岸井ゆきの(31)が30日、三菱地所が主宰し、都内で開催中の東京国際映画祭と共催した第1回「丸の内映画祭」で「ヴェンダースの世界に強く共鳴した若手映画人が語り合う」と題して、工藤梨穂監督(28)とトークを行った。
この日は、5月のカンヌ映画祭(フランス)で、主演の役所広司(67)が男優賞を受賞し、東京国際映画祭でオープニング作品に選出された「PERFECT DAYS」(12月22日公開)を手がけ、同映画祭で審査委員長も務めるドイツのヴィム・ヴェンダース監督(78)の91年「夢の涯てまでも」を上映した。その後、工藤監督の21年「裸足で鳴らしてみせろ」が併映され、2人のトークが実現した。
岸井は、司会から映画の見方、ポイントについて聞かれると「物語に没入し、スクリーンを信じちゃう。終わった後、どう撮ったんだろう? と。環境音は、気になる」と説明した。工藤監督から「お芝居は見ますか?」と聞かれると、芸能界で屈指の映画通と評されるだけの見識を披露した。
岸井 最初は芝居を見て、その(映画の)世界に完全に入るけど(映画館からの)帰り道で、頭に残っているのはショット、もしかしたら、これって? と気付きがある。スクリーンを見ている時は物語に埋没し、帰る時は画面、ショットと心の中の物語にアクセスしていく。
岸井が映画を見ている最中と、見た後の自らの脳内構造を解析して語るのを聞き、工藤監督は「すごいですね」と驚くことしきりだった。
その後のトークは、若手の工藤監督から主演映画「ケイコ 目を澄ませて」(三宅唱監督)の演技を評価され、日本アカデミー賞受賞式で最優秀主演女優賞を受賞した岸井への“質問コーナー”と化した。工藤監督から「監督との関係性、どうしていますか?」と聞かれると、岸井は「いつも違うんです」と答え最近、撮影したという新作の現場について詳細に説明を加えて、答えた。
岸井 新しい作品は、段取りもなく(カメラを)いきなり回す。(監督から)こういうシーンは、こうやって欲しいな、と話がある。1人1人に伝えるべきことを、監督が私にしか聞こえない声で伝えて「よーい、はい」と。それぞれ(俳優)が、お守りのように(監督の演出を胸の中に)持って、そのシーンが始まる。かなり新しい。もう、いっぱい、いっぱいだったんで。
岸井は、説明の最後に「役と私の生活を区切って守るタイプなんですけど、人ごととは思えず、役のことを考えてしまって…。役によって、こっちも変わっていくので作品によっても変わっていきます」と、撮影を終えた新作で自身の内面にも変容があったと語った。工藤監督から「監督に順応する?」と聞かれると「どの作品も、そうです」と答えた。
また工藤監督から「俳優から歩くのが1番、難しいと聞きます」と聞かれると、岸井は「難しいです、普通に歩いていて、歩いていると思わないから、その自我を消す」と答えた。その上で「『ケイコ-』に特化すると(トレーニングで)肉体が変わっていたので、そのままで良かった。歩こうとすると、気持ち悪くなる。キューを出されての歩き出しが難しい。本当に、大変」と答えた。