<「くるりのえいが」佐渡岳利監督に聞く2>
ロックバンドくるり初のドキュメンタリー映画「くるりのえいが」が、13日から全国の映画館で3週間限定公開&デジタル配信されている。佐渡岳利監督(57)は、デビュー50周年を迎えた細野晴臣(76)の人生をたどり、創作活動の軌跡に迫った19年のドキュメンタリー映画「NO SMOKING」と、その先を描いた21年「SAYONARA AMERICA」など、アーティストの本質をとらえた音楽ドキュメンタリー映画製作の第一人者として知られる。
佐渡監督に話を聞く2回目は、NHKエンタープライズのエグゼクティブプロデューサーとして「紅白歌合戦」「スコラ 坂本龍一 音楽の学校」など音楽を中心にエンターテインメント番組を手がけてきた同監督に、アーティストを題材にしたドキュメンタリー製作へのこだわりや、NHKでの番組作りと並行して、映画の製作を続ける思いを聞いた。【村上幸将】
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「くるりのえいが」は、ボーカル&ギター岸田繁(47)とベース&ボーカル佐藤征史(46)が、4日にリリースした14枚目のアルバム「感覚は道標」制作のために、02年8月に音楽性の違いで脱退したドラムの森信行(48)に声をかけ、静岡県伊東市の伊豆スタジオで約1カ月、合宿して行ったレコーディングに密着。3人で新たな楽曲を作る日々を、克明にとらえた。
-取材、撮影の際にこだわっていることは?
いろいろなスタイルがあって。監督やディレクターのカラーが、すごく出るものもあるし、そうじゃないものもありますよね。(自分としては)アーティストを扱う時は、その人達らしいというと、あれですけど…これだったら彼らの姿だな、というようなもので、あるべきかなと思っていて。ファンの人たちが見て、こんな感じなのか? という(疑問を抱くような)ものじゃないということが大前提だと思っているんですが。どれだけ事実と乖離(かいり)しないかというのが、ポイントだと思いますから。これ、違うな、というのは避けたいですね。
-レコーディングの撮影時にこだわり、気を付けていることは?
それは、邪魔をなるべくしないように、ということですね。(スタジオの)中にいて、うろうろすると(アーティストは)当然、気になりますからね。邪魔にならないように、気にならないように…空気になる、という感じですね。とはいえ、僕がつないでいる以上、僕の視点は入るわけですから、バンドの大事なところを見誤らないようにしないといけない、というのを、すごく大事にしています。それが、一般のファンの方に、くるりらしいよね、と伝わるか、というところが勝負どころですね。
14日に東京・新宿ピカデリーで行われた公開記念舞台あいさつで岸田、佐藤、森が口々に佐渡監督の撮影の素晴らしさをたたえた。
岸田 カメラを向けられると、後ろを向いてしまうほど、あがり症。でも、カメラを向けられているのも気付かない。プロは、すごいなと。
佐藤 空気のように滞在し(収録時の)セッティングによって(撮影場所を)さりげなく変えて頂いて。ストレスなくやらせて頂きました。
森 レフ板もピンマイクもなく、自然にしゃべっているところを撮ってもらった。カメラマンとも飲んだ。
佐渡監督 なるべく、ご迷惑をかけないようにと。(アーティストの中には)嫌だと言う人もいるんですけど(くるりは)被写体として撮りやすい。心地よく撮らせて頂きました。
佐渡監督は、1990年(平2)にNHKに入局。「MUSIC JAPAN」「岩井俊二のMOVIEラボ」「細野晴臣イエローマジックショー」などを制作してきた。
-NHKの業務と並行し、どう映画を撮った?
合間を、うまくえり分けてと言うか…。今は「沼にハマってきいてみた」というEテレの番組をレギュラーでやっているのと、あとは、大竹しのぶさんのラジオ(『大竹しのぶのスピーカーズコーナー』)。あとは特番ですね。紅白も、相変わらずやっていますよ。紅白は、今は(所属が)エンタープライズだから、部分を(担当しています)。去年はMISIAさんのディズニーのコーナーですね。あとは、米津玄師さんとかYOASOBIとか。米津さんは、すごい楽しい仕事でした。
-アーティストに寄り添ったドキュメンタリー番組が多いが、アーティストの切り取り方は、どこにこだわっている?
やっぱり、その方の持っている基本性能かな。それが出ないと、意味がないなと思いますから。
-「くるりのえいが」では、くるりの地元・京都で創業50年の老舗ライブハウス「拾得」での貴重なライブも収録した。決して広くはないスペースで、どのように撮ったのか?
音は基本的には、くるりさんの、いつものエンジニアチームが(担当)。音楽業界的には、音は音のチームの方が絶対、いいですからね。
-拾得のライブから、メジャーデビューした98年にリリースした「尼崎の魚」に加え「感覚は道標」に収録された「California coconuts」と新旧の楽曲を収録。曲のチョイスは悩んだ?
ライブは当然、たくさん(の楽曲の演奏を)やっていますが(リリース時期が)前の方でも(レコーディング中の会話中に3人が)言及された作品とか新曲も入れて、というのは良いバランスだったかなと。懐かしむだけになっちゃうと良くないですから。
-そうした考え方は、懐かしむためじゃなく、新しいものを作るために昔の作り方で取り組んだ、という、今回のくるりのスタンスにも通じる。劇中に使った、昔のミュージックビデオのチョイスも工夫した?
当然、飲んだりスタジオの中でお話なさっているわけですが、よく話に出てきた作品を出していますね。
-「くるりのえいが」3週間限定上映+配信。今後、NHKでの放送だったり、続編などの可能性は?
それは、どうですかね…ないんじゃないですか? いろいろ書いて頂いて、お力を頂ければ(笑い)
-くるりを今後も題材として追いかけていく?
それ、あるかもしれないですね。お話を頂ければ…という感じですね。
-映画の製作は、基本的には、話があったら、というスタンス?
そうですね。やっぱり、日々、いろいろなことをやっていますし、そんなことを言えば(映画製作には)元手も必用になりますし。劇映画も、やりたいですね。
-ドキュメンタリーではなく、劇映画?
僕、ドラマ志望だったんですよ。1990年(平2)の入局時に、割り振られたところが音楽だから結局、ずっと…。NHKで、ドラマを作ったことは1回もないんです。舞台は、やったことがあるんです。外の仕事として、東京グローブ座で、NEWSの増田貴久さん主演の舞台を演出し、脚本を書いたことがあります。(18年の「Only You ~ぼくらのROMEO&JULIET」)現代劇、時代劇、どちらでもいいかなと思いますけど、どちらかといえば現代劇かな。映画が好きでしたから…脚本も書くことが出来ますんで。
佐渡監督の、創作への意欲は止まらない。そこには、常にアーティストへのリスペクトと、寄り添う思いがある。