
名古屋から観劇に来たという歌舞伎ファンの女性は「取ったチケットが、まさか猿翁さんの訃報翌日だとは…。もともとは團子さん目当てだったんですけど、きょうは中車さんの迫力ある演技に泣かされました」と感激しきり。
また、歌舞伎が初めてという京都市の女性は「想像していたよりも、面白かった。とてもよかったです」と喜んでいた。
18日午前の部終演後に予定されているアフタートークショーについて、「出演予定の中車さんは欠席予定になっています」と同劇場関係者は語った。
猿翁さんと京都の縁は深い。最後の舞台出演となったのは13年12月、南座での自身と4代目猿之助、9代目中車の襲名披露だった。
京都とのつながりはそれだけではなく、京都芸術大(旧京都造形芸術大)の教授を務め、副学長にも就任。学内には歌舞伎上演も可能な劇場「春秋座」が01年に開設され、これまでに猿翁さん関連のイベントが何度も開催され、中車も登場したことがある。