ボストン・ポップス「ジョン・ウィリアムズ公演」指揮者キース・ロックハートで20年ぶり公演

ボストン・ポップスの指揮者キース・ロックハート(C)池上夢貢(GEKKO)

20年ぶりに来日したアメリカの名門「ボストン・ポップス・オーケストラ」が6日、東京・国際フォーラムで「ボストン・ポップスon the Tour 2023 ジョン・ウィリアムズ・トリビュート公演」を行った。「スター・ウォーズ」「E.T.」「ジョーズ」「ハリー・ポッター」など数々の映画音楽を手がけ、1980年から93年まで同オーケストラの常任指揮者として在籍した、ジョン・ウィリアムズ(91)の楽曲で構成。東京公演は同所で8日までと、10日にサントリーホールで。大阪公演はフェスティバルホールで12、13日。現在の指揮者、キース・ロックハート(63)に聞いてみた。【小谷野俊哉】

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1885年(明18)に創設された名門オーケストラも、来日公演は03年以来20年ぶりとなる。

「非常にワクワクしています。日本にはたびたび来る機会がありまして、もちろんボストン・ポップスとしても来ていますし、日本のオーケストラで指揮する機会もありました。私はボストン・ポップスで28年間指揮者をしていますが、我々にとってはアメリカに次いで日本のお客さまを大事に思っています。私が指揮者を務めて最初の10年間に日本で4回ほど公演を行いましたが、そこから20年間空いてしまいました。再び日本のお客さんの前で演奏することが出来ること、皆さんと再会できることがすごくうれしいです」

ジョン・ウィリアムズが手がけた映画音楽を演奏する。

「ジョン・ウィリアムズはボストン・ポップスにおいて私の前任者で、我々の楽団が演奏する演目の核となる楽曲を数多く生み出してきました。皆さんも彼が作る素晴らしい楽曲をたくさん知っていると思いますが、彼が曲について語っているのを聞いたことがない人が多いと思います。ジョン・ウィリアムズは謙虚な方で、自分のことをあまり語ろうとしません。ならば、コンサートの中に彼が楽曲について語るインタビューを盛り込んで、彼の軌跡や、音楽との向き合い方、スティーブン・スピルバーグ監督やジョージ・ルーカス監督とのエピソードを語ってもらい、曲の成り立ちを話してもらうことにしました。そのために、我々のチームが彼の家を訪れ、インタビューをして音楽について話してもらいました。このプログラムをアメリカ以外で披露するのは初めてです」

日本公演ではバイオリニスト服部百音(24)とピアニストの角野隼斗(28)がゲスト出演する。

「服部百音さん、角野隼斗さんという日本のソリストの方と共演してプログラムを披露するというのは、今回の公演だけの特別なものです。おふたりに参加してもらうことで、日米の文化の交流ということで、よりお客さまに親しみやすさを感じてもらえると思っています。9月にはボストン・シンフォニーホールで、共演しています。その共演がありましたので、しっかりと準備もできたと思っています。服部さんは本当に美しく、情熱的な演奏をされる方ですね。彼女の表現は非常にパーソナル(私的)で、すごく感情を込めるバイオリニストです。オーケストラと共演する際も、オーケストラのサウンドにしっかりと自分も入り込む演奏をしています。今回は彼女のお父さま(服部隆之)の楽曲も披露します。角野隼斗さんは素晴らしい才能があって、テクニックもあります。私自身もピアニストなんですが、角野さんは非常に滑らかに指を動かして、激しい演奏の時もそう感じさせないところがすごいと思います。あとは自由さ。クラシックとジャズを合わせたセンスが素晴らしいです。今回の公演でジョージ・ガーシュウィンの曲を取り入れているのですが、この曲はこれまでにもジャズピアニストの方々と共演した時にクロスオーバー作品として披露してきています。どのピアニストの方も即興演奏も見事にしていただいています。角野さんは、その中でもテクニックが高い。実はジャズピアニストの小曽根真さんが共通の知り合いなんです。コロナ禍になる前、新日本フィルハーモニー交響楽団と仕事をした時にご一緒しました。角野さんにお会いした時に『小曽根真さんを知ってる』と話したら『僕も知っています』と言っていました。音楽の世界って狭いんだなぁって(笑い)。そういう縁もありますので、今回もまた共演できるのが楽しみです。あと、ユーチューバーとして、登録者が130万人もいるのは素晴らしいですね」

