巨匠ヴィム・ヴェンダース監督が田中泯の踊り撮った短編映画、東京国際映画祭で世界初上映

東京国際映画祭で世界初上映された短編映画「Some Body Comes Into the Light」舞台あいさつに登壇した田中泯(撮影・村上幸将)

東京国際映画祭でオープニング作品として上映された、役所広司(67)の主演映画「PERFECT DAYS」(12月22日公開)を手がけたドイツのヴィム・ヴェンダース監督(78)が、本編にも出演した田中泯(78)の踊りを撮影した短編映画「Some Body Comes Into the Light」が26日、都内で開催中の東京国際映画祭で世界初上映された。

同作は、「PERFECT DAYS」で役所が演じた東京・渋谷で公衆トイレの清掃員・平山とつながりを持つホームレスを演じた田中を主演に、本編とは別に撮影。世界的巨匠ヴェンダース監督が審査委員長を務める、東京国際映画祭から世界に華々しく発表された。

田中は「クランクインの日に、ヴェンダース監督から『踊ってね』と言われまして。踊りのシーンで終わるはずが、クランクアップの日に『スタジオで踊ってくれないか』と。それが映画の中に収まらず、短編になりました」と製作の経緯を説明。「僕にとって奇跡としか思えない出来事で、いまだに自分を疑っている状況です」と、ワールドプレミア上映への率直な思いを語った。

「PERFECT DAYS」でヴェンダース監督と共同脚本を務め、プロデュースもした電通グループグロースオフィサーの高崎卓馬氏(54)は「(撮影の)最終日に、映画の魂になるような場面を撮ったけれど、衝撃的で編集しても、どうしても入らない」と撮影を振り返った。そして、5月27日にカンヌ映画祭で役所が男優賞を受賞した帰り道で、ヴェンダース監督が「撮った泯さんの映像で、作品を作りたい」口にしたことで短編映画企画としてスタートしたと明かした。そして「(『PERFECT DAYS』)との相関関係はあるんですけど、この作品は全く別なものが出来た印象があります」と作品を評した

田中は、改めて映画館で上映される思いを聞かれると「いやぁ…驚いているのが正直なところ」と即答した上で、こう続けた。

「僕の踊りは映像にならないと散々、言ってきた。ビデオテープに撮って、撮影しても、踊りが映像になると決定的に失われる。これでは、踊っていた時の体の中身は、どこに行っちゃうんだろうと思った」

そして、21年の東京国際映画祭で上映された、22年のドキュメンタリー映画「名付けようのない踊り」製作にあたって、犬童一心監督に「記録した僕の踊りを再生しないで下さい。ズタズタに切り裂いて、監督が好むものに編集するなら受けます、素材として撮影したものを踊りにして下さい」と依頼したと説明。その上で、ヴェンダースさんにも「いくら編集しても構わない」と告げたと明かした。

「Some Body Comes Into the Light」は9分間の短編だ。田中は、本編を見た感想を聞かれると「小さい画面で見たら、面白いものになっている」と評した。そして「踊りは現場で終わるんです。終わらなければいけない…それが宿命。他の表現と違って、踊りは再生の手段を未だに得ていない。皆さんが見る映像はヴィム・ヴェンダースの撮ったものとして見て欲しい。それを僕は共有している」と強調した。

舞台あいさつには、ヴェンダース監督とも創作を共にし、音楽を担当した音楽家の三宅純(65)も登壇した。