大楠道代、鈴木清順監督の思い出を語る 生誕100年記念の上映会「撮っている時は分からない」

映画監督鈴木清順さんの生誕100年を記念した代表作「ツィゴイネルワイゼン」の上映会でトークイベントを行った大楠道代

女優大楠道代(77)が11日、東京・渋谷のユーロスペースで行われた、映画監督鈴木清順さんの生誕100年を記念した代表作「ツィゴイネルワイゼン」(80年)の上映会でトークイベントを行った。大楠は同作で士官学教教授の妻を演じている。

「清順美学」と呼ばれた独自の映像美で国内外で熱烈な支持を得ていた鈴木監督。今回は「浪漫3部作」と呼ばれた「ツィゴイネル-」「陽炎座」「夢二」の4Kデジタル完全復刻版を製作した。

「ツィゴイネル-」に出演するきっかけは「清順さんが久しぶりに撮る映画だから。そして田中陽造さんの脚本が素晴らしかったから」と説明。ただし「脚本ではこんなに難しい映画になるとは思わなかった。清順さんが『あれやれ、これやれ』と言ってこうなった」と苦笑い。どの作品かははっきり覚えていないが「3部作のどれか。試写会を見ていた陽造さんが『おれはこんな本を書いていない』と言って途中で帰っちゃった」と秘話を明かした。「出来上がった作品をみて、こういう映画なんだと分かるけど、撮っている時は分からない。映画を見ても、見れば見るほど分からない」と続けた。

夫の友人役を演じた原田芳雄さんの目に入ったゴミをなめて取るシーンがある。「そんなことは台本にはないんです。現場で言われました」。他にも桃を食べるシーンが色っぽいと評判を呼んだ。「季節的に桃は取れなかったから、油と白あんこを和紙で作った桃でした。まずいから『嫌だな~』と思って食べた。油と白アンコの味しかしない。2度と食べたくない」とここでも苦笑いだった。

「陽炎座」での松田優作とのラブシーンについても触れた。「なぜか(正面でなく)背中合わせなんです」。さらに「当日の朝になっていきなり、桜の上を歩いてくれと言われたりして、別々に撮られているんです」。事前に脚本を読んで役作りをしても、それが意味をなさない。「私はもともと役作りをしない。でも松田優作さんは真面目な方で(違う)。アクションスターなのに『1歩も動くな』ですから。悲惨な感じで毎晩、ホテルの部屋でドタンバタン暴れていました。(原田)芳雄さんも分からなくてやっていた。役者には意味をあまりおっしゃらないんです」と懐かしそうに振り返った。

イベントの最後には「清順監督と原田芳雄さん、松田優作さんは亡くなった。(亡くなったみんなの)思いを受け止めて、もう1度、みなさんの気持ちに届くように精いっぱい頑張りたい」と4Kで生まれ変わった作品への思いを語った。