<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>
NEWS加藤シゲアキ(35)の長編6作目となる「なれのはて」が先月発売された。
小説家デビューとなった「ピンクとグレー」から11年。その第1作の2・1倍に当たる原稿用紙750枚の大作で、時代は大正から現代にまたがり、加藤の母方のルーツがある秋田を舞台に肉厚な作品になった。
実際に読んでみると、史実を踏まえながら、現代パートの登場人物はもちろん、過去のキャラクターも生き生きと描かれていて、読み応えのあるミステリーに仕上がっている。文芸評論家からもおおむね高評価を得たようだ。
発売を機に加藤に話を聞く機会があった。
「この作品に取り組んだ3年間は、壁にぶつかって心が折れそうな時もありましたし、それでも折れてる暇もなく、とにかくガーッと書いた感じです」
決して作家然とせず、第1作の頃の初々しい感じのままに話す。
主人公は加藤と同世代のテレビマンで、ある問題を機に報道局から事業部に不本意な異動となっている。イベント事業に絡んで出会った1枚の絵をきっかけにある一族をめぐる戦前からの確執に巻き込まれていく。テレビ局の描写にはさすがにリアリティーがあり、「映像的」といわれる持ち味はこの作品でも健在だ。
「やっぱり実際に知っている景色は書きやすいし、知り合いの多い世界ですからいろいろ聞けますからね。主人公を自分自身とは言いませんけど、限りなく自分に近いキャラクターですね。自分だったらどう考えるのか、どう行動するのか。そんな風に動かしていきました」
終戦前日にあった秋田県の「土崎空襲」が作品のポイントになっていて、「あと1日」の無念が、個性的に描かれた登場人物たちのさまざまな思いと絡まり合っている。
「出版社の人と、今度はザ・ミステリーで行きましょうというところから始まったんですけど、調べを進めていくうちに土崎空襲を知り、秋田が母方のルーツということもありまして、どんどん広がっていったんですね」
もともと多忙だが、今年はNEWS20周年ということもあって、取材も執筆も限られた時間の中でこなした。
「仕事柄、どうしても時間はまちまちになりますね。体を動かしている方がアイデアは浮かぶのですが、書くのは空いている時間に少しずつという感じでしたね。それでも没入できる時間というのは確かにあるし、(物語が)転がる感じで一気に筆が進むんですけど、どうしても視野が狭くなって客観性がなくなってくる。作品の性格上、そこは手綱を締めながらという感じでした」
作家デビュー11年の実感はあるのだろうか。
「作品には実人生が反映されるので、この年になってようやくいろんなキャラクターが書き分けられるようになりました。11年前は3人くらいがやっとでしたからね。36歳だから書き上げることができたんだと思います。書くことは食べることと同じで生活の一部になってきた気がします」
すっかり脂が乗ってきた筆運び、次回作が楽しみだ。【相原斎】