プログラムの「STAR WARS:The Story in Music」では「スター・ウォーズ」の全エピソードから楽曲が披露される。

「2019年に『スター・ウォーズ』シリーズの最後のエピソードが劇場公開されました。それが公開される前に、どうやったら、この長い9本、22時間に及ぶシリーズをまとめるられるかを考えました。それだけの長尺の作品を1人の人間が43年にわたって書き上げたという偉業をどう伝えるかということです。コロナ禍の中で、うちの子供たちがYouTubeの動画で、歴史の『ロシア革命をユーモアを交えて6分で説明する』という感じのものを観ていたんです。子供たちはそれを見て楽しんで、しかもいろいろ学ぶこともできている。『スター・ウォーズ』の物語を2時間で伝えることはできないだろうか?と考えました。ウイスキーを飲みながら9本の映画のプロットを読んで、2時間の台本にしました。半世紀にわたり1つのテーマで音楽を作り続けた、本当に素晴らしいなと思います」

ジョン・ウィリアムズには指揮者として、そして作曲家としての魅力がある。

「ジョン・ウィリアムズは第一に音楽家作曲家だと思うんです。彼は、作曲家であり指揮もします。作曲家としての音楽性がそのまま指揮にも表れているように思います。彼は1980年にボストン・ポップスで指揮を執る前は、人前で指揮をとったことはありませんでした。私は、まず指揮者ですので、1995年にボストン・ポップスで指揮を執る前から人前での指揮の経験がありました。そういう意味では、指揮者としてのジョン・ウィリアムズはボストン・ポップスですごく成長、進化したと思います。自分の楽曲だけでなく、モーツァルトやメンデルスゾーンなど、他の作曲家の楽曲もオーケストラで指揮していったわけですから。私としては、彼が自分の曲を指揮するのを横で見ていて、すごく参考になりました。作曲家が自分の楽曲のどういうところを大事にしているのか、どこにこだわっているのかが伝わってきたからです。それはとてもいい経験でした」

キース・ロックハートが95年にボストン・ポップスの指揮者になった時、日本人の小澤征爾(88)がボストン・交響楽団の音楽監督を務めていた。

「小澤征爾さんは今、健康の面でお大事にされていることを願っております。1995年に私がボストン・ポップスに着任した際、その着任の会見で私のそばにジョン・ウィリアムズと小澤征爾さんが座ってくださいました。それ以降も私のことを支えてくれて、常に気にかけてくれていました。お互い、ボストン・レッドソックスの大ファンなので、一緒に試合を観に行ったりしたこともありました。指揮者としてレジェンド的な存在ですので、非常に尊敬しておりますが、ボストン・ポップスでは同僚として活動できたことを非常に誇りに思っております」

20年ぶりの日本公演。その間に日本も大きく変わった。

「ボストン・ポップスは、クラシックに今の最新の流行音楽も取り入れるなど、いろんな試みを柔軟にやってきました。20年の間も、我々は常にお客さまとオーケストラの音楽、いわゆるクラシックの橋渡しをしてきました。楽団の中ではメンバーの入れ替わりもありましたが、新しいメンバーもとても柔軟な姿勢で、ボストン・ポップスの精神を受け継いでいるメンバーばかりだと感じています。大きな変化としては、映画音楽のコンサートを行う時に、スクリーンに映画作品を流して演奏するというスタイルは20年前にはまだ珍しかったのですが、今ではそういうことが主流になりました。そういう意味でも、よりお客さんに楽しんでもらえるコンサートにすることができているのではないかと思います。久しぶりの日本公演ということで、オーケストラのメンバーの半数以上は日本に来るのは初めてです。そんな初めてのメンバーも含めて、全員が日本公演をとても楽しみにしていましたし、公演に向けての準備も万端です。ぜひ楽しんでいただきたいと思います」

この3年半、世界中のエンターテインメントがコロナ禍に見舞われた。

「アメリカでも、コロナで遠のいた人間を元に戻すのは難しいと実感しました。チケット代の高騰も、コロナとは別の要因としてありました。でも、ゆっくりと回復しています。ライブパフォーマンス、芸術といったものを、これまで築いてきたのにあっさりと断絶してしまったのは人生最悪の出来事でした。でも、2023年に100人の団員とともに日本に来られたのは、とても素晴らしいことです」

◆「ボストン・ポップスon the Tour 2023」公演

▼「ボストン・ポップスon the Tour 2023 ジョン・ウィリアムズ・トリビュート日本公演」<東京公演>東京国際フォーラム 10月6、7、8日

▼「ボストン・ポップスon the Tour 2023 オスカー&トニー日本公演」 東京・サントリーホール 10月10日

▼「ボストン・ポップスon the Tour 2023 ジョン・ウィリアムズ・トリビュート日本公演」<大阪公演>フェスティバルホール 10月12、13日